コラム

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著作者人格権ってなに?著作権を持っていても自由に使えない可能性があります

今まで聞いてきた感じだと、出来れば著作権はもらっておいた方がいいんですね。

常にそうとはいえませんが、そのほうが作品を利用できる範囲が広がることは間違いないでしょうね。

あれ、著作権をもらっておけば何でもできるんじゃないですか?

いや、何でもできるわけじゃないですよ。例えば契約書で、「著作権は譲るけど、こういう利用はやめてね」って記載されることもあり得ますし。それに、著作者人格権の問題もあります。

著作者人格権前にちょっと聞いたやつですか?

そうです。著作者人格権は、作品に表れた作者の「人格」を保護するものでしたね。それで、①公表権、②氏名表示権、③同一性保持権の3つがあると。

何となくは覚えてます・・。

この著作者人格権って、他の人に売ったりできないんですよ。

だから、契約書とかに「著作者人格権も譲ります」と書いても無効なんですよね。

じゃあ著作権をもらっても、自由に利用できないってこと?

それだと困りません?

困ります。

特に③同一性保持権なんか、結構強い権利ですからね。

じゃあどうすればいいんですか?

そのために、著作者人格権の「不行使特約」を契約書に書いておくことが結構行われています。

ふこうし・・?

行使しないってことです。著作者人格権は作者に残るけど、それを使いませんよっていう合意です。

こういうケアをしておかないと、基本的には著作者人格権自由に使えてしまうので。

ちょっと注意しないといけないんですね。

そうです。だから、契約書なんかを作るときは、著作権だけでなく、著作者人格権もしっかり意識して作らなければいけません。

【解説】

(1) 著作者人格権が顔をだすとき

作品を作った場合、作者には著作権だけでなく、著作者人格権も発生します。以前説明したとおり、著作者人格権は、①公表権、②氏名表示権、③同一性保持権を主な内容とする権利でした。そして、この著作者人格権は、他人に譲り渡すことができませんこの権利は作者の人格そのものであって、人に渡せる性質のものではないからです。そのため、仮にこの権利を譲り渡す合意をしたとしても、それは無効と判断されてしまいます。

このような著作者人格権の性質が、権利関係や契約関係を少々複雑にします。契約書などでこの著作者人格権のケアをしておかないと、後にトラブルになったり、想定していた形の利用ができなくなったりするためです。そして、著作者人格権のうち、作品の利用に最も大きい影響を与えるのが③同一性保持権でしょう。これがある限り、作者の「意に反する改変できなくなるのです。

 

(2) 不行使特約とその注意点

このような不都合を回避するために実務上利用されているのが、著作者人格権の「不行使特約」です。これは、著作者人格権が作者に残ることを認めつつ、それを使うのをやめてもらうという合意です。このような合意で、当事者の間でトラブルが発生するリスクは減らすことができます。しかし、合意の効力はあくまで当事者にあるだけで、第三者にまで及ぶものではありません。

つまり、いくら「不行使特約」を結んだとしても、作者が第三者に対して著作者人格権を行使することは可能なのです。このように、「不行使特約」も万能ではないので、この点は注意しましょう。契約内容を決めるときには、著作者人格権を意識しつつ、自分が作品をどのように利用するかを見極め、それが実現できる内容を定める必要があるでしょう。

 

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AUTHORこの記事を書いた人

弁護士 渡辺泰央

弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。

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