たぬき掲示板の書き込みを削除依頼する手順や注意点を弁護士が解説
「雑談たぬき」などたぬき掲示板では、誹謗中傷の内容の投稿を目にすることも珍しくありません。
そして、実際に誹謗中傷の投稿で被害に遭われている方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、たぬき掲示板の削除依頼の方法について解説したいと思います
たぬき掲示板の削除依頼の手順
たぬき掲示板に掲載された投稿を削除する方法は、①問い合わせフォームからの申請と、②裁判(仮処分)の2つが考えられます。
このうち、②の裁判(仮処分)の方法は、弁護士に依頼して行うことが一般的ですから、この記事では、①の問い合わせフォームからの申請を解説したいと思います。
① 問い合わせフォームにアクセスする
たぬき掲示板には、「2ch2.net お問合せ窓口」というページがあります。
URL:https://contact.2ch2.net/?guid=on
こちらのページに移動していただき、「▶削除依頼/一般」をクリックします。
(引用元:https://contact.2ch2.net/?guid=on)
② 問い合わせフォームに必要事項を記入する
問い合わせフォームに必要事項を記入します。順番に解説していきます。
(1)「メールアドレス」を記入する。
「メール」の欄にご自身のメールアドレスを記入します。
後にメールの受信確認がありますので、必ずご自身が利用できるアドレスを記入しましょう。(いわゆる「捨てアド」のメールアドレスは推奨されません)
(引用元:https://contact.2ch2.net/?mode=contact)
(2)「種別」を選択する
「種別」は削除申請の理由の大まかなカテゴリを選択します。
名誉毀損や名誉感情侵害、「実名・住所等の晒し」に該当しないプライバシー権侵害は、「違法な情報」を選択すればよいでしょう。
(引用元:https://contact.2ch2.net/?mode=contact)
(3)「URL」と「投稿番号」を入力する
「URL」には、削除申請の対象となる投稿が掲載されたスレッドのURLを記入します。
「投稿番号」には、削除申請の対象となる投稿の番号(レス番号)を記入しましょう。
管理人はスレッドのURLと投稿番号からどの投稿が削除依頼の対象となっているかを把握するので、間違いがないようにしましょう。
(引用元:https://contact.2ch2.net/?mode=contact)
(4)「削除理由」を入力する
削除理由はどのように記載するかを悩まれる方が多くいらっしゃると思います。
何を書くべきかはケースによって変わりますので一概にはいえませんが、一般的には次の内容を記載します。
- 該当の投稿に記載された内容
- その内容が自分のことを言っているという説明
- 削除してほしいと考える理由
上記投稿には、「10月のイベントにいた○○は迷惑行為を繰り返す害悪」という内容が記載されています。
私は、「○○」という名前です。また、10月のイベントに参加していましたので、これは私の事を指した投稿です。
私は迷惑行為をしたことはありませんし、害悪といわれるようなことをしたこともありません。
上記投稿は事実無根ですので、削除していただきますようお願いいたします。
(5)お問い合わせを完了する
以上すべて記入が終わったら、最後に内容を確認して問い合わせを完了します。
その後、「メール」の欄に記載したメールアドレス宛に自動的にメールが送信されますので、そこに記載されたURLをクリックすると、削除依頼が完了したことになります。
投稿が削除される場合、削除完了までの目安はだいたい3日〜2週間程度です。
削除依頼を行うにあたって注意すること
以上が削除依頼の手順ですが、これを行う際に注意すべきこともあります。
必ず削除されるわけではない
お問い合わせフォームから削除依頼をしても、必ず削除されるわけではありません。
依頼に応じて削除するかどうかは管理人側の判断となり、削除を強制することはできません。
削除に強制力を持たせるためには、裁判を行う必要があります。
被害が収まるとは限らない
一度削除申請が成功しても、基本的に犯人が同じ内容を投稿することはできます。
つまり、削除されてもまた同じような投稿がされればまた削除依頼をしなければならず、いつまで経っても被害が収まらないということもあります。
誹謗中傷の被害を根本的に解決するためには、犯人特定を行う必要があるケースも少なくありません。
犯人特定に必要な証拠がなくなってしまうことも
「雑談たぬき」などのたぬき掲示板に投稿した犯人を特定するためには、基本的に裁判をする必要があります。
この裁判には証拠が必要ですが、対象の投稿が削除されてしまっていると、そのような投稿があったことの証拠がなくなってしまい、犯人特定ができなくなるというリスクがあります。
誹謗中傷の犯人を特定し、もう二度と書かないことを誓約させたり、損害賠償請求をするためには証拠が必要です。
そのため、削除依頼をする前に、犯人特定を並行して行うかどうかを慎重に検討する必要があるでしょう。
たぬき掲示板の犯人特定については、こちらの記事でも解説しています。
Webに関わる法律であればお気軽にご相談ください
たぬき掲示板の削除依頼についての説明は以上のとおりですが、決して簡単な手続きではありません。
「削除理由」にどのような内容を書くべきか、また犯人特定を並行して行うべきかなど、弁護士に相談しながら進めることが適切といえます。
当事務所では、「雑談たぬき」をはじめとした「たぬき掲示板」の削除・投稿者特定の問題について、豊富な経験があります。
たぬき掲示板に関する法律でお困りのことがあれば、ぜひ一度当事務所までお気軽にご相談ください。
匿名の投稿はなぜバレる?投稿者が特定される仕組みについて解説!
ネット誹謗中傷問題が社会的に注目を集めるようになり、犯人が特定され書類送検されたとか、損害賠償が認められた、という報道を目にすることも増えてきました。
そこで今回は、匿名の投稿でも投稿者が特定される仕組みについて解説したいと思います。
そもそも匿名の投稿はバレるのか?
