立退きって拒否できる?オーナーから退去を求められたときに知っておくべき基本ルール【事業用賃貸借】
ビルの一区画を事業用に借りて営業していたところ、突然オーナーから
「退去してほしい」
と言われた――。
このような状況に直面すると、
・オーナーに言われた以上、出ていかなければならないのではないか
・今の場所を離れたら、事業はどうなるのか
・移転先は本当に見つかるのか
といった不安が一気に押し寄せてくると思います。
しかし、オーナーから退去を求められた場合でも、必ず応じなければならないわけではありません。
この記事では、事業用賃貸借を前提として、
オーナーから退去を求められたときに拒否できるのか、
どのような場合に退去が認められるのか、
その基本ルールを分かりやすく解説します。
1 オーナーの都合だけでは退去は認められない(原則として拒否できる)
結論からいうと、事業用テナントは原則として退去を拒否できます。
「オーナーに言われたら出るしかない」
そう考えてしまう方は少なくありませんが、法律上は必ずしもそうではありません。
基本的な考え方は、
オーナーの一方的な都合だけでは、テナントを退去させることはできない
という点にあります。
そのため、テナントが退去を拒否できる場合、オーナー側は
・テナントから退去の合意を得る
・そのために立退料を提示して交渉する
といった対応を取らざるを得ません。
テナント側としては、
・そのまま営業を継続する
・納得できる条件(立退料)が提示されるなら退去に応じる
といった選択が可能になります。
もっとも、法的に退去が認められるケースも存在します。
その場合には、退去を拒否することはできません。
そこで重要になるのが、
オーナーがどのような理由で退去を求めているのか
を正確に把握することです。
2 退去が認められる主な4つのパターン
事業用賃貸借において、法的に退去が認められる主なケースは、次の4つです。
① 定期建物賃貸借の契約期間が満了した場合
② 更新拒絶・解約申入れに「正当事由」がある場合
③ 契約違反により信頼関係が破壊された場合
④ 退去について合意した場合
※厳密には他にも退去義務が生じる場合はありますが、実務上トラブルになりにくいため、ここでは省略します。
以下、順に解説します。
① 定期建物賃貸借の契約期間が満了した場合
事業用賃貸借には、定期建物賃貸借という契約形態があります(借地借家法38条)。
実務では「定借(ていしゃく)」と呼ばれることもあります。
定期建物賃貸借は、
契約期間が満了すると、原則として契約が終了する
という特徴を持つ契約です。
この場合、オーナーと再契約できなければ、テナントは退去しなければなりません。
また、原則として立退料の支払いは発生しません。
ただし、定期建物賃貸借が有効と認められるためには、次の要件を満たす必要があります。
・書面による賃貸借契約があること
・契約時に「更新がないこと」「期間満了により契約が終了すること」を記載した書面が交付されていること
・原則として、契約期間満了の6か月前までに、オーナーから満了通知がされていること
これらの要件を欠いている場合、
定期建物賃貸借として扱われず、退去を拒否できる可能性があります。
「定借だから仕方ない」と思い込まず、契約内容と手続を確認することが重要です。
② 更新拒絶・解約申入れに「正当事由」がある場合
定期建物賃貸借ではない、いわゆる普通賃貸借の場合、
・契約期間満了を理由に更新を拒否する
・オーナーが自ら使用したいなどとして解約を申し入れる
といった場面では、「正当事由」が必要になります。
この正当事由の有無は、
・オーナー側の事情
・テナント側の事情
を総合的に比較して判断されます。
そのため、
「自分で使いたい」「新しいビルに建て替えたい」
という理由だけで、直ちに退去が認められるわけではありません。
また、正当事由の判断においては、オーナーが提示した立退料の金額も考慮されます。
オーナー側の事情が弱くても、立退料が高額であれば、正当事由が認められやすくなる関係にあります。
なお、正当事由があるかどうかは、最終的には裁判で判断されます。
判決までには1年以上かかることも多く、その間オーナーが待てない場合、(裁判中であっても)交渉により高額な立退料が提示されるケースもあります。
③ 契約違反により信頼関係が破壊された場合
次のような契約違反がある場合、オーナーは契約解除を主張できます。
・賃料の長期不払い
・無断転貸
・用法違反(目的外使用)
賃貸借契約では、軽微な違反だけで直ちに解除されることはありませんが、違反の程度が大きく、信頼関係が破壊されたと評価される場合には、解除が認められます。
これによる解除の場合、立退料の支払いはなく、逆に損害賠償請求を受ける可能性もあります。
もっとも、信頼関係破壊が認められるかどうかも、最終的には裁判で判断されます。
そのため、微妙なケースでは、一定の立退料を支払って合意退去となることも珍しくありません。
④ 退去について合意した場合
賃貸借契約の期間中に退去について合意した場合は、その合意に従う必要があります。
一度退去に合意してしまうと、後から立退料や退去費用(引っ越し費用など)を請求することは極めて困難になります。
そのため、
・先に退去だけ合意する
・退去費用の話は後回しにする・先に退去だけ合意する
といった対応は避けるべきです。
立退料について要望がある場合は、
必ず退去の合意をする前に条件を詰めておく必要があります。
3 まとめ
・事業用賃貸借でも、退去は原則として拒否できる
・オーナーの都合だけでは足りず、法的な要件が必要
・初動の判断を誤ると、取り返しがつかないことがある
退去を求められた段階で、冷静に状況を整理することが何より重要です。
八重洲コモンズ法律事務所では、
オーナーから立退きを求められた事業者の方からのご相談をお受けしています。
立退き交渉では、単に金額を提示するのではなく、
業界相場や物件の特性を踏まえた、根拠ある立退料の算定が重要になります。
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