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【証券訴訟】ENEGHANGE株式会社に対する証券訴訟の可能性

2024年3月27日、ENEGHANGE株式会社(以下「ENEGHANGE社」といいます。)は、同日付「外部調査委員会の設置及び2023年12月期有価証券報告書の提出期限延長申請の検討に関するお知らせ」(以下「本件リリース」といいます。)を公表しました。

 

当事務所は、当該リリースを精査した結果、同社に対する証券訴訟の可能性があると判断するに至りました。
本記事では、ENEGHANGE社に対する証券訴訟及びその可能性について解説します。

証券訴訟とは

証券訴訟」とは、有価証券報告書等の虚偽記載(粉飾決算など)によって上場会社の株価が下落した場合に、投資家が提起する損害賠償請求の訴訟をいいます。

本件リリースにおいて公表された会計処理が「虚偽記載」に該当する場合、ENEGHANGE社の株主は、同社(及びその役員等)に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
この損害賠償請求の訴訟が「証券訴訟」となります。

有価証券報告書の提出期限延長に至った経緯 *随時更新(2024.4.25時点)

ENEGHANGE社が有価証券報告書の提出期限を延長することになった経緯について、同社が公表している情報をもとに時系列でまとめました。

 

日時 イベント
2024.2.9 2023年12月期 決算短信[日本基準](連結)
(URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/tdnet/2394125/00.pdf
2024.3.6 「第9期定時株主総会の「継続会」の開催方針に関するお知らせ」
(URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/tdnet/2407375/00.pdf
2024.3.27 「外部調査委員会の設置及び2023年12月期有価証券報告書の提出期限延長申請の検討に関するお知らせ」(本件リリース
(URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/tdnet/2414479/00.pdf
「子会社の異動に関するお知らせ」
(URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/tdnet/2414478/00.pdf
「業績予想の修正(未定)に関するお知らせ」
(URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/tdnet/2414477/00.pdf
2024.3.28 第9期定時株主総会において、決算報告を見送り
(URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/announcement/97142/00.pdf
2024.3.29 「2023年12月期有価証券報告書の提出期限延長に関する承認申請書提出のお知らせ」
(URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/tdnet/2416624/00.pdf
2024.4.1 「2023年12月期有価証券報告書の提出期限延長申請に係る承認のお知らせ」
(URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/tdnet/2417458/00.pdf
2024.4.19 「当社代表取締役 CEO による当社株式の売却に関するお知らせ」
(URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4169/tdnet/2423255/00.pdf

※2024年4月25日更新

現在は、外部調査委員会による調査が行われている最中です。

ENEGHANGE社は、外部調査委員会の調査結果を受けて、遅くとも2024年6月28日(金)までに、関東財務局に有価証券報告書を提出する必要があります。(万が一、この期限に間に合わず、期限から8日目までに有価証券報告書が提出されない場合には、東京証券取引所の上場廃止基準に抵触し、最悪の場合、ENEGHANGE社が上場廃止となるおそれもあります。)

 

「重要な事項についての虚偽記載」の該当性

虚偽記載の該当可能性

本件リリースによれば、ENECHANGE社は、2023年12月期より本格的に立ち上げた新規事業であるEV充電事業において、同社グループが採用するSPCスキームにおける SPCを非連結としていたところ、連結範囲に含めるべきであるとの結論に至ったとのことです。

そのうえで、SPC を非連結としていた従来の会計処理について、前提となる事実関係を明らかにすること等を目的として、独立した外部の有識者による外部調査委員会を設置し、外部調査委員会に調査を依頼することが公表されました。

SPCを非連結とした理由等については外部調査委員会の報告書が待たれますが、仮に、これが業績の悪い子会社(SPC)を意図的に連結から外すことにより、グループ全体の業績を良く見せる「連結外し」のような不正会計であれば、金商法上の「虚偽記載」に該当する可能性も十分あり得るところです。