匿名の投稿でも、投稿者が特定されることはあります。
正確にいえば、問題のある投稿については、法律の手続を使って、それが誰よって行われたものかを調査することが可能です。
そのため、「実名で投稿していないからバレないだろう」と考えるのは誤りです。
また、「投稿に使ったアカウントには自分の個人情報を登録していないから大丈夫」というのも誤りです。
ではなぜ匿名の投稿でも特定されてしまうのか、その仕組みについて解説していきたいと思います。
押さえておくべきインターネットの2つの特徴
匿名でも投稿者特定ができる仕組みを理解するためには、まずはインターネットの2つの特徴を理解する必要があります。
- ユーザーのIPアドレスはアクセス先のサイトに伝わっていること
- プロバイダを利用してインターネット通信を行っていること
順番に解説していきたいと思います。
① ユーザーのIPアドレスはアクセス先のサイトに伝わっていること
インターネットでYouTubeの動画を観るというケースを例にとって説明したいと思います。
まず、YouTubeの動画のデータは、YouTubeの方で管理しているサーバに保管されています。
私たちがYouTubeの動画を観たいと思ったら、YouTube側に「この動画が観たいです」とリクエストを送ることになります。
このリクエストに応じて動画のデータが送られるわけですが、データの送り先がわからないとYouTube側はどこにデータを送ってよいかわかりません。
そのため、私たちはYouTube側にデータの送り先、つまり住所を伝えているのです。
ここでいう住所が「IPアドレス」と呼ばれるものになります。
このように、インターネットでは、基本的にこちら側のIPアドレスはアクセス先のサイトに伝わっています。
② プロバイダを利用してインターネット通信を行っていること
「IPアドレス」はインターネット上の住所のようなものとお伝えしました。
ただ、インターネット上の住所は、現実の住所のように一人ひとり直接割り当てられているわけではありません。
ではどのような仕組みになっているかというと、私たちは住所をプロバイダから借りてインターネットをしているイメージです。
プロバイダはインターネットに使うための宅配ボックスをたくさん用意しており、私たちはそれを利用し、その宅配ボックスを自分の住所としてインターネットをしていると考えても良いかもしれません。
そのため、アクセス先のサイトに伝わっているIPアドレスというのは、私たちが契約しているプロバイダの住所と、その宅配ボックスの番号であるとイメージするとわかりやすいと思います。
プロバイダがOCNであれば、アクセス先のサイトに伝わっているIPアドレスは、OCNの住所とその中の宅配ボックスの番号ということになります。
このように、私たちは基本的にプロバイダを利用してインターネット通信を行っているということになります。
弁護士はどのようにして投稿者を調査するのか
このようなインターネットの2つの特徴を利用して、投稿者を調査します。
まず、問題のある投稿が掲載されているサイトに、「この投稿を行ったユーザーのIPアドレスを開示してほしい」と伝えます。
開示してもらうには裁判が必要なこともありますが、いずれにせよ、サイトからIPアドレスを開示してもらうと、投稿者が契約しているプロバイダと、その宅配ボックスの番号がわかります。
そうしたら、今度はプロバイダに対して「この番号の宅配ボックスを利用した人の名前と住所を開示してほしい」と伝えます。
(プロバイダとの契約には名前や住所が必要ですから、プロバイダはこれらの情報を保有しています。)
これらの情報を開示してもらうためにはやはり裁判が必要になることがほとんどですが、これによって、投稿者の氏名や住所を特定することができるのです。
まとめ
このような仕組みで、匿名の投稿者を特定することが一般的です。(この他にも投稿者特定の方法はあります)
実名で投稿したから特定されないとか、アカウントに氏名や住所を登録していないから特定されないという考え方は誤りであることがご理解いただけたと思います。
当事務所では、匿名の投稿者特定に豊富な実績があります。
また、開示請求を受けている方の非開示に向けた活動や示談交渉についても対応しております。
インターネットの投稿についてご相談がある方は、ぜひ一度当事務所にお問い合わせください。
雑談たぬきでの投稿者特定 特定方法や注意点についても解説
「雑談たぬき」の誹謗中傷問題について、相談を多くいただいております。
実際に「雑談たぬき」の掲示板での誹謗中傷は少なくありません。そして、実際に法律問題になっているケースも多くあります。
そこで今回は、たぬき掲示板の誹謗中傷問題について解説したいと思います。
たぬき掲示板の削除依頼については、こちらの記事で解説しています。
「雑談たぬき」とは
「雑談たぬき」は、「たぬき掲示板」のカテゴリのひとつです。
「たぬき掲示板」は主にヴィジュアル系バンドに関する話題を取り扱う掲示板です。
「雑談たぬき」は、「たぬき掲示板」のカテゴリのひとつではありますが、ヴィジュアル系バンド以外の話題を取り扱うことになっています。
最近では、ネット配信者やYouTuber、Vtuberなどの話題を取り扱うことも多いようです。
とはいえ、ユーザーの多くは共通しているようで、掲示板のルールや文化は「たぬき掲示板」と共通しています。
「雑談たぬき」の投稿は特定されるか
「雑談たぬき」の投稿者が特定されることは現実にあります。
また、投稿者特定後、被害者が投稿者に対して損害賠償請求などを行うケースも珍しくありません。
「雑談たぬき」での投稿者特定の方法は
投稿者を特定するためには、発信者情報開示請求という法律の手続が必要です。
投稿者特定に至るためには、①サイト管理者からIPアドレス等の開示を受け、②経由プロバイダから投稿者の氏名住所の開示を受けるというステップが必要です。
「雑談たぬき」のサイト管理者は公開されていませんが、適切な手順を踏めば開示請求を進めることができます。
どのような投稿が特定の対象となるか
この発信者情報開示請求が認められるのは、投稿の内容がいわゆる誹謗中傷に該当するときです。
「雑談たぬき」の特徴として、バンドのファン同士の愚痴やトラブルや掲示板に持ち込まれることがあり、法的なトラブルが起きやすいという性質があります。
特定の対象となる投稿は、例えば次のようなものです。
「雑談たぬき」での投稿者特定の難しさ
「雑談たぬき」の投稿者特定の作業は、他のサイトの投稿者特定とほとんど変わりません。
もっとも、掲示板の性質や掲示板管理人の対応によって特有の難しさがあります。
掲示板の性質による困難
「雑談たぬき」では、掲示板で使われている用語が難しいことが多く、内容を理解することが困難であることが、投稿者特定を難しくしています。
例えば、「麺」(バンドのメンバーの意味)や「ギャ」(バンギャルの意味)などの用語は当たり前に使われています。これらはインターネットで調べれば意味は分かりますが、「ポキる」など調べても簡単に意味が分からない用語も使用されており、一見して誹謗中傷か理解しづらいものも多々あります。
こういった特有の用語を理解し、かつそれを裁判所に適切に説明するスキルが、「雑談たぬき」の投稿者特定を成功に導くために必要といえるでしょう。
掲示板管理人の対応による困難
2024年4月時点で、「雑談たぬき」の開示請求への対応は発信者情報開示命令申立の制度(2023年新設)によることを原則としているようです。
それを前提とした手続も独自に定めており、これに従うことが求められます。
さらに、開示請求の対象となる投稿に使用された経由プロバイダがNTTドコモである場合は、必ず(「雑談たぬき」の管理人またはNTTドコモからの)異議訴訟に発展し、開示までの期間が延びるという点も注意が必要です。(2024年4月時点)
異議訴訟の点は、今後の裁判例の蓄積によって解決が見込まれる問題でありますが、現在「雑談たぬき」の投稿における開示請求をご検討の方はご注意ください。
Webに関わる法律であればお気軽にご相談ください
「雑談たぬき」での誹謗中傷問題は、犯人特定などの法律問題に発展する可能性が比較的高いといえます。
当事務所では、「雑談たぬき」をはじめとした「たぬき掲示板」の投稿者特定の問題について、豊富な経験があります。
弁護士費用の目安
【削除請求(裁判外)】
着手金:50,000円~(税込)
成功報酬:0円
【削除請求(裁判)及び開示請求】
サイト管理者への削除・開示請求
着手金:220,000円~(税込)
成功報酬:0円
プロバイダへの開示請求
着手金:165,000円~(税込)
成功報酬:0円
「雑談たぬき」に関する法律でお困りのことがあれば、ぜひ一度当事務所までお気軽にご相談ください。
ソーニョ(sogno)で書かれた愚痴などを削除するには?対処法を解説!
