WEBサイトの管理体制はどのような運用をすれば適切なのかについて解説!

それじゃあ、サイト管理者がやっておかなきゃいけないことを教えてください。

わかりました。まず、著作権侵害のコンテンツがあると、権利者がそれを見つけて、「私の著作権が侵害されてます」って言ってくることになりますよね。ほとんどの場合、同時に違法コンテンツを消してほしいといわれます。

でしょうね。

でも、どういう意味で著作権侵害なのかは権利者じゃないとわからないですよね。アップロードに同意していたかも知れないし、著作権が譲渡されていたかも知れない。それに、通知が本人からされたものかどうかも、通知だけではわからない。成りすましの可能性がありますから。

分かります。

なので、著作権侵害の通知に対応する際には、権利侵害の具体的な理由を説明してもらうことと、本人確認をすることが必要です。

ええと、そのためにはどうすればいいですか?

権利侵害の説明については、権利者に通知の際に文章で説明してもらうようにすることです。本人確認については、通知書に実印を押してもらうと同時に、印鑑登録証明書を送ってもらうことが考えられます。

そこまで?ちょっと面倒な手続きですね。

法的リスクを小さくするためですから。
それで、権利侵害も説明してもらって、本人確認もできたら、次はコンテンツを投稿したユーザーに、削除請求が出ていることと、それに反論があるかを聞くことになります。

今度は投稿した人に対して聞くんですか?

はい。それで、投稿者が削除に同意するか、連絡して7日経過しても何も反論がない場合は、そのコンテンツを削除してしまって大丈夫です。

反論されたら、どうすればいいんですか?

その場合には両者の意見を総合して、削除するかどうかを決めます。

えー、そんなの決められないですよ。

常識的な判断であれば大丈夫なので、自信を持ってください。どうしても判断できない場合は、専門家に相談するべきですけど。

わかりました。
あ、途中でちょっと分からなかったことがあるんですけど・・投稿した人の連絡先って、分からないこともありませんか?

もちろんあります。そういう場合は、投稿した人に連絡できないので、権利侵害の通知書から判断して、削除するかどうか決めることになります。

そうですか・・。そういうときもちょっと難しくなりそうですね。

以上が法律に基づいた管理体制です。この流れをスムーズにするために、違法コンテンツに関する窓口やメールフォームを設置したり、通知方法や必要書類を説明したページを作るのがいいでしょうね。

分かりました。

でも、これは法律に基づいた管理体制ですので、工夫の余地もあります。例えば、利用規約で「サイト管理者の判断でいつでもコンテンツの削除ができる」としておくとか。こうしておけば、それはサイトのルールになりますので、コンテンツを削除されても投稿者は権利侵害を主張しづらくなります。

おお、なるほど。

あとは定期的にサイトを巡回して、明らかに著作権侵害のものはどんどん削除してしまう。そういうコンテンツまでさっきの流れで削除しなければならないのは面倒ですし、権利者から通知が来たときの対応って意外と大変ですから。

確かに。面倒なことが省けるのはいいですね。

管理体制はいろいろあり得ると思います。そのサイトに投稿されるコンテンツの種類によってリスクも違いますので、法律に基づいた管理体制をベースに、自社のサービスに合った管理体制を作っていくのがいいでしょう。
【解説】
(1) とっても重要な「管理体制」
前回説明したとおり、ユーザー投稿型サイトにおいては、違法コンテンツが投稿されることにより、サイト管理者の法的責任を問われることがあります。しかしながら、違法の可能性が少しでもあるコンテンツを全部削除すると、コンテンツは全く充実せず、魅力的なサイトにはなりません。また、そのような対応では、かえって投稿者の側から「表現の自由」を侵害されたとして損害賠償を請求されるリスクもあります。そのため、ユーザー投稿型のウェブサービスを運営するにあたっては、適切な管理体制の構築を目指すことが不可避でしょう。
(2) 管理体制構築のためのルール
管理体制の構築にあたっては、いわゆる「プロバイダ責任制限法」に基づいておこなうことが必要です。この法律は少し読みづらい部分もありますが、大まかな流れは今回の話で説明したとおりです。また、この法律については詳細なガイドラインがありますので、詳しい情報を得たい場合は、そのサイト(http://www.isplaw.jp/)を参照してください。
(3) 工夫して自社サービスに合った体制を
なお、管理体制を工夫することも可能です。例えば、「サイト管理者の判断でコンテンツをいつでも削除できる」ということを利用規約に規定することがあります。これにより、投稿者はコンテンツの削除に対して法的主張を行いづらくなります。
もっとも、このような規定も「消費者契約法」などで制限されることがありますので、この規定を設けたからといって一切責任を負わないという訳ではないことに注意しましょう。
その他、サイトを定期的に巡回するとか、投稿ページに「違法コンテンツはアップロードしないでください」などの注意書を置いておくとか、そういうことでもサイト管理者の責任が軽減されることがあります。
ただ、やはりサービスによって求められる管理体制は異なりますので、法律を踏まえつつ、自社サービスに合った管理体制の構築を目指すことが必要でしょう。
「WEBに関わる法律講座」の運営元である四谷コモンズ法律事務所では、投稿型サイト等の管理者向けのサービスを提供しております。問題が大きくなる前に、ぜひ本サービスをご利用ください。
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ユーザー投稿型サイト運営の著作権リスクとは?|サイト管理者の責任はどうなるの?

