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トレント(torrent)での開示請求がきたときの示談金の相場は?示談の流れについても解説

トレント(torrent)の使用について開示請求を受けたときは、相手と示談するという選択肢も検討されます。

・示談金の相場を把握しておきたい
・どのような流れで示談が成立するのか気になる
・示談の際はどのような合意がされるか知りたい

示談を検討する際は、これらの点を知っておく必要があります。

そこで記事では、トレントの使用で示談が必要になった場合の示談の流れや示談金の相場等について解説します。

トレントの使用で開示請求を受けた方へ
当事務所では、非開示に向けた弁護活動も積極的に行っています。
他事務所で示談を勧められたけれども非開示の可能性を探りたいという方もぜひ一度当事務所までご相談下さい。

 

 

 

示談交渉の意味はあるか(減額の可能性はあるか)

まず、そもそも示談交渉をする意味はあるのでしょうか。

この点について、「トレントの使用について示談交渉をしても、減額される可能性がない」という意見が多く見受けられます。(トレントに関する相談に対して、そのように回答している方も多数いらっしゃるようです。)

しかし、減額の余地が一切ないというのは間違いです。当事務所でも、実際にトレントの使用について示談交渉を行い、相手の提示額から示談金を減額できた事例はあります。

したがって、当事務所としては「相手の提示額を支払って早期に示談する」という方針が必ずしも最善とは考えていません。

また、開示請求が1件だけとは限りません。焦って示談を急いでも、2件目・3件目・・・と開示請求が続き、何度も示談金の支払いをしなければならないという状況に陥る可能性も十分考えられます。

開示請求や示談交渉への対応によっては不当に不利な結論になることもありますので、適切な示談交渉を行うことには十分な意味があります。

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トレントの使用による示談までの流れ

トレントの使用から示談の流れとしては、ほとんどの場合次のようなステップとなります。

これらについて順番に解説していきます。

 

①意見照会書の受領

著作権者がプロバイダに対して発信者情報開示請求を行うと、プロバイダは発信者(契約者)に対して意見照会書を送付します。

ほとんどの場合、意見照会書は自宅に郵送されます。

トレントの使用者は、この意見照会書を受領することで初めて自身に対して開示請求が行われていることを知ります。

(意見照会書の例)

 

②プロバイダによる情報の開示

プロバイダからの意見照会書に対して開示に同意すると回答する場合、プロバイダはすぐに著作権者側に情報を開示します。

開示に同意すると回答しなくとも、例えば裁判所が開示を認める決定をした場合、プロバイダはその決定に従って開示することになります。

示談交渉を行うケースでは、著作権者はこのいずれかによってトレント使用者を特定していることが一般的です。

(開示文書の例)

 

③著作権者側の示談交渉に関する通知書

プロバイダからトレント(torrent)の使用者に関する情報を得た著作権者は、示談に関する通知書を送付することが一般的です。

この示談に関する通知書には、概ね以下の内容が記載されています。

  • 著作権侵害の通信が確認されたこと
  • 著作権の侵害を受けた作品名
  • 発信者情報開示請求を行った結果、使用者に関する情報が得られたこと
  • 示談金の提示額

 

④示談の条件に関する交渉

この通知書に対して回答し、その後もやり取りを重ねながら示談の条件について交渉することになります。

交渉の対象となる項目の例としては、下記があげられます。

最初に条件を提示するのは著作権者側ですので、その条件を飲めば早期に示談交渉が終わります。

もっとも、最初に提示される示談の条件は著作権者側にとってかなり有利なものです。示談交渉を行うことでそれを調整するイメージですが、トレント使用者側の要望が著作権者側の提示と離れれば離れるほど、当然、示談交渉は長引きます。

示談交渉は、早ければ1週間程度、長引くと1~2か月程度かかることがあり、それ以上の時間を必要とするケースもあります。

 

③示談書(和解契約書)の締結

示談の条件について両者で合意ができたら、その内容が記載された示談書(和解契約書)に署名押印することになります。

実際に示談書(和解契約書)の文書を作成するのは、著作権者側である場合がほとんどです。

示談書(和解契約書)は原本に署名押印することになるため、郵送でのやりとりとなることが一般的です。

このやりとりが終わり、定められた示談金を支払ったときに事件が終了したということになります。

 

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トレント(torrent)の使用で開示請求されたときの示談金の相場

著作権者側から提示される示談金の相場は、1作品あたり30万円~50万円程度となっています。

ここでの著作権者側からの提示額は、トレント(torrent)使用者の個々のダウンロード状況は考慮されず、一律このような金額を示されることがほとんどです。

なぜ具体的なダウンロード状況が考慮されないかというと、具体的な状況まで著作権者側で把握することは困難だからです。

 