「sogno(ソーニョ)」というサイトにウソの書き込みをされた、会社や上司の悪口を書かれた等、迷惑な投稿による営業妨害を受けたという相談を多くいただきます。
このような投稿は単に腹立たしいだけでなく、会社の信用に傷を付けますし、場合によっては秘密情報が漏れるリスクもあります。
そこで今回は、「sogno」(ソーニョ)とはどのようなサイトか、書き込み投稿で営業妨害を受けたときの対処法などについてが解説します。
「sogno(ソーニョ)」はどのようなサイトか
「会社の愚痴、噂、自慢ならsogno」とあるように、このサイトは主に会社の愚痴などを投稿するサイトです。
匿名での書き込みが可能なため、単なる愚痴にとどまらず、会社や上司に対する誹謗中傷や行き過ぎた内容が投稿される例が数多くあります。
また、会社の愚痴を投稿するというサイトの特徴から、投稿者はほとんどがその会社の(元)従業員です。
「sogno(ソーニョ)」で営業妨害を受けたときの対処法
「sogno(ソーニョ)」で営業妨害を受けたときは、以下の対処法が検討されます。
営業妨害に対して効果的な法的措置
- 削除申請
- 犯人特定(発信者情報開示請求)
順番に解説していきたいと思います。
① 削除申請
問題のある投稿が削除されれば、営業妨害の被害を食い止めることができます。
そのため、営業妨害に対応するためには、まずは投稿の削除が検討されることになります。
削除申請の方法
「sogno(ソーニョ)」では、お問い合わせフォームからの削除申請を受け付けています。
お問い合わせ:https://sogno.mobi/info/contact.html
こちらのURLのページで、必要事項を記載して削除申請を行えば完了です。
ただし、削除申請を行えば必ず削除されるわけではないことに注意が必要です。
削除申請の理由の書き方(記載例)
削除申請を行う際、「お問い合わせ内容」の欄に削除申請の理由を記載することになります。
削除申請の理由の書き方ですが、基本的には①自社の社会的な評価を低下させること、及び②その内容が虚偽であることの二点を書く必要があります。
記載例としては、次のとおりです。
削除申請の記載例
URL:https://sogno.mobi/company/.html
投稿日時:2022/08/02 15:40
投稿内容:(投稿内容を記載する)
削除申請の理由:
上記投稿記事には、「○○」と記載されています。このような記載は、当社が△△を行っているという事実を指摘するものであり、当社の社会的評価を低下させるものです。また、当社が△△を行っているという事実はなく、この指摘は虚偽の内容です。したがって、上記投稿記事は当社に対する名誉毀損となりますので、削除のご対応のほどお願い申し上げます。
② 犯人特定
①の削除申請によって投稿が削除されても、投稿者が同じ内容を再び投稿することは非常に簡単であり、同じ内容が再度投稿されれば、業務妨害の状況は振り出しに戻ってしまいます。
また、従業員が投稿を続けている場合、会社の秘密情報が公開されるリスクに晒されてしまうといえます。
このような場合は、投稿した者を特定(犯人特定)することが有効です。
犯人特定の際の注意点
「sogno(ソーニョ)」は、投稿者の氏名や住所を保有していません。
保有している情報は、投稿時のIPアドレスやタイムスタンプ等、それだけでは投稿者を特定できないものであるため、そのIPアドレスを管理する経由プロバイダに対してさらに開示請求をしなければ投稿者特定には至りません。
経由プロバイダに対する開示請求は、ほとんどの場合裁判の手続が必要となりますので、犯人特定を希望される場合は、少なくとも一度専門の弁護士に相談されることをお勧めします。
犯人特定後の対応
投稿者が現従業員である場合は、就業規則に基づく懲戒などが考えられます。
投稿者が元従業員である場合や、会社と無関係の第三者である場合は、損害賠償請求などを行うことが考えらえます。
損害賠償請求は、慰謝料のほか開示請求にかかった費用(弁護士費用)を請求することが一般的です。
警察への相談は有効か
営業妨害(業務妨害)は刑事罰の対象となっています(刑法233条、234条)。
そのため、警察など捜査機関への相談も対処法として考えられるところです。
しかし、インターネットの投稿については、爆破予告のような犯罪予告や、「○○会社は食品に毒を入れている」など悪質性の高い内容が掲載された場合でない限り、親身に相談に応じてくれることは稀です。
そのため、警察に相談するとしても、それと並行して民事での犯人特定の手続(発信者情報開示請求)を行うことをお勧めします。
まとめ
「sogno(ソーニョ)」で営業妨害を受けたときの対処法は以上のとおりです。
とはいえ、最適な対処法はケースによって異なります。また、①削除申請や②犯人特定は法律に基づくものです。
そのため、営業妨害への対処を考える際は一度専門の弁護士に相談されることをお勧めします。
発信者情報開示請求の流れをインターネットに強い弁護士が解説!