コンテンツを投稿してもらうとしても、変なコンテンツばっかり集まったらイヤですよね。

そうですね。著作権侵害の違法コンテンツとか、投稿されたくはないですね。

実際、動画サイトにテレビ番組とかがアップロードされていることありますけど、あれってどうなんですか?

アップロードしたユーザーは、著作権侵害をしていることになるでしょうね。

サイトの管理者はどうなるんですか?ユーザーが勝手にやったことだから、責任を負わないってことでいいんですか?

いや、そういう事にはなりません。場合によっては、サイトの管理者も責任を負うことがあります。

えー、でもユーザーが勝手にやったことですよ?

それはそうなんですけど、違法なコンテンツでサイト管理者が利益を得ている場合もありますからね。

どういうことですか?

違法なコンテンツって、どうしてもアクセスを集めやすいじゃないですか。タダで映画やテレビ番組が観れたりするので。法的には絶対ダメなんですけど。それで、アクセスが集まると、そのサイト管理者も利益を得るでしょう。広告を貼れば広告収入も期待できますから。

確かにそうですね。

だから、サイト管理者が違法コンテンツを削除しないという事態も考えられるんです。そうなってくると、やっぱりサイト管理者は関係ないとはいえないですよね。そういう事案で、実際にサイト管理者の損害賠償責任が認められた裁判例もあります。

でも、アップロードされたコンテンツを全部チェックするのは難しいですよ。投稿が多くなればなるほど。

なので違法アップロードがされたときに管理者が必ず責任を負う訳ではないんです。そのことは、「プロバイダ責任制限法」という特別な法律で定められています。

そうなんですか。じゃあ、サイト管理者はどうすればいいですか?

それについては結構長くなるので、次の機会に説明しますね。
【解説】
(1) ユーザー投稿型サイト運営の著作権リスク
ユーザー投稿型サイトを運営する際、最も気を付けるべきリスクの一つが、ユーザーから違法コンテンツ(著作権侵害のコンテンツなど)をアップロードされることでしょう。これにより、サイト管理者に法的責任が発生する場合があります。基本的に、違法なコンテンツがアップロードされたとき、責任を負う者は実際にアップロードしたユーザーです。しかしながら、場合によってはサイト管理者が著作権侵害を行っていると判断されることがあります。
(2) 「間接侵害」という考え方
自分自身が著作権侵害の行為を直接行っていなくても、間接的にその行為に関わることによって、自身も著作権侵害の行為を行っていると評価されることがあります。著作権の「間接侵害」といわれる問題です。どのような場合に、自分も著作権侵害の行為を行っているとされる(「間接侵害」とされる)かは、様々な事情によって判断されます。その方法については議論されているところですが、次の事情が重視されていることは間違いありません。
① 著作権侵害の行為を管理していること
② 著作権侵害の行為により利益を得ていること
これは、著作権の世界では有名な「カラオケ法理」と呼ばれるものです。過去にはこの2つが決定的なものと考えられていたようですが、現在ではこれ以外の事情も考えて判断するのが一般的です。
なお、この2つだけで判断することとしても、ユーザー投稿型サイトの管理者は、「間接侵害」とされる可能性があります。
違法コンテンツは自社サービスの中で投稿されたものですし、通常はそのコンテンツを削除することもできますから、サイト管理者が著作権侵害の行為を管理しているといえます(①)。また、違法コンテンツによってアクセスを集めていることから、これにより利益を得ているとも考えられるためです(②)。
(3) 責任は軽減されている
サイト管理者が責任を負う場合があるといっても、すべてのコンテンツをチェックすることは難しい場合もあります。そのため、あまりに厳しい責任を負わせると、かえってインターネット上の情報交換の妨げになります。
そのため、サイト管理者などはいわゆる「プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)」によって、責任がある程度軽くなっています。この法律を意識してウェブサイトを管理運営することが、法的リスクを減らすカギになるでしょう。
実際にどのような方法をとるべきかは、次の回で説明します。
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投稿されたコンテンツの著作権は誰が持っている?

コンテンツを自分たちで増やすのは大変なので、コンテンツをサイトの利用者に投稿してもらう形はどうかと考えているんですよ。

文章とか画像を投稿してもらうってことですよね。
サイトの種類によってはいいアイデアだと思いますよ。

ただ、ちょっと疑問なのが、ああいう投稿されたコンテンツって、著作権はどうなるんですか?

