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トレント(torrent)で逮捕される?されない? 逮捕の基準や逮捕者の事例を解説!

トレント(torrent)などのファイル共有ソフトを悪用したとして、逮捕や書類送検されたという報道を目にしたことがある方も多いと思います。

また、この記事をご覧の方は、以下に該当する方もいらっしゃると思います。

・過去にトレントを利用したことがあり逮捕の可能性があるか知りたい
・トレントの使用で開示請求を受け、逮捕されないか不安

そこでこの記事では、トレントの使用における逮捕の基準や過去の逮捕・書類送検の事例についても解説します。

トレントの使用で逮捕される基準

トレントを使用することで逮捕されることはあります。

もっとも、あらゆるトレント(torrent)の使用が逮捕されるわけではありません。逮捕は法律に定められた手続ですから、法的に逮捕の基準を満たしているかどうかで判断されます。

トレントの使用の場合、逮捕されるかどうかの基準は以下のようなものになります。

トレントの使用で逮捕されるかどうかの判断要素

  •  トレントを使用して犯罪に当たる行為を行っていたか
  •  逃亡又は証拠隠滅のおそれがあるか
  •  トレント使用者が特定されているか
  •  告訴が受理されているか

これらを順番に解説していきます。

トレントを使用して犯罪にあたる行為を行っていたか

逮捕が実施されるためには、犯罪の嫌疑があることが大前提です。

著作権侵害の罪もここでいう「犯罪」に該当します。

本来は料金を支払って楽しめるもの(市販の漫画や有料動画、AV(アダルトビデオ)など)をトレントでダウンロードしていた場合、その行為は著作権侵害の犯罪に該当し得るものですから、犯罪の嫌疑は認められる可能性は高いといえます。

なお、トレントの使用で著作権を侵害した場合、違法ダウンロードのみならず、違法アップロードの責任も負うことになります。トレントでは、ダウンロード中のユーザー(リーチャー)であっても、ダウンロード済みのデータ(ピース)をアップロードするという仕組みになっているためです。

逃亡又は証拠隠滅のおそれがあるか

逮捕は罪に対するペナルティではなく、逃亡や証拠隠滅を防ぐために行われるものです。そのため、逮捕は逃亡又は証拠隠滅のおそれのどちらかがある場合に実施されることになります。

一つの家に定住しており定職にも就いているとか、捜査に協力している場合には逮捕の可能性は低下するといえます。逆に、住まいや職を転々としている人や、捜査に非協力的な態度をとっているような場合には、逮捕の可能性は高くなるといえます。

トレント使用者が特定されているか

トレントには一定の匿名性があります。そのため、著作権侵害の行為があったとしても、トレント使用者が特定されていなければ逮捕には至りません。

しかし、トレント使用者のIPアドレスを調査することは可能ですし、そのIPアドレスを割り当てたプロバイダから情報を得ることは可能です。

そのため、警察のプロバイダに対する捜査によって犯人が特定されることがあります。

また、警察によらなくとも、著作権者がプロバイダに対して発信者情報開示請求を行うことによって犯人特定に至ることもあります。この場合、著作権者が警察に対して犯人の情報を提供をすることで、逮捕に至る可能性があります。

いずれにしても、トレントの使用者が特定されているかは、逮捕の有無に影響を与えるといえます。

告訴が受理されているかどうか

著作権侵害の罪は、原則として「親告罪」つまり告訴されていなければ起訴できない犯罪です。

告訴とは、簡単にいえば被害者が警察に対して被害の申告と犯人の処罰を求める意思表示で、告訴状を提出する方法で行われることが一般的です。

告訴状が提出され警察によって受理された場合、それは犯罪として捜査が行われることを意味します。この場合は、犯人の逮捕に至る可能性も高いといえます。

なお、(親告罪であっても)告訴は警察の捜査の条件ではありません。そのため、逮捕を免れることを第一に考えるのであれば、やはり示談するなどして告訴の可能性を排除しておくことが無難でしょう。

トレントの使用で逮捕された後に受ける処分

トレントの使用によって逮捕された場合の流れは、以下のようになります。

仮に不起訴になったとしても、最長で23日間の身柄拘束を受ける可能性があります。また、他の余罪などで再逮捕を受けることもあり、その場合は更に身柄拘束期間は延長されます。

勾留の満了日までに取り調べなどの捜査を受け、検察官が起訴するか、不起訴とするのかの決定をします。

著作権法では、以下の刑事罰が規定されています。

違法アップロード

10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれらの両方(著作権法119条1項)

違法ダウンロード

2年以下の懲役若しく200万円以下の罰金又はこれらの両方(著作権法119条3項)

仮に起訴された場合は、裁判によって刑の内容が確定します。

なお、検察官によって「略式起訴」がなされることがあります。これは、罪を認め、罰金を支払うことを認めることで、裁判を開かずに事件を終結させるものです。著作権侵害の事件については、実際にはこの略式起訴が選択されるケースが多いようです。

ただし、通常の起訴でも略式起訴でも罰金刑を受けることに変わりはありませんから、いわゆる「前科」がついてしまうことには注意が必要です。

過去の逮捕・書類送検の事例

トレントの事例

漫画ファイルの違法アップロードで送致(2019年3月)