みなさんも、インターネットの誹謗中傷で犯人が特定されたという話は、一度は聞いたことがあると思います。
犯人が書類送検されたとか、損害賠償が認められた、という報道を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際にインターネットを見ると、実名で誹謗中傷をしているというケースはほとんどありません。
それでも、誹謗中傷の犯人が特定され、法的措置がとられているのは、多くのケースで発信者情報開示請求という制度が利用されているからです。
そこで今回は、発信者情報開示請求とはどのような制度なのか、制度の概要と犯人特定までの簡単な流れなどを解説していきたいと思います。
発信者情報開示請求とはどのような制度か
発信者情報開示請求は、簡単にいうと、匿名でネットに情報を発信した人の(個人)情報を得るための制度です。
ただ、あらゆる情報発信について、情報開示の対象になるわけではありません。
発信者情報開示請求で情報が開示されるのは、他人の権利を侵害する情報をネット上に公開した人に限られます。
ここでいう他人の権利の典型としては、名誉権やプライバシー権、著作権などがあげられます。
例えば、「○○さんは不倫している」という投稿は、名誉毀損(名誉権侵害)やプライバシー権侵害に該当する可能性があります。
また、漫画を違法アップロードするような行為は、著作権侵害に該当します。
あくまで、法律からみて「権利侵害がある」といえることが必要ですから、例えば、単に「人を不快にさせた」とか、「他人の意見と違う意見を主張した」というだけでは情報開示の対象にはなりません。
また、ネット上に情報を「公開」したことが必要ですから、電子メールやダイレクトメッセージ(DM)を送っただけという場合も、情報開示の対象にはなりません。
迷惑なメールやDMを送りつけられるという被害は後を絶ちませんが、このようなケースでは発信者情報開示請求を利用することはできないというのが現状です。
発信者情報開示請求は「誰に対して」なされるのか
発信者情報開示請求は、コンテンツプロバイダと経由プロバイダに対して行われます。
「コンテンツプロバイダ」というのは、権利侵害の情報が掲載されたSNSや動画投稿サイトの運営会社を指します。
例えば、ツイッターであればツイッターインク、YouTubeであればグーグルエルエルシーが運営会社となります。
「経由プロバイダ」というのは、世間一般でいう、いわゆるプロバイダです。
例えば、DOCOMOやKDDI、ソフトバンクのほか、NTTコミュニケーションズ、ビッグローブなどが該当します。
このように、発信者情報開示請求はコンテンツプロバイダや経由プロバイダに対して行われるものですから、例えば権利侵害の投稿をしているアカウント宛に「あなたを訴えるので本名や住所を教えてください」とDMを送るような行為は、発信者情報開示請求ではありません。
また、発信者情報開示請求の裁判になった場合、被告になるのはこれらのコンテンツプロバイダや経由プロバイダなので、発信者に裁判所から直接開示請求の書類が届くということもありません。
(発信者に直接届く書類は「意見照会書」というものですが、これは裁判所からではなくコンテンツプロバイダや経由プロバイダから届きます。)
発信者情報開示請求で開示されるのは「どのような情報」か
発信者情報開示請求を使っても、発信者に関するあらゆる情報を開示できるわけではありません。
開示できる情報というのは、法令であらかじめ決まっています。
正確には総務省令を見ていただく必要がありますが、代表的なものは次のとおりです。
この法令に書かれていないもの、例えば職場の情報や、クレジットカードの番号、預金口座の情報などは、発信者情報開示請求で開示できる情報ではありません。
発信者情報開示請求は「誰が」できるのか
発信者情報開示請求は、基本的には、権利侵害の被害者しか行うことができないものになっています。
例えば、友達が誹謗中傷を受けているから、自分が代わりに発信者情報開示請求をしてあげる、ということはできません。
つまり、このことは、被害者自身が動かなければ犯人は特定できないということを意味します。
警察が独自に調査しないのか、と疑問に思った方もいると思います。しかし、警察がインターネットを監視して、誹謗中傷について自発的に捜査を行うということはほとんどありません。
警察もそこまでする人員はありませんし、そういうことをしてしまうと表現の自由に関する問題も出てきてしまうからです。
もちろん、殺人予告や爆破予告、児童の性犯罪に関するものついては積極的に捜査がされています。
しかし、それ以外のものについては、警察が自発的に行動することはあまりない、というのが現状です。(もちろん、被害者の被害届や告訴が受理されたときは、警察は捜査を行います。)
発信者情報開示請求の流れ
基本的に、発信者情報開示請求には二つの段階があります。
一段階目は、SNSや動画投稿サイトの管理会社のような、コンテンツプロバイダに対して開示を求める段階です。
二段階目は、DOCOMOやKDDIなどの経由プロバイダに対して開示を求める段階です。
①コンテンツプロバイダに対する開示請求

誹謗中傷の犯人を特定するためには、まず、問題となっている情報が掲載されたSNSなどに対して発信者情報開示請求を行います。
このときに求める情報は、主にIPアドレスやタイムスタンプなどです。
はじめから発信者の氏名や住所の開示を求めればいいのではないか、と思った方もいると思います。
しかし、コンテンツプロバイダは基本的にそれらの情報を保有していません。みなさんも、SNSに会員登録するとき、本名や住所を登録することはあまりないと思います。
そのため、まずはコンテンツプロバイダに対してIPアドレスなどの開示を求めることになります。
②経由プロバイダに対する開示請求

コンテンツプロバイダから開示されたIPアドレスを調べると、投稿に利用された経由プロバイダが判明します。
こうして割り出された経由プロバイダに対して、二段階目の発信者情報開示請求を行います。
経由プロバイダは、発信者の氏名や住所などの情報を保有しています。
携帯電話やインターネット回線の契約をするときには申込書に氏名や住所を書きますから、このことはイメージしやすいと思います。
経由プロバイダの持っている情報の開示の受けることで、初めて誹謗中傷の犯人が特定することが一般的です。
なお、発信者本人が開示に同意しない限り、ほとんどの経由プロバイダは個人情報を任意に開示するということはありません。したがって、発信者の氏名や住所などの情報を得るためには、基本的には裁判をする必要があります。
(裁判で、開示せよという判決が出ればさすがに経由プロバイダも情報を開示してくれます。)
この裁判は、判決がでるまで早くても4~6か月ほどかかりますから、犯人特定までには、それなりに時間がかかることは覚悟しておく必要があります。
おわりに
以上が発信者情報開示請求の概要についての説明です。
もちろん、細かい論点はたくさんありますが、大まかな流れは以上のとおりです。
もっと詳しく知りたいという方は、当サイトの別の記事もぜひ参考にしてください。
当事務所では、発信者情報開示請求に多数の実績があります。
発信者情報開示請求をお考えの方は、ぜひ一度お問い合わせください。
Googleマップの口コミを削除する方法はある?口コミ対策を解説
お店の場所を知りたい、目的地までの経路を調べたい、そんなときにGoogleマップは非常に便利なサービスです。
