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運営者視点からみる「WELQ」炎上事件とキュレーションサイトの法的リスク

ニュース時事

株式会社ディー・エヌ・エーの運営するサイト「WELQ」が”炎上”し、全記事の非公開に至ったという報道が話題となっています。

当社運営のキュレーションプラットフォームについてのお知らせ

(平成28年11月29日 株式会社ディー・エヌ・エーHPより)

すでに多くのメディアが問題の分析や指摘を行っておりますので、本記事では、サイト運営者の視点から今回の事件の分析をしてみたいと思います。

 

キュレーションサイト側の狙い

キュレーションサイトに限らず、ウェブ上のメディアは独自の記事をより多く持つことをひとつの目標としています。

そうすることでSEO対策につながり、アクセス数が稼げるからです。

アクセス数が稼げることがメディアサイトの正義であり、それを強く推し進めたのが今回の事件の要因のひとつとなっています。

”独自の記事をより多く持つ”ための手段として、DeNAは外注のライターや一般ユーザーに記事作成を行わせていましたが、この手段にある法的リスクが今回の事件を引き起こしたといえます。

 

 

どのような点を法的リスクとして認識すべきだったか

WELQ」のようなサイトを運営するにあたっては、次のような法的リスクを認識すべきといえます。

 

(1) 外部ライターや一般ユーザーの作った記事でも、サイト側が責任を負う場合がある

「”炎上”のきっかけとなった記事は外部ライターや一般ユーザーが作成したもので、サイト側に責任はない」とすることはできません。

確かに、記事を作成した人の責任もあるかもしれません。

しかし、そのこととサイト側が責任を負うかどうかは別問題です。

特に、サイト側はシステムを管理していますし、作成された記事によって利益を得ています。これらの事情からすれば、記事の内容についてサイト側が責任を負わないと法的に判断されることはないでしょう。

そのため、外部ライターや一般ユーザーが他の記事をコピペするなどして著作権侵害をしたり、法令違反の記事を掲載した責任は、サイト側に降りかかってくることもあるのです。

 

(2) 契約によっても法的リスクを記事作成者に転化することはできない

外部ライターや一般ユーザーに記事を作成してもらうにあたって、何らかの契約(主に記事の著作権に関して)を結ぶことが通常です。

しかし、この契約だけでは法的リスクを排除しきれません。

なぜなら、契約とは契約当事者だけを拘束するもので、第三者は無関係だからです。

そのため、記事が国の規則に違反していたとか、記事によって第三者に損害が発生したというケースでは、サイト側は記事作成者との契約を盾にして戦うことはできません。

場合によっては、「作成した記事によってサイト側に損害が生じたときは、記事作成者はその損害を補填する義務を負う」などという契約条項が盛り込まれることもあります。

このような条項によって、(有効性が認められた場合に限られますが)ある程度損害を記事作成者に転化させることは考えられます。

しかし、それでもひとたび”炎上”したときのサイト側のレピュテーション低下は避けることはできません。

 

(3) 利用規約だけでは、法的リスクを排除しきれない

WELQ」の利用規約には、次のような条項があったようです。

「当社は、本サービスの内容、ならびに利用者が本サービスを通じて入手したコンテンツ及び情報等について、その完全性、正確性、確実性、有用性等につき、いかなる責任も負わないものとします。」

これにより、記事の内容に誤りがあったとしても、サイト側は閲覧者に対して責任を負わないと読めます。

しかし、このような規定も万全ではありません。なぜなら、事業者の責任を一切免除するような条項は、消費者契約法により無効となるからです。

もっとも、これを見越してか、「WELQ」の利用規約には次のような条項もありました。

「本注意事項において当社の責任について規定していない場合で、当社の責めに帰すべき事由により利用者に損害が生じた場合、当社は、1万円を上限として賠償するものとします。また、当社は、当社の故意または重大な過失により利用者に損害を与えた場合には、その損害を賠償します。」

消費者保護法によって認められる軽過失の一部免責を規定するものです。ただ、上限が1万円となっており、この額が「消費者の利益を一方的に害する」と判断されれば、やはり消費者保護法により無効となります。

さらに、利用規約はサイト側とユーザーの法的関係のみを縛るものです。国の規制などは別問題ですから、どんなに利用規約を工夫したとしても国の規制を免れることはできません。

 

法的リスクを効果的に排除するには??

配信の前にしっかり内容をチェックするなど、記事の配信に関して責任ある監督をすべきことに尽きます。

今回の事件により、「記事作成者とサイト管理者が一致しないケースでも、サイト管理者も記事の内容について責任を負うことがある」ということがより明確になりました。

”とにかく記事の量を確保し、問題点を指摘されたときに後から修正すればいい”という考え方は極めてリスクの高いものいえます。

キュレーションメディアは、流行の裏で法的リスクも多く指摘されているものです。運営する際はしっかり法的リスクを認識し、それをできる限り排除する体制の構築が必要でしょう。

 

 


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AUTHORこの記事を書いた人

弁護士 渡辺泰央

弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。

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