立退料はいくらもらえる?相場や計算方法を弁護士が解説【事業用賃貸借】
「オーナーから立退料として○○万円を提示されたが、妥当な金額なのだろうか。」
「立退料には相場があるのだろうか。」
店舗や事務所を借りて営業している方から、このようなご相談をいただくことがあります。
結論から申し上げると、立退料には法律で定められた相場や計算式はありません。
同じ賃料の店舗であっても、数百万円で解決するケースもあれば、数千万円以上になるケースもあります。
これは、立退料が単なる「引越代」ではなく、借主が立ち退くことによって被る様々な不利益を補償するためのお金だからです。
そのため、営業年数や業種、立地、移転費用、売上への影響などによって金額は大きく変わります。
この記事で解説するポイント
- 立退料とは何か
- 立退料に相場はあるのか
- 金額はどのように決まるのか
- オーナーから提示された金額が適正か判断するポイント
について、事業用賃貸借を中心に弁護士が分かりやすく解説します。
立退料とは?
立退料とは、借主が退去することによって受ける不利益を補償するために、オーナーが支払う金銭です。
事業用賃貸借では、店舗や事務所を移転することにより、借主は単に引越費用が発生するだけではありません。
発生し得る費用の例
- 新店舗・新事務所の契約費用
- 内装工事費
- 引越費用
- 営業を休止する期間の損失
- 常連客の減少による売上への影響
- 移転先を周知するための広告宣伝費
など、多くの負担が生じることがあります。そのため、立退料はこうした損失を考慮して決められることになります。
もっとも、立退料は法律上当然に支払われるものではありません。
普通借家契約では、オーナーが契約を終了させるためには「正当事由」が必要とされており、立退料はその正当事由を補完する重要な事情の一つとして位置付けられています。
立退料に相場はある?
結論として、法律で定められた相場はありません。
この点を示す裁判例として、東京高判昭和50年4月22日・金法772号33頁があります。
この判決では、立退料について、
賃貸借契約成立の時期および内容、その後の建物利用関係、解約申入当時における双方の事情を総合比較考量して、裁判所が裁量により自由に決定しうる性質のもの
と判示されています。
つまり、立退料には決まった計算式はなく、ケースごとに判断されるということです。
インターネットでは、「家賃12か月分」「家賃24か月分」「家賃36か月分」など様々な情報が見つかりますが、これらはあくまで一部の事例であり、すべてのケースに当てはまるものではありません。
実際の立退料は、以下の要素を総合的に考慮して決められます。
- 契約内容
- 建物の種類
- 業種
- 営業年数
- 店舗の立地
- 建物の老朽化
- 建替えの必要性
- 営業への影響
そのため、「家賃○か月分だから妥当」という判断はできません。
提示された金額が適正かどうかは、個別の事情を踏まえて検討する必要があります。
立退料はどのように決まる?
立退料には決まった計算式はありませんが、実務では次のような要素が考慮されます。
① 移転費用
新たな店舗や事務所へ移転するために必要となる費用です。
敷金・礼金、仲介手数料、引越費用、内装工事費などが含まれることがあります。
立退きはオーナー側の都合によるものですから、テナント側に債務不履行などの落ち度がない限り、実際にかかる移転費用を下回る金額で退去するのは適切とはいえません。
② 賃料差額保証
現在の賃料と移転後の賃料に差が生じる場合、その差額の一定期間分を補償の対象とすることもあります。
差額を何か月分補償するかはケースによって異なりますが、交渉の余地があるポイントです。また、この部分が立退料の最も多くのウエイトを占めるケースも珍しくありません。
③ 営業補償
店舗を移転することで、一時的な休業や売上の減少が生じることがあります。
休業中でも固定費や人件費が発生することもありますし、長年築いてきた顧客との関係が失われる可能性もあります。こうした営業上の不利益も、立退料を検討する際の重要な要素になります。
④ 借家権に対する補償
借主には、建物を使用し続ける利益(借家権)があります。
立ち退きによってこの利益を失うため、その価値が立退料の算定に反映される場合があります。
⑤ 個別事情
営業年数や立地、建物の利用状況など、個別の事情によっても金額は大きく変わります。
特に、同じ場所で長年営業を続けてきた店舗では、移転による影響が大きく評価されることがあります。
立退料が増額されやすいケース
一般的には、次のような事情がある場合には、立退料が高額になる可能性があります。
高額になりやすいポイント
- 長年同じ場所で営業している:築き上げた顧客基盤や認知度の損失が大きい
- 移転による営業への影響が大きい:飲食店・美容室・クリニックなど立地依存度が高い業種
- 移転費用が高額になる:特殊な設備設置・高額な内装工事費など
- オーナー側の建替え・再開発の必要性が高い:開発等の理由でどうしても立ち退かせたい事情がある
提示された立退料が適正とは限らない
オーナーから提示された立退料が、そのまま適正な金額とは限りません。実際には、交渉によって金額が見直されるケースも少なくありません。
特に、営業への影響や移転費用などが十分に考慮されていない場合には、提示額が適正かどうか慎重に検討することが重要です。
立退料は個別事情によって大きく異なるため、「提示されたからそのまま受け入れる」「インターネットで見た相場だけを基準に判断する」といった対応は避けた方がよいでしょう。
不安がある場合には、事業用賃貸借に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
提示された立退料に納得できない場合の対応
オーナーから立退料を提示されたとしても、その金額にすぐ同意する必要はありません。
提示額に納得できない場合には、次のステップを意識して対応するとよいでしょう。
その場で退去や立退料について了承してしまうと、後から条件の見直しが難しくなることがあります。提示された内容は持ち帰り、契約内容や立退料の根拠を確認した上で判断することが大切です。
オーナーからの通知書やメール、LINEなどのやり取りは保管しておきましょう。また、口頭で説明を受けた場合も、日時や内容をメモしておくと、後の交渉や訴訟で役立つことがあります。
移転に必要な費用、内装工事費、営業休止による損失、売上や顧客への影響などをあらかじめ把握しておくことで、交渉の基礎資料になります。