ビジネスを提供する側にとってもGoogleマップは便利なものですが、場所の情報と同時に表示される口コミについては頭を悩ませるタネにもなります。
・ウソの口コミによる業務妨害を受けている
・何度も同じ内容の口コミが投稿されるなどの嫌がらせを受けている
・Googleに削除申請を出しているが削除されない
・Googleの口コミ対策を誰にお願いしてよいかわからない
この記事では、Googleマップの口コミ投稿で業務妨害、嫌がらせを受けているときの対処法を網羅し、徹底的に解説しています。
Googleマップとは
Gooleマップ(Google Maps)とは、Google LLC が提供する地図サービスです。
地図上にはレストラン、店舗、企業、病院などの施設が表示されますが、その場所をクリック(タップ)することで、施設の情報を見ることもできます。
ここで見ることができる情報は、次のようなものです。
Google Map に掲載されるビジネス情報
- 会社や店舗の名称
- 住所の表示
- 営業日・営業時間
- 電話番号
- ウェブサイトのアドレス
- 口コミ など

※Googleマップでの情報の表示の例
これらの情報は、Google LLCが独自に集めたものもありますが、一般ユーザーによって投稿されたものも多く含まれています。
そのため、情報が間違っているということも珍しくありません。
(施設の管理者は、Googleマイビジネスという別のサービスを利用すれば、正しい営業日時などを登録することができます)
Googleマップの口コミ(レビュー)とは
Googleマップの口コミは、一般ユーザーが投稿するものです。
口コミを投稿する際は、文章に加えて、星の数によるレーティングも行います。文章を投稿せず、星によるレーティングだけを投稿することもできます。

口コミは、Googleアカウントを持っているユーザーであれば誰でも投稿できます。
投稿の際に実名を表示する必要はなく、Googleが口コミの内容を事前に審査するわけでもありません。
ユーザーの「生の声」が表示されるというメリットがある反面、嘘の内容や攻撃的な投稿による営業妨害、誹謗中傷、競合他社によるネガティブキャンペーンができてしまうというデメリットがあります。
この点がビジネス提供者の頭を悩ませるGoogleマップの問題点といえるでしょう。
Googleマップの口コミ対策が重要な理由
Googleの検索エンジンは日本でも圧倒的1位のシェアを持ち、そのシェア率は日本で75%を超えるといわれています(本記事執筆時点)。
第2位のYahoo!が16%程度といわれていますから、Googleのシェアが圧倒的であることがわかります。
つまり、インターネットでご自身のビジネス(レストランや病院)が検索された場合、そのほとんどがGoogle検索であり、そのとき同時にGoogleマップの口コミが表示されているといえるのです。

せっかく自分のビジネスを検索してくれたのに、悪い口コミ評価が出たために利用をためらうという事態は容易に想定できます。
特にネット集客に力を入れている事業者の方にとって、この事態は深刻です。
この意味で、Googleマップの口コミ対策はこの時代のビジネスにとって非常に重要といえるのです。
Googleマップの口コミ対策の種類
Googleマップの口コミ対策にはいくつか種類があり、大きく2つに分かれます。
「法律に基づく対策」と「法律に基づかない対策」です。
このうち、法律に基づかない対策は弁護士でない企業や業者であっても行うことができます。
一方、法律に基づく対策は、(本人以外が行う場合は)弁護士でないとできません。
まれに弁護士でない企業や業者が「Googleへの削除申請を代行する」などと広告していることがありますが、この行為は明らかな法律違反(弁護士法違反)となります。
どの対策をとればよいか
このように、Googleマップの口コミ対策にはいくつか種類がありますが、どの方法が最適なものかはケースによって違ってきます。
法律に基づく対策が必要なケース
法律に基づく対策が必要なケースは、次の場合です。
・悪い口コミをどうしても削除したい場合
・投稿者個人を特定する必要がある場合
悪い口コミをどうしても削除したい場合
ポジティブなレビュー(口コミ)の投稿を多数行えば、悪い口コミが埋もれていくことが期待できますし、星の数の平均値も上がってきます。
しかし、このような対策をしても、悪い口コミが消えるというわけではありません。
悪い口コミそのものを削除する必要がある場合は、法律に基づく対策が必要になるでしょう。

どのような場合に法律に基づく削除が認められるか、またご自身で行う場合の削除申請の手順については、こちらの記事で解説しています。
投稿者個人を特定する必要がある場合
Googleマップの口コミは基本的に匿名で行われますが、Googleは投稿者の情報について任意に開示することはありません。
そのため、投稿者個人の特定が必要な場合も、法律に基づく対策を行うことになります。

投稿者個人の特定が必要な場合は、次のようなケースが典型です。
投稿者個人の特定が必要となるケースの例
- ひとり又は少数の者が悪い口コミ投稿を繰り返していると思われるケース
- 同業他社によるネガティブキャンペーンの可能性が高いケース
- 投稿者に対して損害賠償請求や刑事告訴を希望するケース
投稿者個人を特定する方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
法律に基づかない対策で足りるケース
悪い口コミの削除にこだわらない場合や、投稿者個人の特定までは必要ない場合は、法律に基づかない対策で足りるケースがほとんどでしょう。
とはいえ、弁護士でない企業や業者への依頼はリスクもあります。
企業や業者に依頼される場合は、そのリスクを十分に認識しておく必要があります。
当事務所では、Googleマップの悪い口コミの削除・犯人個人の特定に多くの実績があります。
Googleマップの口コミ投稿で営業妨害や嫌がらせを受けている方は、ぜひ一度当事務所までご相談ください。
発信者情報開示請求に拒否をした後の流れを任意請求と裁判に分けて解説
発信者情報開示請求(意見照会書)に対して拒否の回答をした後、どのような流れになるか気になる方もいると思います。
この記事では、拒否の回答をした後の流れや疑問について解説しています。
なお、この記事で使われている「任意請求」や「裁判」というの用語の意味を知りたい方や、そもそも意見照会書とは何かを知りたい方は、次の記事をご覧ください。
任意請求の場合
開示・非開示は誰が判断するか
開示請求が任意請求で行われている場合、拒否の回答を受け取ったプロバイダは自社で開示するかどうかを判断します。
もっとも、発信者側が拒否の回答をしている場合は、プロバイダの判断で開示の決定をすることはほとんどありません。
回答書の内容(拒否したことや拒否の理由)は開示請求者側に伝わるか
回答書の内容を開示請求者側に伝えるかどうかはプロバイダによります。
とはいえ、個人的な経験としては、ほとんどのプロバイダは回答書の内容を伝えていないという印象です。
なお、プロバイダが非開示の決定をしたということは、発信者側が開示に同意しなかったことを意味します。
そのため、開示請求者側としては、非開示の通知によって、発信者が開示に同意しなかった事実を知るというのが一般的です。
開示・非開示について結果は通知されるか
開示請求者側には、プロバイダから開示・非開示の結果が通知されます。
