後遺障害の異議申し立ての成功率は?おすすめの方法を弁護士が解説
交通事故などによって怪我をしたとき、その症状や程度に応じて保険会社から後遺障害認定が行われます。しかし、この内容に納得できなかったり、不満がある場合には後遺障害の不服(異議)申し立てが可能です。
本記事では、後遺障害の不服(異議)申し立ての流れや成功させるためのポイントなどを詳しく解説します。
後遺障害の不服(異議)申し立ての3つの方法
後遺障害の不服(異議)申し立てには、主に3つの方法があります。
それぞれの方法について詳しく解説しましょう。
①保険会社への異議申し立て
まず、自動車事故による後遺障害認定の方法には、⑴事前認定と⑵被害者請求の2つの方法があります。⑴事前認定は加害者が加入する任意保険会社を通じて後遺障害認定の申請を行うもので、⑵被害者請求は後遺障害認定について被害者が自ら申請を行うものです。
このいずれかの方法により後遺症認定の結果が出ることになりますが、結果に不満がある場合は、改めて⑴事前認定又は⑵被害者請求を行うことができます。このことを一般的に「異議申し立て」と呼んでいます。
いずれの異議申し立てであっても、異議申立書および証拠資料、医師の意見書などを提出することで、その後、書類と証拠資料などを審査・検討し、再度後遺障害認定を下すべきかどうかの判断が行われます。
実際は、⑴事前認定によって決定された後遺障害認定の内容について、改めて⑴事前認定の方法により異議を申し立てても決定内容が変更される可能性は高くないといわれています。そのため、異議申し立てを行う際は⑵被害者請求で行われることが一般的です。
②紛争処理制度の利用
保険会社の後遺障害認定に不服がある場合、「自賠責保険・共済紛争処理機構」に対し調停を依頼することができます。
紛争処理機構は中立的な第三者機関であるため、後遺障害認定が見直される可能性があります。また、審査結果は保険会社に対して法的拘束力があります。
③訴訟提起
保険会社の後遺障害認定に不服がある場合は、裁判所を介して損害賠償請求の訴訟を行うこともできます。訴訟では、事前に受けた後遺症等級の認定に拘束されず、裁判所が独自に判断するため、よりよい結果が得られるケースがあります。上記①②の方法で不服(異議)申し立てが成功しなかった場合には、この訴訟が選択されることになります。
後遺障害の不服(異議)申し立てを行うべきケース
後遺障害の不服(異議)申し立てはどのような場合に行ったほうが良いのでしょうか。
保険会社の評価に納得できない・不適切な場合
保険会社による後遺障害の評価が適切でないと感じた場合、不服(異議)申し立てを検討してみましょう。たとえば、資料が不十分であるなど場合、後遺障害の程度が正しく評価されていない可能性があります。不服(異議)申し立てを行うことで、適切な評価を求めることができます。
後遺障害が認められなかった(非該当)場合
事故によって心身にさまざまな不調・症状が現れたとしても、それが必ずしも後遺障害として認められるとは限りません。場合によっては、後遺障害が認められない「非該当」として処理されるケースもあります。
明確に症状が出ているのに、保険会社によって非該当と判断された場合には、後遺障害の不服(異議)申し立てを行うことで認めてもらえる可能性もあります。
後遺障害の不服(異議)申し立てを行う流れ
実際に後遺障害の不服(異議)申し立てを行う場合には、どのような流れで進めていくのでしょうか。それぞれのパターンに分けて解説します。
保険会社への異議申し立て
保険会社への異議申し立ては以下の流れで進めていきます。
1.必要書類の収集
専門家や医師の意見書など、提出すべき証拠や書類を収集します。異議申し立てにあたっては、前回の申立時とは異なる書類を提出することで後遺障害が認定される可能性が高まるでしょう。
2.異議申立書の作成
必要書類の収集と合わせて、異議申立書も作成しておく必要があります。
どのような部分・内容に対して異議があるのか、それを証明する客観的な証拠や事実などを説明するための書面を異議申立書とよびます。
明確な書式や書き方が決められているわけではありませんが、できるだけ詳しく簡潔に記載しておくことが大切です。
3.審査機関への提出
異議申立書を含む必要書類を保険会社に提出します。
4.審査
自賠責損害調査事務所で審査が行われます。審査に要する期間は通常は1~3ヶ月程度ですが、状況によっては半年程度を要することもあります。
自賠責保険・共済紛争処理機構への異議申し立て
自賠責保険・共済紛争処理機構へ異議を申し立てる場合には、以下の流れに沿って進められます。
1.申請書の受付
まずは自賠責保険・共済紛争処理機構へ申請書を提出します。なお、申請書の受付後は、自賠責保険・共済紛争処理機構から当事者に対して申請があった旨の通知も届きます。
2.受理判断
自賠責保険・共済紛争処理機構への異議申し立てにあたって、申請自体は誰でも可能ですが、受理ができるかどうかは保険会社から関係書類を取り寄せたうえで判断されます。
3.調停
受理した書類をもとに紛争処理委員会とよばれる組織で審査が行われ、調停に入ります。
4.調停結果の通知
調停が終わったら、当事者および保険会社など関係者に対して結果の通知が届きます。
訴訟提起
訴訟提起の場合、裁判所へ訴状を提出したあとで裁判官が後遺障害等級の判断を行います。
訴訟提起は弁護士を通して行われるのが一般的であり、弁護士へ書類や証拠の提出をしたあとは、各弁護士へ任せるだけで進められるため負担は少ないです。
後遺障害の不服(異議)申し立てに必要な書類
後遺障害の不服(異議)申し立てにあたっては、具体的にどのような書類が必要なのでしょうか。こちらも各パターンに応じて解説します。
保険会社への異議申し立て
異議申立書以外に必要な書類としては、新たな証拠書類が必要といえます。
たとえば、病院での検査に不備や漏れなどが見つかった場合には、再度検査を行い、レントゲン画像や医師の意見書などを用意します。
また、これ以外に、事故当時の状況を示すものとしてドライブレコーダーの映像や実況見分調書なども該当します。
自賠責紛争処理機構への異議申し立て
自賠責紛争処理機構への異議申し立てにあたっては、紛争処理申請書の提出が必要です。指定の書式に沿って記載する必要があり、フォーマットは自賠責保険・共済紛争処理機構の公式サイトからでも入手可能です。
また、これに加えて損害保険料率算出機構への異議申し立て時と同様に、新たな証拠書類の提出も必須でしょう。
訴訟提起
訴訟提起にあたって必要な書類には訴状とよばれるものがありますが、これは弁護士に依頼することで作成を代行してくれます。
訴状の作成にあたっては、保険会社および自賠責紛争処理機構への異議申し立てと同様、新たな証拠書類などが求められます。
後遺障害の不服(異議)申し立てで最もおすすめな方法は?
