【証券訴訟】ENEGHANGE株式会社に対する証券訴訟の可能性
2024年3月27日、ENEGHANGE株式会社(以下「ENEGHANGE社」といいます。)は、同日付「外部調査委員会の設置及び2023年12月期有価証券報告書の提出期限延長申請の検討に関するお知らせ」(以下「本件リリース」といいます。)を公表しました。
外部調査委員会の調査報告書が公表されました。
当事務所は、本件リリース及び調査報告書を精査した結果、同社に対する証券訴訟の可能性があると判断するに至りました。
本記事では、ENEGHANGE社に対する証券訴訟及びその可能性について解説します。
証券訴訟とは
「証券訴訟」とは、有価証券報告書等の虚偽記載(粉飾決算など)によって上場会社の株価が下落した場合に、投資家が提起する損害賠償請求の訴訟をいいます。
本件リリースにおいて公表された会計処理が「虚偽記載」に該当する場合、ENEGHANGE社の株主は、同社(及びその役員等)に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
この損害賠償請求の訴訟が「証券訴訟」となります。
証券訴訟については、以下の記事でも解説しています。
有価証券報告書の提出期限延長に至った経緯 *随時更新(2024.7.9時点)
ENEGHANGE社が有価証券報告書の提出期限を延長することになった経緯について、同社が公表している情報をもとに時系列でまとめました。
※2024年7月9日更新
現在は、外部調査委員会による調査が行われている最中です。
2024年6月27日、外部調査委員会の調査報告書(以下、単に「調査報告書」といいます)が公表されました。
ENEGHANGE社は、外部調査委員会の調査結果を受けて、遅くとも2024年6月28日(金)までに、関東財務局に有価証券報告書を提出する必要があります。(万が一、この期限に間に合わず、期限から8日目までに有価証券報告書が提出されない場合には、東京証券取引所の上場廃止基準に抵触し、最悪の場合、ENEGHANGE社が上場廃止となるおそれもあります。)
また、同日公表された「2023年12月期有価証券報告書提出遅延及び 当社株式の監理銘柄(確認中)の指定の見込みに関するお知らせ」には、「2023 年 12 月期有価証券報告書について、延長承認を受けました提出期限である2024 年6月 28 日までに提出できない見込みとなりました。」との記載があります。これにより、ENECHANGE社の株式は、で監理銘柄(確認中)に指定されることとなりました。
2024年7月9日付「当社株式の監理銘柄(確認中)指定解除に関するお知らせ」で公表されたとおり、同月10日付で「管理銘柄(確認中)」は解除されました。
これに加え、同リリースには「延長承認後の提出期限(2024 年6月 28 日)の経過後8営業日以内(2024 年7月 10 日まで)に当該有価証券報告書の提出ができなかった場合、当社株式は整理銘柄に指定された後、上場廃止となります。」との記載があります。続く記載には、上場廃止を避けることに努めるとの説明がありますが、リリースにおいて上場廃止の可能性について言及している以上、ENECHANGE社においても上場廃止は現実的可能性があるものと認識していることが推測されます。
2024年7月9日付「上場維持基準(純資産基準)への適合に向けた計画(改善期間入り)について」で公表されたとおり、ENECHANGE社は2023年12月期において上場維持基準を満たしていないとされています。ただし、同リリースにおいて改善機関である2024年12月末までに上場基準を満たす計画も公表しており、近い時期での上場廃止の可能性は低いと考えられます。
「重要な事項についての虚偽記載」の該当性
虚偽記載の該当可能性
本件リリースによれば、ENECHANGE社は、2023年12月期より本格的に立ち上げた新規事業であるEV充電事業において、同社グループが採用するSPCスキームにおける SPCを非連結としていたところ、連結範囲に含めるべきであるとの結論に至ったとのことです。
そのうえで、SPC を非連結としていた従来の会計処理について、前提となる事実関係を明らかにすること等を目的として、独立した外部の有識者による外部調査委員会を設置し、外部調査委員会に調査を依頼することが公表されました。
SPCを非連結とした理由等については外部調査委員会の報告書が待たれますが、仮に、これが業績の悪い子会社(SPC)を意図的に連結から外すことにより、グループ全体の業績を良く見せる「連結外し」のような不正会計であれば、金商法上の「虚偽記載」に該当する可能性も十分あり得るところです。
