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本名以外でも認められる!開示請求における特定性(同定可能性)判断のポイント

本名以外の活動名(YouTuber、Vtuber、インフルエンサーなど)の場合や、イニシャルや伏字で書かれている場合、削除請求や開示請求ができるかどうか疑問に思われる方も多くいらっしゃと思います。

そこでこの記事では、特定性(同定可能性)の判断方法について解説しています。

この記事はこんな方におすすめ
  • 本名以外の名義でインターネットで活動されている方
  • イニシャルや伏字の形で誹謗中傷を受けている方
  • 活動名を名指しされて誹謗中傷を受けている方

 

特定性(同定可能性)とは

名誉を毀損したりプライバシーを公開するような情報が書かれていたとしても、それが「誰のことを指しているのか」が分からなければ、発信者情報開示は認められません。

その投稿を見ても誰のことか全く判別できなければ、誰かの名誉が傷ついたとか、プライバシーが侵害されたとはいえないからです。

このように、その投稿を見た人が「誰のことを指しているのか」が分かるかという問題を「特定性同定可能性)」といいます。

 

特定性(同定可能性)はどのように判断されるか

特定性については、一般的には次の基準で判断されると考えられています。

特定性(同定可能性)の判断基準件

原告(開示請求者)と面識がある者又は原告(開示請求者)の属性の幾つかを知る者がその投稿を読んだ場合、その読者にとって、「○○(ネット上の記載)」と原告(開示請求者)とを同定することが可能かどうか(東京地判平成11年6月22日・判タ1014号280頁参照)

※ここでいう「属性」とは、氏名や住所のほか、性別、年齢(年代)、身体的特徴、勤務先、肩書などをいいます。(例えば、「四谷コモンズ法律事務所所属」、「男性」、「弁護士」、「64期」、「30代」は筆者の属性といえます。)

ポイントは、社会にいるあらゆる人が「開示請求者のことを指している」とわからなくてもいいということです。

また、投稿そのものだけでなく、前後の文脈も併せて判断されます。

以上を踏まえ、よくあるケース別に特定性の判断について解説してきます。

 

ケース別 特定性の判断方法

投稿そのものからは特定できないケース

次のような投稿は、投稿そのものを見ただけでは特定性は認められません。

しかし、このスレッドをさかのぼると、次のような記載だったとします。

この場合、「ワタナベ」さんは「弁護士」であり、「四谷二丁目」の「新宿通り沿いにある」「1階にパン屋さんが入っているビルの3階にある」「法律事務所」に勤務していることが読み取れます。

これらの属性がすべてそろっている人は筆者しかいません(2022年1月現在)から、ここでいう「ワタナベさん」は筆者ということで特定性が認められます。

 

イニシャル・伏字のケース

イニシャルや伏字のケースも上記と同じです。

上記のケースで、投稿番号5には「Wさん」や「ワ●●ベ」としか書かれていなかったとしても、「弁護士」であり、「四谷二丁目」の「新宿通り沿いにある」「1階にパン屋さんが入っているビルの3階にある」「法律事務所」に勤務している「Wさん」や「ワ●●ベさん」は筆者しかいませんから、特定性が認められます。

 

源氏名のケース

スタッフの方が源氏名を使用している飲食店において、そのスタッフの悪口が書かれるケース(下の例(投稿番号5))のように、本名ではなく源氏名で誹謗中傷が投稿されることもよくあります。

この例では、高級クラブ「ヨツヤコモンズ」で「ヤスミ」という源氏名を使って接客をしているのは一人しかいないという場合は、特定性ありと判断される可能性が高いでしょう。

ここでのポイントは、お客さんや他のスタッフが「ヤスミ」さんの本名を知らなくても特定性は認められるということです。

お客さんや他のスタッフが、「あのお店のあのスタッフのことだな」とわかれば、特定性ありと判断されます。

 

アカウント名・ネットの活動名義(YouTuber・VTuberなど)のケース

近年、アカウント名やネットの活動名義(YouTuber・VTuberなど)を対象とした誹謗中傷の相談が増えています。

このようなケースでは、ほとんどの場合、本名や顔を公開していません。

そのような場合でも、特定性が認められるケースはあります。

結論からいうと、その名義で外部的な活動を行っていたかどうかが最も重要なポイントになります。

その名義でオフ会に参加したとか、ライブを開催した、他人とコラボした、ゲーム大会に参加した、といった活動が多いほど特定性が認められる傾向にあります。

なぜなら、外部的な活動を行うほど、その名義を見たときに「(実在する)あの人のことだ」とわかる人が増えてくるからです。

逆にその名義では外部的な活動をしておらず、実在の人とその名義を紐づけられる人がほとんどいないケースでは、特定性は認められません。

 

>>Vtuberの方の開示請求については以下の記事で解説しています。


このように、特定性は周辺の記載と併せて判断されます

個人的には特定性は割と緩やかに認められる印象です。

ご自身のケースで判断に迷う方は、ぜひ当事務所までご相談ください。

 

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AUTHORこの記事を書いた人

弁護士 渡辺泰央

弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。

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