後遺障害の不服(異議)申し立てを初めて行う場合には、まずは保険会社への異議申し立て(被害者請求)を検討することになります。この方法では効果が出ない・乏しいと判断される場合は、訴訟提起を検討することが一般的です。
いずれの方法でも、弁護士に依頼することで書類の作成や手続の遂行を任せることが可能です。弁護士費用は発生しますが、ご自身の加入している任意保険に弁護士費用特約が付いている場合は負担を抑えることが可能です。
自賠責保険・共済紛争処理機構の場合、指定の書式へ記載しなければならないという厳密なルールがあるため、自分自身で行う場合にはハードルが高く感じられるかもしれません。また、他の方法と比較して大きいメリットがあるとはいい難いため、この方法を検討する機会は多くはありません。
後遺障害の不服(異議)申し立てにかかる費用
後遺障害の異議申し立て(被害者請求)にあたっては、基本的に申請手数料のようなものはなく無料で行えます。
新たな証拠書類や医師の意見書作成、弁護士への相談費用および訴訟に踏み切る場合などには、別途費用がかかります。もっとも、先述したとおり弁護士費用特約がある場合は負担を抑えることが可能です。
後遺障害の異議(事前認定・被害者請求)申し立ての成功率
損害保険料率算出機構では、「自動車保険の概況」というレポートのなかで後遺障害の異議申し立て(事前認定・被害者請求)に関する実績を公開しています。これによると、2021年度は11,604件のうち、等級変更が認められたのは1,509件であり、成功率は13%となっています。
一見低い数字に見えますが、成功率が低いからといって諦めるのべきではありません。新たな証拠書類などをしっかりと準備し、論理的な説明ができれば、異議申し立てによって等級変更が認められる可能性は十分にあります。また、異議申し立てで効果があがらなかったとしても、訴訟を提起することでよりよい結果が得られるケースも少なくありません。
後遺障害の不服(異議)申し立てを成功させるポイント
後遺障害の不服(異議)申し立てを成功させるためには、どういったポイントに注意すべきなのでしょうか。押さえておきたい3つのポイントを解説します。
認定されなかった理由の分析
まずは、後遺障害が認定されなかった理由を分析し改善策を立てることです。
保険会社からの通知書を詳細にチェックし、不足している証拠や情報を特定しましょう。また、専門家からも意見を求め、自身の状況と照らし合わせることで認定基準や手続きに関する理解を深めることができます。
新たに準備すべき書類の検討
分析した理由をもとに、不服(異議)申し立てにどのような書類が必要かを整理し準備しましょう。
医師による診断書や検査結果などのほか、専門家の意見書なども挙げられます。書類が不足していた場合や内容が不十分である場合は、医師や専門家と相談しながら適切な書類を作成しましょう。
医療照会に関する医師との相談
医師との相談では、後遺障害の状況や進行度についての診断書や意見書を作成してもらいましょう。
これらは後遺障害の異議申し立てに重要な役割を果たすため、具体的な症状や影響について伝えることが大切です。
さらに、被害者の担当医に対し、審査会から後遺症に関する質問(医療照会)が書面で届くことがあります。審査会側へ必要な情報が適切に伝わるよう医師と連携しておくことも大切です。
四谷コモンズ法律事務所は、専門医と連携した後遺障害の不服(異議)申し立てに対応可能
後遺障害の異議申し立てにあたっては、証拠書類として医師による診断書や意見書が求められることがあります。しかし、信頼できる専門医が見つからない、またはどこに依頼すれば良いか分からない方も多いでしょう。
そのような場合には、YKR Medical Consultをお勧めしております。YKR Medical Consultでは専門医による交通事故意見書の作成が可能で、後遺障害の不服(異議)申し立てに対応しています。
意見書の内容が複数診療科にまたがる場合であっても、複数医師による意見書作成も可能であり、意見書の有効性や信頼性を高めることもできます。
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まとめ
今回紹介してきたように、後遺障害の不服(異議)申し立てにはさまざまな方法があり、弁護士へ依頼しなければ難しいものもあります。
しかし、いずれの方法であっても新たな証拠書類の準備は必須であり、医師による診断書や意見書が求められるケースが少なくありません。
どの医療機関に相談すれば良いか分からない、信頼できる専門医が見つからない場合には、ぜひ一度当事務所までご相談ください