トレント(torrent)使用で開示請求|適切な対処法や回答後の流れを専門弁護士が解説
トレント(torrent)の使用で開示請求を受け、プロバイダから発信者情報開示請求に係る意見照会書を受け取ったというご相談が増えています。
・意見照会書にどう回答したらよいか分からない
・今後の流れがどのようになるのか不安
・逮捕されるのではないか
多くの方が、このような悩み・不安を感じます。
そこで今回は、トレントを使用で開示請求を受けたときの対処法やその後の流れについて、トレントの法律問題に強い弁護士が解説します。
「意見照会書」とは何か
プロバイダからの通知書は、正式には「(発信者情報開示に係る)意見照会書」と呼ばれるものです。
これは、開示請求を受けたプロバイダが、そのインターネット回線の契約者に対して送付するものです。
内容としては、⑴開示に同意するか不同意とするか、⑵不同意とする場合はその(拒否の)理由は何かを照会する(意見を聞く)ものです。
プロバイダがこのような手続を行うことは法律上の義務となっています。
つまり、この意見照会書が届いたということは、あなたの契約者情報ついて、(権利侵害を受けたことを理由に)開示請求をしている人がいるということになります。
(意見照会書の例)
この時点で、少なくとも法律問題になっていることは確かですから、慎重に対応しなければならないことはいうまでもありません。
トレントの使用で開示請求を受けたときの対処法
意見照会書が届いたときは、まずは記載内容を確認したうえ、プロバイダへの回答の方針を決めることが必要です。
意見照会書で確認すべき事項
意見照会書の記載にはすべて目を通すことが望ましいといえますが、最低限確認すべきことは、以下の5点です。
意見照会書で確認すべき事項
- ① プロバイダ名(会社名)
- ② プロバイダとの契約名義人(本人か家族か)
- ③ 回答期限
以下、確認方法や確認すべき理由を解説します。
① プロバイダ名(会社名)
発信者情報開示請求に対してどのような対応をしているかは、プロバイダによってかなりの差があります。例えば、電話をすることである程度の相談に応じてくれるところもある一方、問い合わせ先の記載もなく現在の状況を聞くことすらできないというところもあります。
また、トレントを使用したのが同じPCであっても、その際に使用した回線によってプロバイダが異なることがあります。例えば、自宅で同じPCを使用していても、自宅の固定回線を使っていた場合とスマホのテザリングを使っていた場合では、意見照会書を送付してくるプロバイダは異なります。
そのため、意見照会書を送付してきたプロバイダ名は確認しておきましょう。
プロバイダ名は、多くのケースで以下の部分を確認することで可能です。
② プロバイダとの契約名義人
トレントの使用者(発信者)は、必ずしもプロバイダとの契約の名義人ではありません。典型例は、同居の親族がプロバイダとの契約名義人である場合です。
このような場合に、プロバイダに対して誰の名義で回答するべきかは、プロバイダによって異なります。
そのため、プロバイダとの契約名義人も必ず確認しましょう。
契約名義人は、多くのケースで以下の部分を確認することで可能です。
③ 回答期限
回答期限は必ず確認しましょう。回答期限を過ぎた場合、開示請求の手続に発信者側の意向が全く反映されないことになりかねません。
回答期限は、多くのケースで以下の部分を確認することで可能です。
プロバイダへの回答方針とその後の流れ
方針としては、次の2つに分かれます。
プロバイダへの回答方針
- 開示に同意するとの回答をする
- 開示に不同意(拒否)の回答をする
意見照会を無視する方針は?
意見照会書に対して無視すること(回答しない)はお勧めしません。無視することは、開示請求について反論がないと取り扱われる可能性がありますし、悪質として刑事処分の対象になる可能性は高くなってしまうからです。
それぞれの回答をした後の流れは、次のようになります。
パターン① 開示に同意すると回答
以上が開示に同意したときの流れです。開示に同意した場合は、基本的に示談交渉を行うことになります。
パターン② 開示に同意しないと回答(任意請求)
次に、開示に同意しない(拒否)と回答したときの流れです。このケースでは、開示請求が任意請求で行われているか、それとも裁判で行われているかで少し異なります。
パターン③ 開示に同意しないと回答(裁判)
同意・不同意はどのように決めればよいか
同意・不同意(拒否)どちらの回答が適切かは、概ね次のように考えることになります。
同意すると回答するのが適切なケース
- 開示請求が裁判で行われている
- 一刻も早くトラブルを終わらせたい
- 逮捕など刑事処分を受けるリスクを避けたい など
不同意(拒否)と回答するのが適切なケース
- 「権利侵害の明白性」が認められないことを反論できる
- IPアドレス等の取得に疑義があることを適切に反論できる など
一般的には以上のとおりですが、適切な回答はケースによって異なります。
プロバイダへの回答方法
同封された回答書で回答する
プロバイダからの意見照会書には、以下のような回答書のひな型が同封されていることが一般的です。
(回答書の例)
実際には、この回答書にプロバイダの管理番号などが記載されています。プロバイダの管理に必要ですから、必ずこの回答書を利用して回答するようにしましょう。
回答期限を守る
プロバイダへの回答には回答期限が定められています。
ほとんどのプロバイダは書類到着日から2週間と設定されていることがほとんどです。
ただ、中には書類到着日から1週間とかなり短く設定されているプロバイダ(代表的にはソニーネットワークコミュニケーションズ(ソネット)など)こともありますから、回答期限は必ず確認しましょう。
(2024年5月3日追記)
ソニーネットワークコミュニケーションズ(ソネット)の回答期限が、開示請求が裁判でなされたケースで2週間となったようです。ただし、任意請求のケースでは従来通り1週間となっているようですのでご注意ください。
なお、ほとんどのプロバイダは書類到着日からの期限として設定していますから、いつ書類が自宅に届いたかは把握しておく必要があります。
もし回答期限内に回答ができない場合は、プロバイダへその旨を連絡しましょう。プロバイダによっては回答期限を延長してもらえることもあります。
プロバイダとの契約名義人が家族・同居人の場合
プロバイダからの意見照会書は、契約名義人宛てに届くことになります。
しかし、インターネット回線は同居の家族が使用することも多く、その場合は契約名義人と実際のトレントの使用者が異なることも珍しくありません。
このようなケースがあることはプロバイダも把握しています。ただ、その場合の対応方法については、プロバイダによって指定内容が違ってきます。
基本的には、「実際のトレントの使用者から回答してほしい」との指定があることがほとんどです。この場合、意見照会書には「発信者(加入者のご家族・同居人)からの回答書」が添付されていることが一般的です。
一方、プロバイダによっては、「あくまで契約名義人から回答してほしい」との指定があることがあります。この場合は、実際のトレントの使用者の名義で回答したとしても有効な回答として取り扱われません。
そのため、トレント使用者と契約名義人が異なる場合は、プロバイダの指定を間違いなく確認しましょう。
(発信者(加入者のご家族・同居人)からの回答書の例)
>>トレントに関するよくある質問についてはこちらでも解説しています。