それは、利用規約によるでしょうね。
あのサイトの利用条件がずらっと書かれているところ。

ああーありますね。

ユーザー投稿型のウェブサービスについては、著作権の話があそこに書かれていることが多いです。投稿されたコンテンツの著作権はユーザーに残るのか、それともサイトの管理者に移動するのか。

でも、あんなとこ細かくチェックしてませんよ?

チェックしやすくする工夫はするべきですけど、原則はあそこに書かれているルールが適用されると考えておいていいでしょう。なので、ユーザーに投稿してもらうのであれば、利用規約は整備しておいた方がいいですよ。

どういうルールを書けばいいんですか?
著作権は全部もらっちゃうという形でいいんですか?

いや、そういう形が絶対にいいという訳ではありません。

何でですか?

例えば、クオリティの高い作品を苦労して作った場合、その著作権は少なくともタダでは手放したくないですよね。そうなると、その作品を投稿サイトで公開することを考えたとき、著作権がとられてしまうサイトには投稿しないでしょう。

確かに。

著作権に厳しいルールを作ると、コンテンツの充実が妨げられることもあるんです。なのでやっぱり目的ですよね。投稿されたコンテンツで何を達成するか。単にアクセスを集めるだけなら、著作権はもらわなくてもいいと考えることもできますし。

やっぱり、何を達成したいかなんですね。

そうですね。投稿されたコンテンツを集めて、それを編集したものを販売しようと考えたら、著作権をもらうのは必要でしょうし。なので、サイトの目的から、著作権についてのルールも考えるべきでしょう。
【解説】
(1) 投稿されたコンテンツの著作権はどこへ?
サイトのコンテンツを増やす方法として、自分で作成することほか、ユーザーに投稿してもらう方法があります。この方法の利点は、なんといってもコンテンツ制作の労力が省けるというものでしょう。投稿されたコンテンツの著作権がどうなるかは、利用規約によって決まります。投稿された時点で著作権がサイト管理者に移動されると書かれているものも少なくありません。
利用規約があるサイトのサービスを利用する際は、原則として利用規約のルールが適用されると考えた方が無難です。利用規約の設置のされ方にもよりますが「利用規約なんて読んでなかった」という反論は、基本的には難しいと思われます。
なお、利用規約に著作権に関して何も書かれていない場合は、著作権はコンテンツの作者に残ると考えてよいでしょう。
この場合、投稿者(コンテンツの作者)はサイト管理者にコンテンツの利用を許諾していると解釈されます。
(2) どういうルールにすればいいの?
投稿されたコンテンツの著作権をどちらが持つことにするかというのは単純には決められない問題です。あまりに厳しいルールを作ると、コンテンツを投稿してくれる人がいなくなる可能性もあります。また、私的に楽しむためのものに関して、サイト管理者が著作権を持つようにすることも、あまりお勧めできません。
SNSの日記やTシャツの注文デザインに関して、サイト管理者がそれらの著作権を持つという利用規約が社会的に問題視されたこともあります。著作権のルールについては、企業の評判に影響することもあり得るのです。
結局、投稿されたコンテンツで何を達成したいのかを見極め、ルールを設定していくことが必要です。
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著作権以外で気をつけた方がいい契約書の項目は?契約書に書くべきことを紹介!

契約のときに決めるべきことで「著作権をどちらが持つか」とか、著作者人格権の「不行使特約」を教えてもらいましたけど、契約書のひな形をみるといろいろ書いてあるじゃないですか。他にはどういうことを契約書に書けばいいんでしょう?

実際の契約内容によって何を書くかも変わってきますが、一般的なものをあげるとすると・・。まずは、制作してもらう作品をきちんと特定すること。種類、数量、大きさとかもですね。納期も定めましょう。

その辺は、さすがに書きます。

次に納品の方法と、検査の流れですね。納品してもらったら、検査期間内に検査して、不備があればどうするのか、みたいな感じで。不備があったら直してもらうことを記載するのが一般的でしょうね。

なるほど。不備があったらトラブルになりそうですからね。

あとは再委託に関して。これは、相手が更に誰かに制作を依頼することに関してです。

そんなことってあるんですか?

たまにあります。でも、その人だから制作を依頼したのに、誰かに丸投げされたら困りますよね。だから、再委託は原則禁止にすることが一般的でしょう。

確かに。再委託は禁止することにします。

あとは、著作権の帰属をどうするにしても、当事者間でどうしてもこういう利用がしたいとか、こういう利用はして欲しくないとか、そういうことは記載しましょう。

わかりました。

中心的なものはこのくらいですかね。あとは、解除とか損害賠償とか、一般的な契約書に書かれていることを記載する。他に、制作してもらった作品がパクりだった場合の違約金とか、そういうのも考えられます。でも、これは相手との力の差もあるところなので、相手が飲むとは限りません。

えげつない条項もありってことですか?