一方、発信者側に通知するどうかはプロバイダによります。
個人的な経験からすれば、発信者側に結果を通知するプロバイダはやや少ない印象です。
非開示の決定があった後の流れ
非開示の通知を受けた開示請求者は、手続きをそこで終わらせるか、開示請求の裁判に進むかを決めます。
裁判を起こすかどうかは開示請求者次第ですので、発信者側がその決定に関与できることはありません。
開示請求者側が任意請求をすることで目的を達成したと考えた場合は、裁判を起こさないこともあります。
任意請求を行う理由については、次の記事で解説しています。
開示請求者側が裁判を起こした場合は、改めて意見照会書が送付されてくることが一般的です。
ただ、「任意請求の段階で意見照会書を行ったから裁判の段階では改めて意見照会書は送らない」という運用のプロバイダもありますので、この点はプロバイダに電話などで確認しておくことが無難でしょう。
裁判の場合
開示・非開示は誰が判断するか
裁判に至っている場合、開示が認められるかどうかは裁判所が判断します。
発信者が開示に同意していなくても、開示を認める判決が言い渡された場合は発信者の情報は開示されます。
回答書はどのように取り扱われるか
開示請求が裁判に至っている場合、プロバイダは原則としてその回答書を証拠として裁判所に提出します。(回答書に発信者側の情報(氏名など)が記載されている場合は、提出のときにマスキングしてくれることがほとんどです。)
裁判所に提出された証拠は原告にも送られますから、これによって拒否の理由や添付した証拠は開示請求者側に伝わります。
回答後は発信者にできることはあるか
発信者側の言い分に対し、さらに開示請求者側が反論することがあります。
これに対して発信者側がさらに反論する機会はないと考えていいでしょう。
反論するにはプロバイダにこちらの反論を証拠として提出してもらう必要がありますが、プロバイダにそこまでの義務はないからです(一部のプロバイダでは、再度反論する機会を与えてくれるところもあります。)
なお、裁判を傍聴したり、訴訟記録の閲覧をすることで、どのような資料が提出されているか、またどのような訴訟指揮がされているかなどを確認することはできます。
これによって裁判の経過を見ることは可能です。
訴訟記録の閲覧についてはこちらの記事で解説しています。
判決が言い渡されるまでの期間
第一審の判決が言い渡されるまでの期間は、意見照会に回答してから3~6か月程度です。
ただ、控訴されたりすれば、実際に開示されるまでの期間はさらに伸びます。
なお、後述のとおり、開示を認める判決に対してプロバイダはほとんど控訴しません。
そのため、開示されるまでの期間が長くなるのは開示を認めないという判決が出たときがほとんどということができます。
裁判の結果は通知されるか
裁判の結果について発信者に通知するかどうかはプロバイダによってまちまちです。
個人的な経験からすれば、判決の結果は発信者側に通知してくれるプロバイダの方が多い印象です。
判決が言い渡された後の流れ
開示を認める判決が言い渡された場合、プロバイダはそれに従って発信者の情報を開示します。
プロバイダが控訴することはほとんどありません。
開示されてしまった場合は開示請求者側から直接連絡があります。
連絡の方法としては、代理人弁護士から内容証明郵便が届くことが多いでしょう。(これを受け取ったときに開示されたことを知ることも珍しくありません。)
開示請求者側の通知には、損害賠償についての記載があることがほとんどで、ここから示談についての交渉が始まります。示談については次の記事で解説しています。
示談交渉が決裂してしまった場合は、損害賠償の裁判になるでしょう。この裁判についてはこちらの記事で解説しています。
当事務所では、発信者側での発信者情報開示請求対応に多数の実績があります。
発信者情報開示請求を受けたけども対応を相談されたいという場合は、ぜひ一度お問い合わせください。
弁護士に依頼できることや費用の目安等についてはこちらをご覧ください。
発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。
著作権侵害の開示請求 拒否する場合の「不同意の理由」書き方を解説
「侵害された権利」の欄に「著作権」と書かれた意見照会を受け取ったとき、拒否(不同意)の理由の書き方がわからないという方がいらっしゃると思います。
この記事では、著作権侵害を理由とした発信者情報開示請求を受けた場合のよくある反論とその書き方について解説しています。(すべての反論について解説しているわけではありません)
著作権侵害の成立要件
法律上、著作権侵害(民事)が成立するためには、以下の要件が必要です。
① 著作物性がある
② 開示請求者が著作権を保有している
③ 法定利用行為がある
④ 権利制限規定にあたらない
この①~④いずれかが認められない場合にはプライバシー権は成立しません。そのため、開示請求を拒否(開示に同意しないと回答)する際は、このいずれかが認められないことを拒否の理由に記載することが有効です。
もっとも、実際に不同意の理由として記載するものは、①か④がほとんどです。そのため以下では①と④について解説します。
著作物性に対する反論
著作物性とは、その表現(作品)が著作権の保護を受けることを意味します。
著作物性のないものは、転載したりしても著作権侵害にはなりません。
そのため、転載した表現に著作物性がないことは開示請求に対する反論になり得ます。
ただし、イラスト、動画、写真、音楽などはほとんど著作権の保護を受ける(著作物性がある)といえます。そのため、これらの転載のケースではこの反論は難しいでしょう。(独創性の低い、家族のスナップ写真であっても著作物性が認められた裁判例があります(東京地判平成18年12月21日・知財高判平成19年5月31日〔東京アウトサイダーズ事件〕))
一方、文章については著作権の保護を受けるものと受けないものがあり、この反論が有効となるケースがあります。特に、短い文章で、かつ独創性(オリジナリティ)が強くないものは、著作権の保護を受けないと考えられる傾向があります。
そのため、「文章」について著作権侵害を主張されている場合は、反論として著作物性がないことを主張できる可能性があります。
「○○」という表現について著作権侵害を主張されていますが、「○○」は短文であり独創性が高いともいえません。そのため、著作物性が認められないと考えます。
権利制限規定に関する反論
権利制限規定とは
著作権の保護を受ける作品であっても、利用の仕方によっては著作権者の許諾を受けずにその作品を利用することができます。つまり、ある利用方法の下では著作権は制限される場合があります。
著作権が制限される場面は法律に規定があり、以下がその一覧です。(なお、このような規定を『権利(著作権)制限規定』といいます。)
• 私的使用のための複製(著作権法第30条)
• 付随対象著作物の利用(著作権法第30条の2)
• 検討の過程における利用(著作権法第30条の3)
• 著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用(著作権法第30条の4)
• 図書館等における複製・インターネットの送信等(著作権法第31条1項)
• 国立国会図書館における蔵書等の電子化、インターネット送信等(第31条第8項)
• 引用(著作権法第32条)
• 教科用図書等への掲載(著作権法第33条)
• 教科用図書代替教材への掲載等(著作権法第33条の2)