調査報告書によれば、SPCを非連結とした判定について、ENECHANGE社の説明と監査法人側の認識と差異があったとの説明がなされています。連結の対象となるか否かは企業会計基準委員会の定める基準に則って判断されるものですから、会計処理がこれに適合していなかったとすれば、金商法上の「虚偽記載」に該当すると判断される可能性はあるでしょう。
(虚偽記載の)「重要性」の該当可能性
また、本件リリースによれば、SPCを連結範囲に含めることにより「売上高22億円程度の減少、営業損失8億円程度の増加及び経常損失9億円程度の増加が発生する見込み」とされています。
これはあくまで見込みですが、訂正前の同社の2023年12月期の連結経営成績は「売上高66億2500万円、営業損失10億6600万円、経常損失11億9900万円」とされていますから、この規模の業績の下方修正が投資家の投資判断に影響を与えることは容易に想像できるところで、仮に虚偽記載であるとした場合に、「重要な事項について」の虚偽記載であると認められる可能性も高いと考えられます。
*「重要な事項についての虚偽記載」の該当性については、案件ごとの具体的判断になりますので、今後情報が公開され次第随時更新いたします。
証券訴訟に参加できる投資家の範囲
実際に証券訴訟の提起を行う場合であっても、ENECHANGE社の株式を保有する全ての投資家が証券訴訟に参加できるわけではありません。
証券訴訟に原告として参加できる投資家は、虚偽記載のある有価証券報告書等が提出・公開された日の翌日から虚偽記載の発覚が公表された日までに株式を取得した方に限られます。(それ以外の方は、虚偽記載に起因した損害を受けていないと認定されることになります。)
今回問題となっているSPC(EV 充電インフラ1号合同会社)は2023年2月に設立されたようですが、仮に、2023年12月期(通期)でSPCを連結範囲に含めるべきだったとすると、過去に提出した
- 2023年12月期第1四半期報告書
- 2023年12月期第2四半期報告書
- 2023年12月期第3四半期報告書
につき、それぞれ虚偽記載が存在した可能性があることになります。
また、本件リリースでは、「外部調査委員会の調査結果によっては2022年12月期の有価証券報告書等への影響が出る可能性があります。」との記述もあり、証券訴訟に参加できる投資家の範囲が更に過去に広がる可能性もあります。
いずれの書類に虚偽記載があったかという点は、外部調査委員会の報告書やENECHANGE社の訂正報告書の内容で明らかになります。この点についても、今後情報が公開され次第随時更新いたします。
証券訴訟で請求できる損害賠償の額
証券訴訟における損害の計算は、金商法21条の2第5項の損害額の推定規定を利用する場合と利用しない場合で異なります。
このうち、推定規定を利用しない場合は、訂正の報告書が提出された後の株価の値動きが算定に影響することがあり、訂正報告書が提出されていない現時点においては予測が困難です。
一方、推定規定を利用する場合は、虚偽記載が「公表」される前1か月間の平均株価と「公表」された後1か月間の平均株価の差額が、1株当たりの損害となります(ただし、この推定規定が利用できるのは「公表」1年前から「公表」の日の前日の間に取得した株式に限られます)。
ここで、仮に「公表」の時期を2024年3月27日(本件リリースが公表された日)とすると、この前1か月間(2月27日~3月26日)のENECHANGE社の平均株価は995.0円です。
次に「公表」された後の平均株価ですが、公表の翌日(2024年3月28日)から本日時点(※2024年4月26日更新)では平均株価は552.6円です。
そのため、差額は約442.4円であり、この額に保有株式数(※「公表」前1年前から「公表」の前日の間に取得した株式に限られます)をかけた額が(本日までの株価を基準と仮定した場合の)請求額となります。
ただし、この推定規定にも上限があることや、会社側が虚偽記載以外の値下がり要因を証明した場合には減額されることがあります。
まとめ
当事務所では、今後もENECHANGE社の動向について注視するとともに、同時に集団訴訟の準備も行っております。
当事務所では、実費相当額程度(請求額の1.1%+1.1万円、税・実費込み)の着手金で証券訴訟に対応しており、最低限の負担で被害回復を目指すことができます(成功報酬は別途発生します)。
ご自身が集団訴訟に参加できるか、また請求額はどのくらいになるかといったご相談もお受けしておりますので、ENECHANGE社に対する証券訴訟をお考えの方はぜひ一度当事務所までお問い合わせください。