状況によってはありです。でも、契約成立の妨げにもなり得ますので、ケースによりますね。パッと思いつくのはこのくらいでしょうか。他の契約書を参考にしながら、自分なりの契約書を作ってみるのがいいでしょう。

分かりました。ちょっとやってみます。

がんばってください。専門的な法律の知識が必要なときもありますので、難しい条件を付けたいとか、どう書いていいか分からないということがあれば気軽に相談してください。
【解説】
(1) 契約書に書くべきこと
制作依頼の契約書に関しては、決めるべきことがさまざまあります。思いつくものを列挙だけでも、次のようなものがあります。
・制作を依託し、それを受託する旨の条項
・委託料、支払方法、支払時期
・納期(遅延があるときの制裁を規定するときは、それも含む)
・納品方法
・検査方法および検査の流れ、欠陥があったときの対処
・再委託について
・著作権の帰属
・著作者人格権について
・著作権の移転時期(著作権を依頼者に帰属させる場合)
・中途解約について(制作中のものがある場合の処理も含む)
・即時解約条項
・損害賠償について
・裁判管轄
契約書の形式については、特別な決まりはありません。
一般的なひな形にあるような形式で、法的な効果は問題なく発生します。
ひな形自体はインターネットなどで簡単に手に入るので、いろいろ参考にしてみて、自分の好みにあったものをベースにしましょう。(なお、ひな形の内容をそのまま利用することが危険であることは、以前に説明した通りです。)
(2) 専門知識が必要な場合は相談を
契約によっては難しい条件を付けることがあり、その達成のためどのような条項を作るべきか理解が困難な場合があります。
また、いくら契約書に記載したとしても無効になる条項もありますし、有効ではあるけれども意味がないような条項もあり得ます。
具体的な文章をどうすればいいか分からないときや、どのような条項を作れば目的を達成できるのか分からない場合には、やはり専門家に相談することをお勧めします。
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著作者人格権ってなに?著作権を持っていても自由に使えない可能性があります

今まで聞いてきた感じだと、出来れば著作権はもらっておいた方がいいんですね。

常にそうとはいえませんが、そのほうが作品を利用できる範囲が広がることは間違いないでしょうね。

あれ、著作権をもらっておけば何でもできるんじゃないですか?

いや、何でもできるわけじゃないですよ。例えば契約書で、「著作権は譲るけど、こういう利用はやめてね」って記載されることもあり得ますし。それに、著作者人格権の問題もあります。

著作者人格権?前にちょっと聞いたやつですか?

そうです。著作者人格権は、作品に表れた作者の「人格」を保護するものでしたね。それで、①公表権、②氏名表示権、③同一性保持権の3つがあると。

何となくは覚えてます・・。

この著作者人格権って、他の人に売ったりできないんですよ。
だから、契約書とかに「著作者人格権も譲ります」と書いても無効なんですよね。

じゃあ著作権をもらっても、自由に利用できないってこと?
それだと困りません?

困ります。
特に③同一性保持権なんか、結構強い権利ですからね。

じゃあどうすればいいんですか?

そのために、著作者人格権の「不行使特約」を契約書に書いておくことが結構行われています。

ふこうし・・?

行使しないってことです。著作者人格権は作者に残るけど、それを使いませんよっていう合意です。
こういうケアをしておかないと、基本的には著作者人格権は自由に使えてしまうので。

ちょっと注意しないといけないんですね。

そうです。だから、契約書なんかを作るときは、著作権だけでなく、著作者人格権もしっかり意識して作らなければいけません。
【解説】
(1) 著作者人格権が顔をだすとき
作品を作った場合、作者には著作権だけでなく、著作者人格権も発生します。以前説明したとおり、著作者人格権は、①公表権、②氏名表示権、③同一性保持権を主な内容とする権利でした。そして、この著作者人格権は、他人に譲り渡すことができません。この権利は作者の人格そのものであって、人に渡せる性質のものではないからです。そのため、仮にこの権利を譲り渡す合意をしたとしても、それは無効と判断されてしまいます。
このような著作者人格権の性質が、権利関係や契約関係を少々複雑にします。契約書などでこの著作者人格権のケアをしておかないと、後にトラブルになったり、想定していた形の利用ができなくなったりするためです。そして、著作者人格権のうち、作品の利用に最も大きい影響を与えるのが③同一性保持権でしょう。これがある限り、作者の「意に反する」改変ができなくなるのです。
(2) 不行使特約とその注意点
このような不都合を回避するために実務上利用されているのが、著作者人格権の「不行使特約」です。これは、著作者人格権が作者に残ることを認めつつ、それを使うのをやめてもらうという合意です。このような合意で、当事者の間でトラブルが発生するリスクは減らすことができます。しかし、合意の効力はあくまで当事者にあるだけで、第三者にまで及ぶものではありません。
つまり、いくら「不行使特約」を結んだとしても、作者が第三者に対して著作者人格権を行使することは可能なのです。このように、「不行使特約」も万能ではないので、この点は注意しましょう。契約内容を決めるときには、著作者人格権を意識しつつ、自分が作品をどのように利用するかを見極め、それが実現できる内容を定める必要があるでしょう。
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【依頼者と制作者】著作権の影響範囲と帰属について解説|トラブルが起きた場合は?