ファイル共有ソフト「BitTorrent」を通じて、株式会社講談社が発行する『「鬼灯の冷徹」第26巻(電子版)』及び株式会社集英社が発行する『「僕のヒーローアカデミア 18巻」』を無断でアップロードしたとして、長崎県の30代男性が著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで長崎地検に送致されました。

(報道記事)
「BitTorrentを通じて漫画ファイルをアップロード、男性送致」(ACCS)

アニメ動画やテレビ番組の無断配信で逮捕(2019年4月)

「BitTorrent(ビットトレント)」を使用して「ワールドトリガー」などのアニメ番組やテレビ番組を無断配信したとして、当時29歳の男が逮捕されています。この事例では、アニメのほかにもやテレビ番組など計約170作品を公開しており、被害額は約18億円に上るとされています

(報道記事)
「人気アニメを違法公開の疑い「高画質、見て欲しかった」」(朝日新聞デジタル)

PCゲームやアニメ動画の無断配信で検挙(2021年6月)

トレント(torrent)を使用してPCゲームやアニメ動画を違法にアップロードしたとして、3名が検挙されています。トレント(torrent)においてゲームをアップロードした者の検挙は、この事例が世界初だとのことです。

(報道記事)
「世界初!『トレント』でゲームをアップロードした3名を検挙(栃木県)」(EOCS)

アニメ動画の無断配信で書類送検(2021年11月)

「BitTorrent(ビットトレント)」を使用してガンダム」のアニメ映画を違法アップロードしたとして、男性3名が書類送検されています。3名はそれぞれ「コロナ禍の影響で劇場に行けず見てしまった」「普段からソフトを使用していた」「コロナ禍でお金がなくなり節約のためだった」などと供述していたといいます。

(報道記事)
「ガンダム映画をネットに違法アップロード 容疑の男3人書類送検 茨城県警」(Yahoo!ニュース)
※リンク先はアーカイブページです。

Share(シェア)の事例

「Share」も「トレント(torrent)」に並ぶメジャーなファイル共有ソフトであり、多数の逮捕者が出ています。

アニメ動画の無断配信で逮捕(2013年4月)

「Share(シェア)」を使用して「アクセル・ワールド」などのアニメ動画を違法にアップロードしていた男性(当時34歳)が逮捕されています。この男性は、アニメーションや映像などの約1000ファイルをアップロードしていたとされ、容疑を認めているといいいます。

(報道記事)
「Shareでアニメファイルを違法アップロードした男性を逮捕」(マイナビニュース)

アニメ音楽の無断配信で逮捕(2016年11月)

「Share」を使って音楽ファイルなどをを違法公開したとして、当時51歳の男が逮捕されています。報道によると、約2000ファイル、3TB以上のアニメ音楽・動画などをダウンロードし、無許諾でネット上に公開していた疑いがあるとのことです。

(報道記事)
「アニメ音楽など10年にわたり「Share」で違法アップロード 埼玉県の51歳の男を逮捕」(ITmedia NEWS)

Winny(ウィニー)の事例

ファイル共有ソフトによる著作権侵害の問題が認知されるようになったきっかけが、「Winny」による違法行為です。

2003年、ゲームソフトなどのファイルを違法にアップロードしたユーザーが逮捕されました。この事件は、ファイル共有ソフトを使った違法行為に対する2例目の逮捕(1例目は下記の「WinMX」の事例)でした。

(報道記事)
「ファイル交換ソフト「Winny」で初の逮捕者,著作権侵害や帯域圧迫の歯止めになるか」(日経BP)

WinMX(ウィンエムエックス)の事例

「Winny」と並び、インターネット黎明期から多くのユーザーが利用していたのが「WinMX」とよばれるファイル共有ソフトです。

2001年、「Adobe Photo Shop」をはじめとしたアプリケーションを多数アップロードし、不特定多数のユーザーがダウンロード可能な状態にしていたことで男性2名が逮捕されました。

ファイル共有ソフトによる著作権侵害の初の逮捕者が出た事例であり、当時は大きなニュースとなりました。

(報道記事)
「「WinMX」にメス──ファイル交換ソフトで逮捕者」(ITmedia NEWS)

PerfectDark(パーフェクトダーク)

「PerfectDark」は2006年に登場したファイル共有ソフトで、後発にあたることから「Winny」や「Share」などで指摘されていた課題を改善したソフトウェアです。

名前が表す通り匿名性が担保されていることで知られていましたが、2010年には「PerfectDark」でアニメ動画を違法にアップロードした初の逮捕者が現れます。
(報道記事)
「ファイル共有ソフト「パーフェクトダーク」初摘発 アニメ公開男を逮捕」(産経ニュース)
※リンク先はアーカイブページです。

最近では、2022年に音楽ファイルを公開していた50代の男性が書類送検されています。
(報道記事)
「栃木県警がファイル共有ソフトを用いた音楽ファイルの違法アップロード者を書類送検」(JASRAC)

>>トレントに関するよくある質問についてはこちらでも解説しています。

AUTHORこの記事を書いた人

弁護士 渡辺泰央

弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。

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