音楽や映画、漫画など、あらゆるコンテンツがインターネットで配信されており、自宅にいながら楽しむことができます。しかし、同時に著作権侵害にあたる違法コンテンツも増えており、逮捕される事例も相次いでいます。
インターネット上からのダウンロード行為で、違法性が認められるのはどのようなケースなのか、逮捕されるリスクやファイル共有ソフトを利用する際の注意点も含めて解説します。
令和3年1月から改正された著作権法の変更点

リーチサイト対策が強化
著作権で保護されているコンテンツを不正にインターネット上に公開し、誰もが閲覧・ダウンロードできる状態にしている海賊版サイトがありますが、これらのサイトへのリンクを貼り容易にアクセスできる状態にしているサイトのことをリーチサイトとよびます。
著作権法の改正によって、リーチサイトを運営すること自体が罰則の対象となったほか、リンク掲載を行った時点で著作権の侵害とみなされるようになりました。
違法ダウンロードの対象コンテンツが拡大
従来、違法ダウンロードの対象コンテンツは映像や音楽などの一部に限定されていました。しかし、近年では電子書籍のニーズも拡大していることから、漫画や書籍なども対象コンテンツに含まれるようになりました。
アクセスコントロールに関する保護の強化
ソフトウェアの配信では、不正利用を防止するためにシリアルコードの認証が求められる場合があります。
ライセンス認証を不正に回避する目的で、シリアルコードを譲渡・配布・貸与などをした場合、罰則の対象としてみなされるようになりました。
違法ダウンロードが罰則の対象となるケース

違法ダウンロードといっても、状況によっては罰則の対象となるケースもあれば、ならないケースもあります。具体的にどのような場合に違法ダウンロードが認められ、罰則の対象となるのでしょうか。
要件① 正規版が有償で提供されている著作物のダウンロード
違法ダウンロードの罰則の対象となるコンテンツとして認められる大前提として、正規版が有償で提供されているものに限られます。
著作権には著作者の死後70年までという保護期間が定められており、これを超過すると著作権はなくなり、事由にコンテンツが利用できます。また、そもそも著作者がコンテンツの著作権を放棄しており、誰でも自由にダウンロードできる状態のものも存在します。
しかし、最新の映画や音楽、漫画などのコンテンツはその多くが有償で提供されており、これらを不正にアップロードしそれをダウンロードした場合、罰則の対象となる場合があります。
要件② 違法にアップロードされたものと知っていた場合
違法ダウンロードの罰則の対象となる条件としてそのコンテンツが違法にアップロードされたものであり、そのことをだと知っていることも挙げられます。
たとえば、個人が撮影した映像や画像が公開されているサイトに「著作権フリーのコンテンツです」などの文言が掲載されていた場合、ユーザーの多くは安心してコンテンツをダウンロードするでしょう。
しかし、それが虚偽であり、サイト運営者がアクセス数を稼ぐ目的で記載した内容であった場合、ユーザーは適法か違法かの判断が難しくなります。
一方、海賊版サイトやファイル共有ソフトなどに有名な映画や音楽、漫画などがアップロードされていた場合、多くのユーザーは違法なコンテンツであると認識できるため、違法性が認められる可能性が高いでしょう。
要件③ 違法ダウンロードを継続的にまたは反復して行っていた場合
これらに加え、違法ダウンロードの罰則の対象となる条件として、違法ダウンロードを「継続的に又は反復して」行ったことも必要とされています。これは、一度だけの違法ダウンロードを罰則の対象とすることはあまりに処罰範囲が拡大するという懸念があったために付された条件だと思われます。
とはいえ、これは罰則の対象となる条件であって、民事上はこのような条件はありません。つまり、一度の違法ダウンロードであっても民事上は違法であり、損害賠償等の対象になることは注意しなければいけません。
要件④ 例外に該当しないこと
違法にアップロードされたコンテンツのダウンロードであっても、例外的に私的使用のための複製として許されるケースも規定されました。
代表的なものは、違法ダウンロードの範囲が「軽微なもの」であるケースです。このケースとして想定されているものは、例えばスクリーンショットをする場合の写り込みや、漫画の1コマ~数コマのダウンロードが上げられます。
そのため、例えばネット通販サイトで作品の表紙やパッケージが掲載されたページをスクリーンショットとして保存した場合は、違法ダウンロードの対象にはならないと思われます。また、あるコミック作品の数コマがSNSにアップロードされており、それをダウンロードした場合などは軽微なものとしてみなされ、違法ダウンロードの対象とならない可能性が高いでしょう。
その他、二次創作やパロディなどのダウンロードや、「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合」も違法ダウンロードとならない例外的なケースとなっています。
違法ダウンロードがバレてしまった場合、逮捕されるのか

違法ダウンロードに手を染めてしまうユーザーは、「誰でもやっているから」、「軽い気持ちだった」、「バレないと思った」など、安易な気持ちが動機となっていることも少なくありません。
コンテンツをダウンロードする際には個人情報を記載する必要もなく、一見すると匿名性が確保されているため、「バレないだろう」という考えを持たれがちです。
しかし、これは大きな間違いであり、違法ダウンロードを繰り返していると捜査の過程で個人が特定され、逮捕される可能性も十分あります。
インターネットを利用する際にはIPアドレスというものが割り振られています。通常、IPアドレスだけで個人を特定することはできませんが、犯罪行為が疑われる場合、警察や検察はISP(インターネットサービスプロバイダ)に対して情報開示を請求し個人が特定されることになります。
なお、IPアドレスの仕組みについては以下の記事でも詳しく解説しているため、こちらも参考にしてみてください。
ファイル共有ソフトの使用で注意すること
著作権侵害にあたるコンテンツを違法にダウンロードする際に用いられる手段として、ファイル共有ソフトがあります。
まず大前提として覚えておきたいのは、ファイル共有ソフトそのものは違法性が認められるものではなく、アップロードまたはダウンロードするコンテンツが著作権侵害にあたるかどうかで判断されるということです。
ファイル共有ソフトは不特定多数のユーザーとさまざまなデータを共有できるという強みがありますが、実際にアップロードされているデータには違法なコンテンツも少なくありません。
ファイル共有ソフトを使用する際には、著作権侵害にあたるコンテンツのダウンロードは絶対にしないことはもちろん、自身がアップロードするデータも著作権侵害にあたるものがないかを十分に確認してから使用することが重要です。
また、ファイル共有ソフトで違法にダウンロードしたコンテンツを再びアップロードした場合、より悪質と判断され厳しい罰則が科される可能性もあるため注意しましょう。
Webに関わる法律であればお気軽にご相談ください
誰もが手軽にインターネットを利用できるようになった今、知らずしらずのうちに著作権侵害を犯す可能性は否定できず、正しい知識を身につけておくことが重要です。
今回紹介した違法ダウンロード行為も、法律に疎い方にとっては複雑で難しく感じられることもあるでしょう。
Webに関連した法律で分からないことや不安な点がある場合、ぜひ当事務所へご相談ください。
まとめ
著作権法という法律があることは知っているものの、その詳しい内容までは把握できていない方が大半であり、自覚がないまま著作権侵害を犯している可能性もあります。
特に違法ダウンロードは「誰でもやっていることだから」、「バレないだろう」といった安易な考えで手を染めてしまうことも少なくありません。
しかし、これらは大きな間違いであり、悪質性が認められると厳しい罰則が科されることもあるのです。
違法ダウンロードに関する正しい知識を身につけ、特にファイル共有ソフトを利用する場合にはアップロードするデータについても細心の注意を払うことが重要です。