前回の話、忘れてませんよ。著作権をどちらが持つかで何が変わるのか、教えてください。

やっぱり一番大きい違いは、その著作権を他人に譲れることでしょうね。

売ったり出来るってことですか?

そういうことです。売ってお金にできます。
あとは事業譲渡なんかのときにもスムーズですね。

事業譲渡?
・・・って何ですか?

会社とかで、運営している事業をそのまま人に譲ることがあるんですよ。そういうとき、著作権を持ってないと、事業譲渡の相手に著作権を渡すことができません。そうなると、相手はその作品を使えないことになります。

え、じゃあどうするんですか?

改めて利用許諾を権利者からもらう必要があります。でも、これだと手間がかかりますよね。
こういう手間も著作権を持ってたら省けます。

なるほど。

あとは、著作権を持ってたら他人に対して利用許諾もできます。
これだと、著作権を持ったままライセンス料をもらえますね。

何か、お金の話ばっかりですね。

著作権も財産ですからね。
お金の話以外だと、例えば作品の改変もできますよ。

あー、マンガ化したりとかですか。

そうです。これをやるには翻案権を権利者からもらうことを明確にする必要がありますが。
他にもいろいろあるんですが、こんな感じで、作品を作ってもらったあとそれをどう使うかで、著作権を持つべきかどうかが決まることになります。

逆に、著作権をもらうデメリットってあるんですか?

著作権までもらうとなると、代金は高くなりがちですね。作者からすると、基本的にその作品を利用できなくなりますから。

確かに、作者からしたらそれが嫌なときがありそうですね。

あと、大事な事を言い忘れてました。
著作権を持ってるのといないのとでは、何かトラブルが起こったときの対処が全然違います。

そうなんですか?

はい。例えば誰かに著作権を侵害されたとき、著作権を持っていないと、自分では著作権侵害を理由に権利主張できないです。差止請求なんか、作者にやってもらわないといけません。

それだとちょっと面倒かも知れませんね。手間かけちゃいますし。

まあこんな感じで、著作権を持つかどうかでその後にいろいろ影響するんですよ。
単に作品を利用できるかどうかだけではないってことです。
【解説】
(1) 著作権の帰属が影響すること
作品の制作を依頼するときに、著作権をどちらが持つことにするかという点は、その後の様々な場面に影響を与えます。最も大きな違いは、作品の著作権を処分(あげたり売ったりすること)できるかどうかです。著作権を持っている場合、基本的にそれを売ったりすることは自由ですが、著作権を持っていない場合はこれができないので、その作品を他の人に利用させたいと思う場合は、改めて権利者から利用許諾を得る必要があります。その他、著作権を持っていると、作品の改変などができます。ただ、改変を行おうとする場合は、翻案権を譲り受けることを明確にする必要があります。この方法としては、契約書に明記することが一般的と思われます。
(2) トラブルが起こったときも、大きな影響がある
著作権を持っていないと、誰かに著作権を侵害されたとき、著作権を理由にした権利主張ができないという点には注意が必要です。損害賠償の余地はありますが、利用の差止は権利者から行ってもらわなければなりません。ウェブコンテンツの削除請求は利用の差止請求にあたりますので、作品の制作依頼をする場合は、トラブル対応を誰がどう行うか事前にしっかり話し合われることも必要でしょう。
(3) 作品をどう利用するかで、契約の内容を決める
著作権を譲り受けることは様々なメリットがありますが、作者にとっては後の創作に影響を与えることもあるため、これが了承されないことも少なくありません。ただ、その場合でも、契約書の記載を工夫したりすることで、自分の思い描く利用を実現することができます。また、著作権を作者に残すとした方が料金を安くできる可能性もあります。いずれにせよ、著作権の契約をする際には、自分がどのような形で作品を利用したいかをしっかり見極め、契約内容を決めていくことが必要でしょう。
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制作した作品の契約時の著作権は依頼側?制作側?|著作権の移動についても解説

前回、契約内容を決めた方がいいっていう話でしたけど・・
具体的に、何を決めればいいんですか?

細かく言えばたくさんありますけど・・・。

じゃあ、一番大事なものを教えてください。

そうですね・・。まずは、「著作権をどちらが持つことにするか」を決めた方がいいですね。

著作権をどちらが持つか?

ちょっとややこしい所なんで、順を追って説明しますね。
まず、何か作品を作ったとき、その著作権はそれを作った人が持つことになりますよね。

でしょうね。

なので、デザインとかの制作を依頼して、それが出来上がったら、著作権はそれを作った人が持つことになります。

・・・あれ? ちょっと違和感が。

なんですか?