判断に迷う場合には、事業用賃貸借に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。早い段階で相談することで、提示額の妥当性や今後の見通しについてアドバイスを受けられます。
弁護士に相談するメリット
弁護士に相談することで、例えば次のようなサポートを受けることができます。
弁護士による主なサポート内容
- 提示された立退料が適正か判断できる:法的な観点から適正額や交渉の余地を徹底検討
- オーナーとの交渉を任せることができる:代理人交渉により精神的負担を大幅に軽減
- 訴訟になった場合にも対応できる:交渉から訴訟まで一貫してアドバイス・対応可能
【早めの相談が重要です】
立退き交渉では、一度退去に合意してしまうと、その後に条件を見直すことが難しくなる場合があります。
そのため、オーナーから立退きを求められた場合や立退料の提示を受けた場合には、すぐに合意するのではなく、まずは契約内容や提示内容を確認した上で、必要に応じて弁護士へ相談することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
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立退料に法律上の相場はありますか?
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いいえ、立退料に法律で定められた相場はありません。
立退料は、営業への影響や移転費用、借家権の価値など、個別の事情を総合的に考慮して決められます。そのため、「家賃○か月分」といった一律の基準はありません。
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オーナーから提示された立退料は、そのまま受け入れなければなりませんか?
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その必要はありません。
提示された立退料が適正とは限らず、交渉によって金額や条件が見直されるケースもあります。提示内容に疑問がある場合は、契約内容や営業への影響などを確認した上で判断することが大切です。
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建物の建替えを理由に退去を求められた場合は、必ず退去しなければなりませんか?
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必ず退去しなければならないわけではありません。
普通借家契約では、オーナーが契約を終了させるためには正当事由が必要です。建替えを予定しているという事情は正当事由の判断要素の一つですが、それだけで契約が終了するとは限りません。
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立退料には何が含まれますか?
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ケースによって異なりますが、移転費用、営業補償、借家権に対する補償などが考慮されることがあります。
どのような損失が補償の対象となるかは、契約内容や営業状況などによって異なります。
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弁護士にはどのタイミングで相談すればよいですか?
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立退きを求められた段階や、立退料の提示を受けた段階で相談することをおすすめします。
早い段階で相談することで、提示された条件が適正かどうかを確認できるほか、その後の交渉や対応方針についてアドバイスを受けることができます。
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八重洲コモンズ法律事務所の実績は?
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事業用賃貸物件の立ち退きについて豊富な実績があります。交渉により、当初提示額より賃料の100か月分以上の立退料の増額に成功した事例もございます。
当事務所では、不動産分野の専門家とも連携し、交渉の場で説得力を持つ立退料の提示・設定を行っています。
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遠方からの相談も可能ですか?
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全国対応で受け付けております。
電話相談やウェブ会議(LINE電話も可)での相談も承っております。最短当日での対応も可能ですので、お気軽にご連絡ください。
まとめ
この記事のまとめ
- 事業用賃貸借の立退料に法律で定められた相場はない
- 金額は営業補償や移転費用などの個別事情を踏まえて決定される
- 提示された金額に納得いかない場合は安易に同意しない
事業用賃貸借における立退料には、法律で定められた相場や一律の計算方法はありません。
実際の金額は、営業への影響や移転費用、借家権の価値など、個別の事情を踏まえて決定されます。そのため、オーナーから提示された立退料が適正かどうかは、ケースごとに慎重に検討する必要があります。
また、提示された立退料に納得できない場合でも、すぐに合意する必要はありません。契約内容や営業への影響などを整理した上で、必要に応じて交渉を行うことが重要です。
立退料は個別事情によって大きく異なるため、判断に迷う場合には、事業用賃貸借に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
八重洲コモンズ法律事務所では、店舗・事務所などの事業用賃貸借に関する立退き問題を取り扱っています。
このようなお悩みはありませんか?
- オーナーから立退料を提示されたが、金額が適正か分からない
- 提示された立退料では移転費用を賄えそうにない
- オーナーとの交渉を弁護士に任せたい
- 立退きを求められたが、退去しなければならないのか知りたい
当事務所では、契約内容や営業状況などを踏まえて法的な見通しをご説明し、必要に応じてオーナーとの交渉や訴訟対応までサポートいたします。立退料や立退きに関するお悩みがございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。
