リーチサイト「はるか夢の址」が強制捜査の対象になったとの報道がありました。
この事件の分析と、その影響について考えてみたいと思います。
立件が難しい「リーチサイト」
「リーチサイト」とは違法ダウンロードが可能な他のサイトにリンクを張り、利用者を誘導するものです。
リーチサイト自体はコンテンツのデータをアップロードしているものではなく、単にリンクを張っているだけです。リンクを張る行為それ自体は著作権侵害とは考えられていないため、正面から著作権侵害を問うことは難しい状況でした。
立件の可能性があるとすれば、著作権侵害の「幇助」でしょう。
犯罪を実行した人でなくとも、犯罪を「助長した」といえれば、幇助犯として刑罰の対象になります。例えば、ファイル共有ソフト「Winny」の開発者が逮捕・起訴された事件も、著作権侵害の「幇助」が問われたものでした。
しかし、「Winny」の開発者が助長したとされたのはコンテンツのアップロード(公衆送信)です。
一方、リーチサイトは、すでにアップロードされたものにリンクを張るものですから、当該アップロードを助長したということはやや難しそうです。つまり、「Winny」事件の理屈がそのまま当てはまるとはいえないのです。
違法ダウンロード刑事罰化の規定が適用されるか
「リーチサイト」が助長するのは、利用者の違法ダウンロードです。とすれば、違法ダウンロードの幇助として立件される可能性は充分ありそうです。
違法ダウンロードが刑事罰化されてしばらく経ちますが、あまり活用されておらず意味があるのかという指摘はしばしばありました。
そのような規定が、リーチサイトの取り締まりのために活用されれば、規定が活きてくるといえるでしょう。
もっとも、今回捜査の対象になったリーチサイトが誘導していたのは、主に漫画の海賊版サイトのようです。
漫画には違法ダウンロード刑事罰化の規定が適用されないので、違法ダウンロードの幇助の法律構成は使えないところです。報道でも、「違法コピーの掲載に関与」したこと(つまりアップロードの助長)が、強制捜査の理由とされています。
インターネットユーザーへの影響は?
今回の事件で、一般のインターネットユーザーへの影響も多少あると思います。
違法ダウンロードが認定されるための要件のひとつに、ダウンロードするものが違法アップロードであることを「知って」したということがあります。今回の報道などでリーチサイトの存在が世間に知れ渡れば、リーチサイト経由のダウンロードに関しては「知って」ダウンロードしたことが認められやすくなるでしょう。
また、リーチサイトから押収されたアクセスログの解析により、違法ダウンロードを行なったユーザーの特定ができる可能性もあります。
インターネットは気軽に情報を取得できるツールですが、気軽な行為であっても法律違反の行為には責任が問われます。リーチサイトの利用もそれなりのリスクのある行為ですから、疑わしいサイトには近づかないことを強くお勧めします。
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