お金を払って制作を頼んでるんだから、出来上がったものは当然依頼した人のものになるんじゃないんですか?

著作権に限っては、そうなるわけではないんですよ。
会社の社員が作ったものであれば、著作権が最初から会社のもの(著作権)になることとかはありますけど。原則は作った人が最初に著作権を持つことになります。

へえ。なんか変な感じですね。

だから、最初にちゃんと決めておかないといけないんですよ。そうでないと、たくさんお金を払ったのに、著作権は相手が持ったままなんて事にもなりかねませんから。

じゃあ、ちゃんと決めてなくて、著作権がもらえなかったら、依頼者はそのデザインを使えないんですか?

いや、そういう訳ではないんです。
その場合は、作者がそのデザインの使用を許諾していると解釈されることになるでしょうね。

じゃあ、どっちにしても依頼した人はデザインを使えるんですね。

そうです。

なんだ。じゃああんまり重要じゃないじゃないですか。

使えるかどうか、という点ではそうですけど、いろいろ細かい違いがあるんですよ。

細かいことは抜きにして、単に使えればいいと思うんだけど・・。

細かいことでも、無視できない問題もありますから。
どういう違いがあるかは、次の機会に説明しますよ。
【解説】
(1) 仕事の成果物の著作権は誰が持つ?
作品の制作を依頼する際、決めるべきものの一つとして「著作権をどちらが持つことにするか」(著作権の帰属)があげられます。作品の制作を依頼した場合、最初に著作権を持つのは、実際にそれを作成した人であるのが原則です(例外として「職務著作」等があげられますが、ここでは触れません。)。自動的に依頼者のものになるわけではないのです。契約書などで、依頼者が著作権を持つということにすると、法律的には「最初に作者のところに発生した著作権が、依頼者に移動する」という流れをたどることになります。
(2) 著作権の帰属は、必ず話し合おう
この著作権の帰属について当事者間で決めないでいると、基本的に著作権は作者のもとに残ります。その納品を受けた依頼者は、作者から「使用を許諾される」という解釈のもと、使用が許されることになるのです。結論的には依頼者は作品の利用ができるので、この点について話し合わないことも多いと思われます。しかし、いざトラブルが発生したとき、この著作権の帰属に関して「話が違う」などということになり、紛争が複雑化するケースもあります。そのため、法的な観点からは、最初の契約のときにしっかり話し合うべき問題といえるでしょう。
(3) 著作権の移動が影響することは?
作品の「使用」に関していえば、著作権がどちらに帰属するかはそれほど重要ではありません。どちらの場合でも依頼者はそれを使用すること自体はできるからです。しかし、その著作権に関してトラブルが生じたときは、著作権がどちらに帰属するかで対処のしかたも大きく変わってきます。また、納品を受けた後の「利用」のしかたによっては、著作権をどちらに帰属させておくべきか決定的に重要なこともあります。その内容については、後の項目で説明します。
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WEBサイト制作の依頼で気をつけるべき契約上の注意点についてわかりやすく解説!

サイトの制作について、作るのを一部プロの人にお願いすることになりました。
話もだいぶ進んでるんですよ。

そうですか。
じゃあ、契約内容の話とかもしてるんですか?

契約内容ですか?ええと、金額の話はしてますけど、それ以外は特に・・・。向こうからも何も言ってきませんし・・。

そうですか。でも曖昧なままだと、トラブルになったとき大変ですよ。

そんな、トラブルになることなんかあるんですか?

それが結構あるんですよ。
直接的な著作権トラブルでなくとも、他のトラブルがきっかけになって著作権が争われるということも珍しくないですから。

じゃあどうすればいいんですか?

まずは重要なことをちゃんと話し合って決めるべきです。
できれば、決めた内容を形に残すのがいいですね。

形に残すって?

典型的なのは書面を作ることです。
メールを保存するのでもいいですが、契約書を作るのが一番確実ですね。

あ、契約書って雛形がネットに落ちてるから、それ使えばいいか。

いや、そういうのはあんまりおすすめしません。

何でですか?

ネットに落ちてる契約書って、トラブルになったときに役に立たない事が多いんですよ。そのひな形の内容が今回の契約に合致してればいいですけど、そういうことは滅多にないので。かえって紛争がややこしくなる事もあるくらいです。

そうなんですか・・・。

それに、契約書って、大抵はどちらか一方の立場から作られています。有利不利に偏りがあるんですよ。なので、ネットで拾った契約書が自分と違う側から作られたものだと、自分で自分の立場を悪くするなんてこともありますよ。

でも、どっちの立場から作られたものか、簡単に分かりますかね・・。

そこは内容を見るしかないですが、不安であれば雛形は参考にする程度で、後は相手方と話し合った内容をちゃんと記載する、というスタンスで臨むのがいいでしょう。

それでもちょっとハードル高くないですか?

