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ピコハラってハラスメント?PPAPの著作権や商標について解説

ピコ太郎さんの「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」が人気を集めていますね。

忘年会PPAPを強要されることが「ピコハラ」(”ピコ太郎ハラスメント”の略でしょうか)だという指摘もあるみたいです。

たまには楽しい記事も書きたいので、今回はPPAPを弁護士が法律面から(真面目に)考察してみたいと思います。

 

PPAPの著作権


PPAPは、音楽、歌詞、振付けから構成される作品です。それぞれについて著作権が認められるかを検討してみましょう。

 

(1) 音楽

音楽には当然著作権が認められるもので、PPAPも例外ではありません。

JASRACへの管理信託もすでにされているようですね。

 

(2) 歌詞

歌詞は正直微妙だと思います。

使われている単語や文章は非常に単純ですから「ありふれた表現」とされる可能性は高く、著作権が認められる範囲は狭いような気がします。

現実的にも、「I have a pen.」と言ったらピコ太郎さんに対する権利侵害だ、なんて言われたらたまりません。

歌詞について著作権侵害が認められるとすれば、歌詞の全部又は大部分をまるまるコピーしたような場合でしょうか。

なお、歌詞についてもJASRACに信託されているようです。(もっとも、このことと、歌詞にどの程度著作権が認められるかは別の問題です。)

 

(3) 振付け

振付けに著作権が認められるかも、ちょっと微妙です。

ダンスの振付けについて、既存のステップを組み合わせたりアレンジを加える程度では著作権は認められないと判断されたことがあるからです。(社交ダンスの振付けの著作権が問題となった事例ですが)

振付けに著作権が認められるためには、「顕著な特徴」が必要とされていますが、PPAPに「顕著な特徴」はあるでしょうか。果物にペンを指す動作は特徴的といえますが、ここに著作権を認めるに足りる「顕著な特徴」があるといえるかは・・私には判断できません。

なお、同じく流行になっている「恋ダンス」の振付けには著作権が認められそうな気がします。

 

PPAPの商標


特許情報プラットフォームによれば、「PPAP」のほか、「APPLE PEN」や「PINEAPPLE PEN」などが商標出願されているようです。

本記事作成の時点ではまだ出願中で登録はされていないようですが、登録が完了すれば「PPAP」を商品名やサービス名として使うと商標権侵害となるケースが出てきますね。

 

PPAPを忘年会で踊ってもいい?


PPAPの音楽には少なくとも著作権が認められるでしょうから、忘年会で踊ってもいいかは一応気になりますね。

結論からいえば、非営利目的・無料・無報酬であれば、踊っても構いません。

忘年会の一発芸であれば営利目的はないでしょうから、一発芸のためにピコ太郎さんに許可を求めるまでの必要はないでしょう。

(なお、「踊ってみた」の動画をYOUTUBEなどにアップロードする行為は著作隣接権も関係する議論ですのでここでは割愛します)

 

「ピコハラ」は違法? 犯罪行為?


PPAPを踊らせることがハラスメントとして損害賠償の対象となるでしょうか。

多分程度によりますが、損害賠償の対象となるケースはあまりないと思います。

ハラスメント行為について損害賠償が認められるのは、それによって人格的な利益が害されたといえるためです。
PPAPを踊らせることは人格を傷つけること、とまではいい難いように思います。(そこまでいったらピコ太郎さんにも失礼な気がします)

もっとも、再三拒否したにもかかわらずムリヤリやらせるとか、踊らなかったことを理由に解雇や懲戒などを行うようなケースでは違法と判断されるでしょう。

また、暴行や脅迫を用いてPPAPを踊らせるときは、強要罪が成立することがあります。

 


まだまだ法的検討の余地はありそうですが、キリがないのでこの辺で終わりにします。

年末にかけて、踊る人もそれを見る人も増加すると思いますが、マナーを守って楽しい年末をお過ごしください。

 


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ABOUT US

弁護士 渡辺泰央
弁護士 渡辺泰央
弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。