コラム

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掲示板の管理者に削除・発信者情報開示請求が来たときの対応方法を解説

すいません、そういえば別件でも相談があるんです。実はサイトのユーザー同士交流してもらおうと思って、掲示板を作ってたんですよ。でも、そこに著作権侵害とか誹謗中傷があるらしくて。それを削除しろとかIPアドレス開示しろとかいう請求が来てしまったんです。

ちょっとお話ししましたよね、管理体制の話。

そういう体制は構築してました?

そうでしたっけ?

すいません忙しくて全然やってませんでした。

じゃあ一般的な対応をしましょうか。

まずは請求書類を見てください。請求する理由とか、本人確認の書類とかはちゃんと備わってました?

一通りはそろってたと思います。

じゃあ、今度は投稿した人意見を聞きましょう。

削除していいか、情報を開示してもいいか。メールアドレスくらいは知ってますよね。

はい。ユーザー登録のときに入力してもらってますから。

意見を聞いてみて、投稿した人が「削除や情報開示してもいいよ」って言ってくれたら、削除しても情報開示しても大丈夫です。

そんな簡単に同意してもらえるんですか?

まあ、そういう対応をする人は少ないでしょうね。

ほとんどの場合は拒否無視です。

そういうときは、どうしたらいいんですか?

削除情報開示を分けて考えましょう。

まず削除ですけど、無視されて7日過ぎたら、削除してしまって大丈夫です。というか、削除した方がいいかも知れませんね。

わかりました。7日間で返信がなければそうします。

削除して欲しくないという意見が来たら、両者の言い分を聞いて判断するしかありません。まあ常識的な判断であればどう判断してもいいですが、印象としては削除する方が多いと思います。迷ったら相談してください。

常識的な判断ですね。分かりました。

次に情報開示

これは、拒否されたり無視されたりしたら、とりあえず開示しないのが無難でしょう。

開示しないで大丈夫なんですか?

これをやると請求してきた人から仮処分を受ける可能性がありますが、簡単に開示しちゃうと、逆に今度は投稿した人から損害賠償されるかも知れません。

それに、個人情報保護法の問題もありますし。

そっか・・。板挟みですね。

そう。なので裁判所仮処分認めたものには応じるという態度が無難でしょう。個人情報保護法を考えても、その方がいいと思います。

でも、仮処分が来たらどう対応したらいいんですか?

一番ちゃんとやっているところだと、「発信者情報の開示は認められない」といろいろ根拠を付けて反論しています。でも、反論しないところもあったり、出頭もしないけど仮処分が出たら応じるところもあったりして、対応はまちまちですね。

・・・結局、ウチはどうすれば?

会社としてどのくらい裁判に手間をかけられるかとか、そういうものを考えて決めていくことになります。

また、この点も相談してくれればアドバイスできると思います。頼んでもらえれば、弁護士の側ですべて処理することもできます。本サイトでもこのあたりお話しの全体像と弁護士に頼めることをこちらでまとめているので、見てみてくださいね。

分かりました。

また相談させてもらうことになると思いますが、とりあえずは投稿した人に連絡して、意見を聞いてみますね。

【解説】

(1) 対応によっては法的リスクも

掲示板画像動画などの投稿サービスを提供する場合、ユーザーが著作権侵害誹謗中傷の投稿をすることがあります。

このような場合、以前説明したプロバイダ責任法に基づき、サイト運営者(ないしサーバ管理者)に対して削除情報開示の請求がなされることがあります。このような請求は法的な請求ですから、対応を誤ると関係者から法的責任を追及される可能性があります。

そのため、管理体制の構築も必要ですが、実際に請求されたときの対応も非常に重要になります。

 

(2) どう動けばいいか

実際に何らかの請求がなされた場合、まずは請求の理由がしっかり書いてあるか、本人確認の書類があるかを確認します。言いがかりなりすましの可能性もありますから、その辺りを確認せず削除したり情報開示したりすると、投稿したユーザー権利を侵害しかねません。その辺りの情報を確認できたら、投稿したユーザー意見を求めます。

その後の対応については、今回のお話で説明したとおりです。

様々なパターンがありますが、最終的に情報開示の仮処分を受けてIPアドレス開示すればそれで終わりであることが通常です。

 

(3) 法的な判断が必要になる場合も

この種の請求は対応のパターンが決まっているので、他の法的な紛争よりは対処しやすいと思います。ただ、投稿したユーザーが削除拒否した場合や、仮処分を申し立てられた場合には、ケースバイケースの判断が求められます。

削除の拒否をされた場合はそのコンテンツが権利侵害にあたるか判断しなければいけませんし、仮処分の場合も、裁判所である程度の反論をする必要があります(最初から申立人の主張を認めるような態度を示すと、投稿したユーザーから責任追及される可能性がありますので、一定程度の反論をしておくのが望ましいといえます)。

これらの判断には、法的な判断が伴いますから、分からないときや迷ったときは、やはり専門家に相談されることが必要でしょう。

また、専門家の関与のもと事前管理体制構築していれば、法的なリスク大きく減ります

そのため、この種の請求が見込まれる場合には、早い段階から専門家の指導を受けておくことが、自社サービスを守ることにつながります。
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AUTHORこの記事を書いた人

弁護士 渡辺泰央

弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。

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