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【依頼者と制作者】著作権の影響範囲と帰属について解説|トラブルが起きた場合は?

前回の話、忘れてませんよ。著作権をどちらが持つか何が変わるのか、教えてください。

やっぱり一番大きい違いは、その著作権を他人に譲れることでしょうね。

売ったり出来るってことですか?

そういうことです。売ってお金にできます。

あとは事業譲渡なんかのときにもスムーズですね。

事業譲渡

・・・って何ですか?

会社とかで、運営している事業をそのまま人に譲ることがあるんですよ。そういうとき、著作権を持ってないと、事業譲渡の相手に著作権を渡すことができません。そうなると、相手はその作品を使えないことになります。

え、じゃあどうするんですか?

改めて利用許諾を権利者からもらう必要があります。でも、これだと手間がかかりますよね。

こういう手間も著作権を持ってたら省けます。

なるほど。

あとは、著作権を持ってたら他人に対して利用許諾もできます。

これだと、著作権を持ったままライセンス料をもらえますね。

何か、お金の話ばっかりですね。

著作権財産ですからね。

お金の話以外だと、例えば作品の改変もできますよ。

あー、マンガ化したりとかですか。

そうです。これをやるには翻案権権利者からもらうこと明確にする必要がありますが。

他にもいろいろあるんですが、こんな感じで、作品を作ってもらったあとそれをどう使うかで、著作権を持つべきかどうかが決まることになります。

逆に、著作権をもらうデメリットってあるんですか?

著作権までもらうとなると、代金は高くなりがちですね。作者からすると、基本的にその作品を利用できなくなりますから。

確かに、作者からしたらそれが嫌なときがありそうですね。

あと、大事な事を言い忘れてました。

著作権を持ってるのといないのとでは、何かトラブルが起こったときの対処全然違います。

そうなんですか?

はい。例えば誰かに著作権を侵害されたとき、著作権を持っていないと、自分では著作権侵害を理由権利主張できないです。差止請求なんか、作者にやってもらわないといけません。

それだとちょっと面倒かも知れませんね。手間かけちゃいますし。

まあこんな感じで、著作権を持つかどうかでその後にいろいろ影響するんですよ。

単に作品を利用できるかどうかだけではないってことです。

【解説】

(1) 著作権の帰属が影響すること

作品の制作を依頼するときに、著作権をどちらが持つことにするかという点は、その後の様々な場面に影響を与えます。最も大きな違いは、作品の著作権処分(あげたり売ったりすること)できるかどうかです。著作権を持っている場合、基本的にそれを売ったりすること自由ですが、著作権を持っていない場合はこれができないので、その作品を他の人に利用させたいと思う場合は、改めて権利者から利用許諾を得る必要があります。その他、著作権を持っていると、作品の改変などができます。ただ、改変を行おうとする場合は、翻案権を譲り受けることを明確にする必要があります。この方法としては、契約書に明記することが一般的と思われます。

 

(2) トラブルが起こったときも、大きな影響がある

著作権を持っていないと、誰かに著作権を侵害されたとき、著作権を理由にした権利主張ができないという点には注意が必要です。損害賠償の余地はありますが、利用の差止権利者から行ってもらわなければなりません。ウェブコンテンツの削除請求は利用の差止請求にあたりますので、作品の制作依頼をする場合は、トラブル対応を誰がどう行うか事前にしっかり話し合われることも必要でしょう。

 

(3) 作品をどう利用するかで、契約の内容を決める

著作権を譲り受けることは様々なメリットがありますが、作者にとっては後の創作に影響を与えることもあるため、これが了承されないことも少なくありません。ただ、その場合でも、契約書の記載を工夫したりすることで、自分の思い描く利用を実現することができます。また、著作権を作者に残すとした方が料金を安くできる可能性もあります。いずれにせよ、著作権の契約をする際には、自分がどのような形で作品を利用したいかをしっかり見極め、契約内容を決めていくことが必要でしょう。

 

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弁護士 渡辺泰央
弁護士 渡辺泰央
弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。