(虚偽記載の)「重要性」の該当可能性

また、本件リリースによれば、SPCを連結範囲に含めることにより「売上高22億円程度の減少、営業損失8億円程度の増加及び経常損失9億円程度の増加が発生する見込み」とされています。

これはあくまで見込みですが、訂正前の同社の2023年12月期の連結経営成績は「売上高66億2500万円、営業損失10億6600万円、経常損失11億9900万円」とされていますから、この規模の業績の下方修正が投資家の投資判断に影響を与えることは容易に想像できるところで、仮に虚偽記載であるとした場合に、「重要な事項について」の虚偽記載であると認められる可能性も高いと考えられます。

*「重要な事項についての虚偽記載」の該当性については、案件ごとの具体的判断になりますので、今後情報が公開され次第随時更新いたします。

 

証券訴訟に参加できる投資家の範囲

実際に証券訴訟の提起を行う場合であっても、ENECHANGE社の株式を保有する全ての投資家が証券訴訟に参加できるわけではありません。

証券訴訟に原告として参加できる投資家は、虚偽記載のある有価証券報告書等が提出・公開された日の翌日から虚偽記載の発覚が公表された日までに株式を取得した方に限られます。(それ以外の方は、虚偽記載に起因した損害を受けていないと認定されることになります。)

今回問題となっているSPC(EV 充電インフラ1号合同会社)は2023年2月に設立されたようですが、仮に、2023年12月期(通期)でSPCを連結範囲に含めるべきだったとすると、過去に提出した

  • 2023年12月期第1四半期報告書
  • 2023年12月期第2四半期報告書
  • 2023年12月期第3四半期報告書

につき、それぞれ虚偽記載が存在した可能性があることになります。

また、本件リリースでは、「外部調査委員会の調査結果によっては2022年12月期の有価証券報告書等への影響が出る可能性があります。」との記述もあり、証券訴訟に参加できる投資家の範囲が更に過去に広がる可能性もあります。

いずれの書類に虚偽記載があったかという点は、外部調査委員会の報告書やENECHANGE社の訂正報告書の内容で明らかになります。この点についても、今後情報が公開され次第随時更新いたします

 

証券訴訟で請求できる損害賠償の額

証券訴訟における損害の計算は、金商法21条の2第5項の損害額の推定規定を利用する場合と利用しない場合で異なります。

このうち、推定規定を利用しない場合は、訂正の報告書が提出された後の株価の値動きが算定に影響することがあり、訂正報告書が提出されていない現時点においては予測が困難です。

一方、推定規定を利用する場合は、虚偽記載が「公表」される前1か月間の平均株価と「公表」された後1か月間の平均株価の差額が、1株当たりの損害となります(ただし、この推定規定が利用できるのは「公表」1年前から「公表」の日の前日の間に取得した株式に限られます)。

ここで、仮に「公表」の時期を2024年3月27日(本件リリースが公表された日)とすると、この前1か月間(2月27日~3月26日)のENECHANGE社の平均株価は995.0円です。

次に「公表」された後の平均株価ですが、公表の翌日(2024年3月28日)から本日時点(※2024年4月26日更新)では平均株価は552.6円です。

そのため、差額は約442.4円であり、この額に保有株式数(※「公表」前1年前から「公表」の前日の間に取得した株式に限られます)をかけた額が(本日までの株価を基準と仮定した場合の)請求額となります。

ただし、この推定規定にも上限があることや、会社側が虚偽記載以外の値下がり要因を証明した場合には減額されることがあります。

 

まとめ

当事務所では、今後もENECHANGE社の動向について注視するとともに、同時に集団訴訟の準備も行っております。

当事務所では、実費相当額程度(請求額の1.1%+1.1万円、税・実費込み)の着手金で証券訴訟に対応しており、最低限の負担で被害回復を目指すことができます(成功報酬は別途発生します)。

ご自身が集団訴訟に参加できるか、また請求額はどのくらいになるかといったご相談もお受けしておりますので、ENECHANGE社に対する証券訴訟をお考えの方はぜひ一度当事務所までお問い合わせください。

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