まあ、分からなかったら相談して下さい。あと、相手方から契約書を提示されたら、それは大体相手方有利に作られています。なので、そういうときは適当にサインしたりしないで、内容をちゃんと確認してください。不安であれば、やっぱり専門家にチェックしてもらうのをおすすめします。
【解説】
(1) 信頼だけで大丈夫?
ホームページの制作に関して、ウェブデザインやコンテンツ制作など、著作権が絡む仕事をプロに依頼することがあります。このような仕事を依頼する際、何ら契約書等を作成しないことがあります。お互いの信頼関係の中でやっているから、という事で、契約内容を曖昧なままにしておくことも少なくありません。
しかしながら、契約内容が曖昧であるため、その後トラブルが生じた場合に紛争が複雑になることが多くあります。直接的には著作権のトラブルではなくとも、他のトラブルと関連して著作権の問題が発生してしまうこともあります。
例えば、単純な代金未払いのトラブルであっても、それまでに納品した物の著作権はどうなるのかなどという問題に派生してしまう場合があるのです。そのため、契約内容については、代金や納品物だけでなく、著作権の帰属などについても事前に決めておくことが必要です。
(2) 決めた内容は、形に残そう
万が一トラブルが発生したとき、解決の手掛かりになるのが、契約書など当事者で話し合った内容を示す証拠です。契約内容について合意したときは、証拠を残しておくべきでしょう。証拠として確実なものは、契約書や念書などお互いの署名押印がある書面(紙)です。ただ、書面のやりとりが取引成立の妨げになる場合もあり、書面の作成が敬遠されることもあります。そのような場合であっても、最低限、注文書や請書に重要な内容は記載しておくとか、メールのやりとりを保存しておくなども有効です。メールであっても、裁判の証拠になります。
(3) ネットで拾ったひな形をそのまま使うのは危険
契約書が必要だからといって、ネット上に落ちている契約書のひな形を使うことはお勧めしません。実際の契約内容と合致していないことがほとんどだからです。合致していない契約書を利用すると、いざトラブルが起こったときに何の役にも立たないばかりか、かえってトラブルを複雑にすることもあります。
また、既存の契約書は、当事者のどちらか一方の立場から作成されたものであることがほとんどです。ネット上の落ちているひな形も同様です。そのため、ひな形をそのまま使った結果、かえって自分の立場を悪くすることもあり得ます。仮にひな形を利用する場合であっても、その記載を参考するにとどめ、実際に話し合った内容を自分で記載するのが良いでしょう。
(4) 相手が提示してきた契約書にも注意
契約書は裁判でもかなり重要な証拠になりますから、契約書に署名押印をする場合は、そのときの契約内容に合致しているか、きちんと確認するべきです。決して、内容を見ずに署名押印をしてはいけません。
また、契約の相手方が契約書を作ってくれたからといって、内容を見ずに署名押印することもおすすめできません。基本的に、提示された契約書は作成した側が有利なように作られているからです。交渉上の力関係がある場合もありますが、どうしても認められないようなものについては、しっかり交渉して自分の立場を確保しておくことが必要です。
契約書が複雑で分からないとか、交渉が上手くできそうにない等の場合には、やはり専門家に相談されることが必要でしょう。
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撮影した動画の写り込みや音の著作権は認められるの?|ゲームの実況プレイは?

動画を撮るときって、いろんなものが写り込んじゃうと思うんですよ。スマホでムービーを撮るときもそうだし、PCの画面をキャプチャするときも。そういうときも、写り込むものの著作権に気を付けなきゃいけないんですか?

前に「写り込み」の話をしたの、覚えてます?あの規定は、写真だけでなく動画にも適用されます。なので、軽微な写り込みであれば、あの規定でOKになることが多いと思いますよ。

あ、それなら良かったです。写り込んだものの全部をチェックするのは大変だと思ったんですよ。

「写り込み」で許される範囲は、写真より動画の方が広い気がします。撮影する範囲が広いですから。それに、「写り込み」の規定は音にも適用されるんですよ。だから、撮影中に突然音楽が鳴ってきて、それが動画に入り込んでしまったとしても、それは著作権侵害にはなりません。

じゃあPCで解説動画を作っていて、途中パソコンの効果音が鳴ったとかでも、OKになるんですか。

だと思います。

おおー、じゃあ自分で撮影するのは結構アリですね。

そうですね。場合によっては「引用」も使えると思いますし。

ちなみに素朴な疑問なんですけど、ゲームの実況プレイってあるじゃないですか。あれはいいんですか?

