いわゆる”自炊”を代行する業者が逮捕されたという報道がなされました。
古書店へ転売も、書籍の「自炊代行業」男性を逮捕
(平成28年11月30日 一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)HPより)
差止や損害賠償などを求める「民事」の事件はこれまで何度か報道されましたが、逮捕など「刑事」の事件が報道されたのは今回が初のようです。
自炊で逮捕に至るのか、疑問に思われるか方や不安をおぼえる方もいらっしゃると思いますので、今回は”自炊”の問題点についてまとめてみます。
そもそも”自炊”とは??
”自炊”とは、本や雑誌などをスキャナなどを使ってデジタルデータにする行為です。
タブレット端末などの普及により、本や雑誌をデジタルデータとして閲覧することがますます便利となりました。
また、デジタルデータは場所をとらないのでスペースの節約ができ、劣化もしません。
このような理由から、手持ちの本や雑誌をデジタルデータ化する行為、つまり”自炊”は一般的なものとなっています。
ただ、”自炊”の作業は楽ではありません。一般的な”自炊”の方法は、背表紙を裁断するなどしてページをばらばらにし、それをスキャナに流すというものです。
一冊だけでもそれなりの労力を使うものですから、これを膨大な量の本や雑誌について行おうとすると、かなりの手間と時間がかかってしまいます。
そこで登場したのが”自炊”の作業を本人に代わって行うとする業者で、これが「自炊代行業」とよばれるものです。
”自炊”は違法??
「私的使用のための複製」(著作権法30条)にあたる限り、”自炊”は違法ではありません。
ポイントは、
① 私的使用目的で行うこと
② 使用する者が自分で行うこと
この2点です。
つまり、自分で楽しむために自分で”自炊”の作業を行う限り、違法ではありません。
一方、自炊代行業は、このうちの②が欠けますので、違法と判断されます。(2016年に最高裁で確定しました。)
ただ、自炊代行業も一定のニーズがあるところで、これを違法と判断することは時代に合わないなどといった批判も根強く、”自炊”についての議論が終わったわけではないようです。
今回のケースは何が問題だった??
報道によれば、今回逮捕された自炊代行業のケースは、”自炊”によって得られたデータを他人に転売などしていたという点が特徴です。
つまり、②が欠けるばかりか、そもそも①すら欠けていたというケースです。
自炊代行業肯定論の根拠となっているのは、”業者は顧客の作業を手伝っているだけ” つまり ”業者側は得られたデータは使用せず、データはあくまで顧客が私的使用をするためだけのものである” というものでした。
今回のケースは、業者側もデータを販売するなどしていますから、そもそも私的使用目的ですらなく、どのような考え方によっても違法となる悪質なものでした。
安心して”自炊”を行うためには?
やはり自分自身で”自炊”の作業を行うのが無難でしょう。
(”自炊”の目的で裁断機やスキャナを貸し借りする行為は適法です。)
近しい人に手伝ってもらって一緒に作業を行う程度であれば許され得るでしょうが、自炊代行業を利用する際はやはり著作権に留意しなければいけません。
他人の著作物を無断で複製して販売するなどの行為は犯罪ですから、注意しなければ思わぬところで犯罪に巻き込まれることもあります。
著作権違反の責任は決して軽いものではありません。”自炊”を行う際は、ルールやマナーを正しく守って行いましょう。
弁護士への法律相談(初回30分無料)はこちらから。