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「とくダネ!」炎上事件にみる著作権と「報道」の関係性について

Free-Photos / Pixabay

先日、フジテレビの報道番組「とくダネ!」に批難が集中し、炎上しました。ツイッターユーザーの投稿した動画の利用申請があまりに高圧的で、無断利用まで予告したというのが主な理由です。

ただ、これまでテレビがインターネット上のコンテンツを利用したこともないわけではありません。

例えば数年前に流行した、いわゆる「バカッター」の動画はテレビ局による報道にも取り上げられていましたし、この利用に関しては特に批判はなされませんでした。

この違いはどこにあるのでしょうか。

 

著作権と「報道」の関係


今回の事件についての法的な解説はすでに様々なところで述べられていますが、その中にフジテレビ側の行為が法律上許されるという指摘がそれなりにあります。

その根拠が著作権法41条※1です。

しかし、個人的には著作権法41条で正当化されるべきでない事案と考えます。

著作権法41条の趣旨は、著作権と国民の知る権利の調整です。正確な報道のためには他人の著作物の利用を避けられないという場面は間違いなくあります。このような場面で、著作権侵害を避けるあまり報道が不十分になるとすれば、国民の知る権利が機能しません。

そのため、知る権利が重視される場面では「事件を構成」する著作物の権利が少し制限される、というのが法律の趣旨です。

決して報道機関に特権を認めたものではありません。

 

「事件を構成」するものといえるのか


では、今回の事件において、フジテレビの利用を認めるべき事案でしょうか。

確かに天災の状況を報道するという意味では、国民の知る権利に寄与することもあるでしょう。

しかし、天災の状況は他人の動画によらなければ報道できないものではありません。つまり、事実の報道をするために他人の著作権を侵害することが不可避とまではいえないのです。

そう考えると、今回の動画は「事件を構成」しているとはいえないと考えるべきです※2

天災のライブ感などはその場に居合わせた人の撮影によるものでなければ伝わらないというのは確かです。

しかし、そのことを理由に無制限の報道利用を許すとすれば、例えば戦場カメラマンの撮影した写真や映像の法的保護が極めて小さくなってしまいます。

そのような結論が妥当とは思われません。

 

メディアの特性を考えるべきか


知る権利との関係でいえば、該当の動画はすでにインターネット上で公開されています。インターネット上の動画を見れば天災の被害は認識できるのであって、テレビでなければ見られないものではありません。

「メディアが違えば視聴者も違うから報道利用を許すべき」との考えもあり得ると思います。しかし、そのような主張は既に多くの批判を受けているパクリ・コピペサイトによってなされているものです。

つまりこの理屈は、「他人の著作物へのただ乗り」の方便に他なりません。

この点にあっては、インターネットメディアとテレビに違いはないと思います。

 

著作物としての価値に違いはない


個人的には、一般ユーザーが手軽に撮影した映像だからという点で、安易な無断利用が検討されたと思います。しかし、プロが取材したものでも、素人がスマホで撮影したものでも、著作物としての価値に違いはありません。

他人の保有する権利に対しては、どのようなものであっても敬意を払うべきでしょう。

 


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※1 著作権法41条 写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。

※2 逆にいえば、その報道のためには他人の著作権を利用することは不可避といえる関係であれば、著作権方41条によって利用が正当化されるでしょう。この条文が適用される典型例としてよくあげられるのが、絵画が盗難されたとき、盗難の対象を報道するためその絵画の映像を流すような場面です。

ABOUT US

弁護士 渡辺泰央
弁護士 渡辺泰央
弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。