ゲームの画面には著作権が認められるでしょうし、「写り込み」などにもあたらないでしょうから、適法とは言いづらいですね。でも、ネット上に残っていることを考えると、二次創作などと同じで、グレーなところかも知れませんね。

なんかネットって、グレーが多いですね。

著作権の法律自体、ネットに対応し始めたのがごく最近ですからね。

そうなんですか。
とりあえず、動画に関してはあまり気にせず、自分で作ってみることにします。

それがいいと思います。ただ、「写り込み」はあくまで「軽微」なものに限られますし、「引用」も他人の作品が「従(サブ)」でなければいけません。なので、どうしても他の作品がメインに写り込んでしまう場合は、権利者の許諾を検討してくださいね。
【解説】
(1) 「写り込み」は動画にも適用される
動画を作成する際、気をつけなければならない事の1つとして、他人の作品を無断で利用してしまうことがあげられます。他人の作品が動画に入り込んでしまうと、著作権制限規定に該当しない限り著作権侵害となってしまいます。動画を作成する際に使えそうな著作権制限規定は、いわゆる「写り込み」に関する規定と、「引用」があります。
特に、「写り込み」は動画に適用される範囲が広いと考えられますので、積極的に利用するのが良いでしょう。なお、「写り込み」に関しては、写真(画像)の記事で説明したとおりです。
(2) 「写り込み」にも限界はある
「写り込み」や「引用」などの規定があるとはいえ、それらの適用範囲は無制限ではありません。写り込む作品が動画のメインを占めてしまうような場合は、やはり権利者の許諾を得る必要があるでしょう。
なお、パソコンのソフトの解説動画などに関しては、権利者が一定の条件のもとに一般的な許諾を与えている場合があります。そのような動画の作成を考えるにあたっては、企業のウェブサイトを見るなど一通りの調査を行うことが有用な場合があるでしょう。
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MADムービーの作成は著作権侵害になるの?権利者の態度を確認しましょう

サイトに動画を使うにしても、自分で動画を作るのは難しいですよね?

だと思います。音に画像を合わせるだけでも相当大変みたいですから。

あ、でも音に画像を合せるだけなら何とかなりそうかも。ヒマだし。

そういうのは”MAD”という形で動画を作ってる人がいるみたいなので、ネットで調べれば結構情報が出てきそうですね。

あー、MAD。見たことあります。アニメとかゲームの映像を切り貼りして音に合わせるやつですよね。
ちなみに、あれって著作権的にどうなんですか?

うーん、どうなんでしょう。削除されずに残っているMADも少なからずありますからね。
あそこもグレーな部分なんじゃないですか。

グレーって、あの二次創作の時に聞いた話ですか?

そうです。基本的にはあの発想と近いと思います。

基本的に権利者がダメって言ったら終わりってことですよね?

はい。他人の作品を複製なり公衆送信してるので、権利主張されたら負けると思います。
でもMADに関して権利者の対応はさまざまあるようで、正式に許諾を与えたりする事例もあるみたいですよ。

へー、初めて聞きました。

とはいえ、企業などが営利目的で権利者の許可なくMADを作ったりするのは「ダメ」といわれる事がほとんどでしょうけど。

さすがにウチのサイトにMADは載せませんよ。

例えば自分で撮った写真とかを使って、音楽も適法に利用できるものを使えば、法的に全く問題ない動画は作れます。プロにお願いするのが確実ですが、自分で作るのであれば、とりあえずはそういう方向で作成を検討してみるのがいいと思います。
【解説】
(1) ”MAD”はどう考える?
インターネット上には「MADムービー」(以下単に「MAD」といいます。)と呼ばれる動画があります。これらは作品として認知され、広く作成、アップロードされています。MADは、既存のアニメやゲームの映像を音に合わせて切り貼りしたものがほとんどです。映像部分はMADの作者が新たに作ったもの(手描きMAD)もあるようですが、その場合でも、音は既存のものを使っていることが多いと思われます。
MADに使われる音や映像が既存のものであれば、他人の作品を複製・改変・アップロードしているので、これを作者に無断で行うことは著作権侵害になり得ます。作者から権利主張された場合は、負けるケースがほとんどでしょう。それにもかかわらず、MADがインターネット上で残されているのは、権利者が「放置」ないし「(積極的には)何もいわない」という態度をとっているためだと思われます。
その理由はさまざま考えられますが、いずれにせよ、MADが存在できるのは二次創作と同様の理由によるものと考えられます。
(2) 立場を明確にしている権利者も
権利者によっては、MADに対する態度を明言している場合もあり、MAD制作の際のガイドラインを公表しているところもあるようです。そのため、MADの制作を検討する場合は、権利者の態度を確認することが必要でしょう。権利者がMADに対する態度を明らかにしている場合、その意思に反する行動は著作権侵害として権利主張される場合があるからです。
なお、企業が営利目的の下、権利者に無断でMADを制作することは許されない場合がほとんどです。そのような行為は社会的にも非難されかねず、企業イメージも低下しかねません。企業などが行う場合は、権利関係をすべてクリアした上で行うべきでしょう。
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