• 教科用拡大図書等の作成のための複製等(著作権法第33条の3)
• 学校教育番組の放送等(著作権法第34条)
• 学校その他の教育機関における複製等(著作権法第35条)
• 試験問題としての複製等(著作権法第36条)
• 視覚障害者等のための複製等(著作権法第37条)
• 聴覚障害者等のための複製等(著作権法第37条の2)
• 営利を目的としない上演等(著作権法第38条)
• 時事問題に関する論説の転載等(著作権法第39条)
• 政治上の演説等の利用(著作権法第40条)
• 時事の事件の報道のための利用(著作権法第41条)
• 裁判手続等における複製(著作権法第42条の2)
• 立法又は行政の目的のための内部資料としての複製等(第42条)
• 審査等の手続における複製(第42条の2)
• 情報公開法等による開示のための利用(著作権法第42条の3)
• 公文書管理法による保存等のための利用(著作権法第42条の4)
• 国立国会図書館法によるインターネット資料及びオンライン資料の収集のための複製(著作権法第43条)
• 放送事業者等による一時的固定(著作権法第44条)
• 美術の著作物等の原作品の所有者による展示(著作権法第45条)
• 屋外設置の美術の著作物、建築の著作物の利用(著作権法第46条)
• 美術または写真の著作物等の展示に伴う解説・紹介のための利用(著作権法第47条)
• 美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等(著作権法第47条の2)
• プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等(著作権法第47条の3)
• 電子計算機における著作物の利用に付随する利用等(著作権法第47条の4)
• 電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等(著作権法第47条の5)
• 翻訳、翻案等による利用(著作権法第47条の6)
このうち、著作権侵害の開示請求を拒否する不同意の理由として利用できるのは「引用」です。
その他の規定は、特殊なケースでない限りは主張することは難しいといえます。インターネット上での転載は、公衆送信権・送信可能化権の侵害も問題となりますから、たとえ営利目的でなくても「私的使用のための複製」で正当化することはできません。
「引用」にあたるとの主張
他人の著作物の利用でも、その利用の仕方が「引用」にあたる場合は、著作権侵害は成立しません。
どのような場合に引用にあたるかは難しい議論がありますが、反論する際には以下の①~④すべてを記載することが望ましいといえます。
① 明瞭区別性
どこからどこまでが他から引っ張ってきたものかハッキリわかるようにするということです。引用符( “” )をつけたり、枠で囲んだりすることです。
② 主従関係
自分の作った部分がメイン(主)で、転載の部分がサブ(従)の関係にあることをいいます。
③ 引用の目的上正当な範囲内
引用の必要性と、その必要性との関係で適切な範囲を転載したかということです。
④ 出所の明示
出典元を明記することです。
引用を主張する場合の記載例については、次のようになります。
今回私が行った転載は、次のとおり「引用」として許されると考えます。
本件では、転載部分は引用符で区別していますし(①明瞭区別性)、分量としても、私の創作したコンテンツが記事の大部分を占めており、転載部分はわずかです(②主従関係)。
また、転載の目的は、その表現の内容を批評する目的ですが、転載した部分はその目的のため必要な範囲内といえます(③引用の目的上正当な範囲内)。
さらに、URLを記載する形で出典元は明記しています(④出所の明示)。
著作権侵害のケースでのよくある拒否理由の書き方の説明は以上のとおりですが、もちろん具体的な記載はケースによって違いますし、実際に文章にするのが難しい場合もあると思います。
意見照会書への回答について相談されたい方は、当事務所にぜひ一度お問い合わせください。
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発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。
プライバシー権侵害の開示請求 拒否する場合の「不同意の理由」書き方を解説
「侵害された権利」の欄に「プライバシー権」と書かれた意見照会を受け取ったときの、拒否(不同意)の理由の書き方について解説しています。
名誉毀損の成立要件
法律上、プライバシー権が成立するためには、以下の要件が必要です。
① 特定性(同定可能性)がある
② プライバシー権侵害成立の三要件が認められる
③ 違法性阻却事由がない
この①~③いずれかが認められない場合にはプライバシー権侵害は成立しません。そのため、開示請求を拒否(開示に同意しないと回答)する際は、このいずれかが認められないことを拒否の理由に記載することが有効です。
特定性(同定可能性)がないこと
プライバシー権侵害が成立するためには、その投稿が「開示請求者のことを指している」といえることが必要です(このことを「特定性(ないし同定可能性)」といいます。)。
そのため、「誰のことを指しているかわからない」あるいは「他の人のことを言っているとも読める」という場合には、特定性が認められず、名誉毀損は成立しないことになります。
書き方はケースによってまちまちですが、記載例としては以下のようなものになります。
- 投稿の対象者について、何も情報(氏名、性別、所属など)が書かれておらず、誰のことを言っているか読み取れない
- 「Wさん」とイニシャルが書かれているだけで、「W」に該当する人は複数いる
- 「経理部の女」と書かれているが、経理部の女性従業員は複数いる
- 「あのデブ」とだけ書かれているが、ふくよかな方は大勢いる
ただし、特定性は前後の文脈も含めて判断されます。
そのため、単にその投稿に書かれたものが「源氏名や伏字、イニシャルだけ」という主張だけでは特定性が否定されるとは限りません。
開示請求者側も、何か根拠があって「自分のことだ」と思っているわけですから、特定性の点で反論する場合は説得的な記載が必要になります。
プライバシー権侵害の要件が認められないこと
プライバシー権侵害は、一般的には次の3つの要件すべてがそろっている場合に成立するとされています。(プライバシー権侵害の要件について難しい議論はありますが、ここでは分かりやすさを優先した説明をしています。)
- 私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのあることがらであること
- 一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められることがらであること
- 一般の人々に未だ知られていないことがらであること
そのため、反論としては、これらのどれかが認められないという内容になります。
- 「○○」と書かれているが、「○○」すること自体は違法・不正な行為ではないし、公開されることで羞恥心を覚える内容でもない(②)
- 「○○」というのは、自分自身で公開していた内容であって、一般の人々に未だ知られていないとはいえない(③)
違法性阻却事由がある
違法性阻却事由というものがあると、プライバシー権侵害は成立しません。
プライバシー権侵害の場合、一般的には次の内容が認められれば違法性阻却事由があると考えられています。
その事実を公表する理由が公表されない法的利益に優越する場合
これをどう判断するかですが、様々な要素を総合して判断するとされています。
これまでの判例で例示された考慮要素は、次のようなものです。
- 公開された情報の性質や内容
- 情報が伝達される範囲
- 被害者が被る具体的な被害の程度
- 被害者の社会的地位
- 公開されたときの社会的状況や、その後の変化
- 情報を公開する必要性
- 公開された媒体の性質
これらの記載例は、以下のとおりです。
- 公開された情報の内容は「○○」というものであり、性質上必ずしも秘匿性の高いものではない(①)
- 情報の伝達範囲は、この掲示板の閲覧用パスワードを知るものに限られる。一般に公開されているわけではないから、その伝達範囲は広いとはいえない(②)
- ○○氏の負う不利益は、不快感程度のものである(③)
- ○○氏は●●という公益に関わる活動をしており、その社会的影響力も大きい(④)
- ○○氏は●●という公益に関わる活動に現実に従事しており、現在もその地位にある(⑤)
- ○○氏の活動は公の評価を受るべきものであり、公開された情報はその評価のため必要な情報である(⑥)
- 公開された媒体はニュースサイトであり、ゴシップサイトのようなものではない(⑦)
もっとも、これが認められるのは犯罪報道(逮捕や起訴の報道)や、公権力を行使する公務員(知事や議員など)の問題行為の公開などのケースに限られます。
単に大衆の興味を満たすような内容では違法性は阻却されないので注意しましょう。
プライバシー権侵害のケースでの拒否理由の書き方の説明は以上のとおりですが、もちろん具体的な記載はケースによって違いますし、実際に文章にするのが難しい場合もあると思います。
意見照会書への回答について相談されたい方は、当事務所にぜひ一度お問い合わせください。
弁護士に依頼できることや費用の目安等についてはこちらをご覧ください。
発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。
名誉毀損の開示請求 拒否する場合の「不同意の理由」書き方を解説
「侵害された権利」の欄に「名誉権」(名誉毀損)と書かれた意見照会を受け取ったときの、拒否(不同意)の理由の書き方について解説しています。
名誉毀損の成立要件
法律上、名誉毀損(民事)が成立するためには、以下の要件が必要です。
① 特定性(同定可能性)がある
② 投稿によって社会的評価が低下した
③ 違法性阻却事由がない
この①~③いずれかが認められない場合には名誉毀損は成立しません。そのため、開示請求を拒否(開示に同意しないと回答)する際は、このいずれかが認められないことを拒否の理由に記載することが有効です。
特定性(同定可能性)に対する反論
名誉毀損が成立するためには、その投稿が「開示請求者のことを指している」といえることが必要です(このことを「特定性(ないし同定可能性)」といいます。)。
そのため、「誰のことを指しているかわからない」あるいは「他の人のことを言っているとも読める」という場合には、特定性が認められず、名誉毀損は成立しないことになります。
書き方はケースによってまちまちですが、記載例としては以下のようなものになります。
- 投稿の対象者について、何も情報(氏名、性別、所属など)が書かれておらず、誰のことを言っているか読み取れない
- 「Wさん」とイニシャルが書かれているだけで、「W」に該当する人は複数いる
- 「経理部の女」と書かれているが、経理部の女性従業員は複数いる
- 「あのデブ」とだけ書かれているが、ふくよかな方は大勢いる
ただし、特定性は前後の文脈も含めて判断されます。
そのため、単にその投稿に書かれたものが「源氏名や伏字、イニシャルだけ」という主張だけでは特定性が否定されるとは限りません。
開示請求者側も、何か根拠があって「自分のことだ」と思っているわけですから、特定性の点で反論する場合は説得的な記載が必要になります。
社会的評価の低下に対する反論
名誉毀損が成立するためには、その投稿によって「社会的評価の低下したこと」が必要です。(社会的評価の低下とは聞きなれない言葉だと思いますが、「世間のイメージ・印象が悪くなる」程度の意味です。)
そして、社会的評価が低下は、(ネガティブな内容の)具体的事実が指摘されたときに発生すると一般的に考えられています。つまり、具体的事実の指摘がない、単なる意見だけでは基本的に社会的評価は低下しないと考えられています。
そのため、社会的評価の低下に対する反論としては、「具体的事実の記載がない(単なる意見である)」という主張が考えられます。
- 「ワンマン社長」と書かれているが、「ワンマン」経営それ自体は悪いことではない
- 「料理がまずい」と書かれているが、単に感想を書いただけで社会的評価が低下するとまではいえない
- 「ムカつく」と書いたが、単に主観を言っただけ
また、投稿記事の記載を不自然に解釈し、具体的事実の指摘があると主張されることがあります。そのような場合は、投稿記事の記載を読んだときの「自然な解釈」を反論として説明するのが効果的です。
開示請求者は、投稿記事のうち「料理が美味しくなかった」という記載について「腐った材料を提供しているという事実の指摘である」と主張しています。しかし、そのような解釈をすることは不自然であるといえます。この記載は、料理を実際に食べた客の「美味しくなかった」という意見を述べたに過ぎないと解釈することが自然です。
違法性阻却事由がある
違法性阻却事由というものがあると、名誉毀損は成立しません。
名誉毀損の場合、次の3つの要件すべてが認められれば違法性阻却事由があると判断されます。
- 表現の内容が公共の利害に関することがらであること
- その表現がもっぱら公益を図る目的でなされたこと
- 摘示された事実が真実であるか、真実と信じたことについて相当の理由があること
このうち、発信者情報開示請求との関係で最も重要なのは③であり、③を説明することで十分なケースが多いといえます。
ただし、③を効果的に説明するためには、証拠の提出を考える必要があります。
開示請求が任意請求の場合は証拠がなくても非開示にできるかもしれませんが、裁判になっている場合は証拠の提出がなければ厳しいといえます。
また、書き方としては、単に「投稿内容は真実である」と書くだけでは弱いでしょう。5W1Hを意識し、時系列で整理すると説得的な文章となります。
さらに、報道などを根拠にしたのであれば、実際の報道内容を指摘することも必要です。
- ○○年○○月○○日○○時ころ、A部長がB係長に対し、○○株式会社の3階の会議室で「お前は能無しだ、クビにしてやる」などと怒鳴りつけていた
- ○○新聞の○○年○○月○○日付のニュース記事で、開示請求者が○○していたことが報道されている
名誉毀損のケースでの拒否理由の書き方の説明は以上のとおりですが、もちろん具体的な記載はケースによって違いますし、実際に文章にするのが難しい場合もあると思います。
意見照会書への回答について相談されたい方は、当事務所にぜひ一度お問い合わせください。
弁護士に依頼できることや費用の目安等についてはこちらをご覧ください。
発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。














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