過去の裁判例で示された損害額の算定方法

過去の裁判例によれば、以下のような算定方法で損害額が計算された例があります。

過去の裁判例で採用された損害額の算定方法
トレントの使用期間中における対象ファイルのダウンロードの増加件数 × 作品1つあたりの利益額

(実際にはもう少し複雑な算定方法が採用されていますが、基本的な考え方はこのようなものです。詳細を確認されたい方は、以下の裁判例を参照ください。)

裁判例:東京地判令和3年8月27日(裁判所HP)

 

裁判例:知財高判令和4年4月20日(裁判所HP) ※↑の控訴審判決です

 

なお、自身がシーダーであったか、リーチャーに過ぎないのかは損害額の算定に影響を与えませんでした。これは、トレントの使用が「共同不法行為」に該当すると判断されたためです。したがって、「自分はリーチャーにすぎなかった」というのは、損害額を小さくする有効な反論にはならないようです。

 

包括示談とは

著作権者によっては「包括示談」のオプションも提示されることがあります。

包括示談とは
相手方の作品を他にもトレントでダウンロードしていた(又はその疑いがある)場合に、相手方の作品すべてについて示談で解決するという内容の合意

 

このような示談をすることで、同じメーカーによる別件の開示請求によって新たに違法なダウンロードが発覚した場合であっても、包括示談の効力が及ぶことで追加の示談金の支払いは免れることができます。

しかし、包括示談の際に提示される示談金の相場は1メーカーあたり70~80万円と非常に高価であることが一般的です。また、包括示談の効果はあくまでその契約の相手にしか生じないので、他社から開示請求を受けた場合、その効力を主張することはできません。

そのため、包括示談を選択するかどうかは慎重に検討する必要があるといえます。

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示談をきっかけに開示請求が連続してしまうことはあるか

一度示談をすると「示談金を支払う者」と認定され、連続して開示請求を受けるのではないか、と不安に思われる方も多くいらっしゃいます。

これはおそらく、示談金を支払ったという事実が(同業者間で)拡散されたりするのではないか、という懸念があるためだと考えられます。

しかし、プロバイダ責任制限法7条には以下のとおり定められています。

参考条文
(プロバイダ責任制限法7条)
(略)発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者情報に係る発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない。

 

示談金を支払ったという事実を(同業者間で)拡散するという行為は、この規定に反するものであり、許される行為ではありません。

また、開示請求側が把握している(トレントの調査によって得られた)IPアドレスは、基本的に動的なもの(同じIPアドレスであっても時間により割り当てられた契約者が変動する)です。開示請求者側はプロバイダから契約者情報の開示を受けるまでは誰にIPアドレスが割り当てられているか分からないため、特定の契約者を狙って開示請求を行うということは困難です。

そのため、示談したことをきっかけに連続して開示請求を受けるというのは考え難いところです。

 

トレントで開示請求を受けたら必ず示談金を払う必要がある?

トレント(torrent)の使用によって発信者情報開示請求を受けたからといって、必ずしも示談金を支払わなければならないわけではありません。

そもそも発信者情報開示請求がすべて認められるとは限らず、非開示となるケースも存在します。そのような場合、個人を特定することができないため示談交渉が始まることはなく、当然のことながら示談金の支払いもありません。

また、発信者情報が開示されたとしても、実際にファイルのアップロードやダウンロードを行ったとは証明されなかった場合は、示談金ないし損害賠償金を支払うことはありません。

 

非開示となるのはどのようなケースか

上記でも紹介したとおり、発信者情報開示請求が認められず、非開示となるケースもあります。この場合、開示が認められなかった以上示談金の支払いにも発展しません。

非開示となるパターンは様々ですが、代表的ものはIPアドレスの取得が適切であると証明されなかったケースです。

いずれにせよ、非開示の結果を得るためには、プロバイダからの意見照会が届いてすぐに適切な対応をとらなければいけません。

四谷コモンズ弁護士事務所ではこれまで多数のトレント(torrent)案件を対応しており、非開示となったケースも数多く存在します。

プロバイダからの意見照会を受け取った際は、ぜひ一度当事務所までへご相談ください。

 

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トレント(torrent)に関する弁護士相談や対応の流れ

  1. まずは電話やウェブサイト、LINE等から法律相談の申し込みをしていただきます。
  2. その後、電話もしくは面談・ウェブ会議にて当事務所の弁護士が相談内容についてヒアリング等をさせていただき、事件の見通しやお見積りを法律相談の際に説明します。
    こちらから契約を強引に勧めることは一切なく、当日に契約する必要はございませんので、ご安心ください。
  3. 相談を受けてから実際に依頼することとなった場合には、相談者と弁護士との間に委任契約書を締結した後、着手金のお支払いをしていただきます。
  4. その後、当法律事務所の弁護士が回答期限までにプロパイダに対して回答書を送付します。非開示の場合は解決、個人情報が開示された場合は開示請求者との示談交渉を行い、示談によって解決へと導きます。

時間はどれくらいかかるの?

スケジュール感に関しては、非開示の場合は1~2週間、個人情報が開示された場合は示談交渉が1~2か月ほどかかりますので、ご理解ください。

また、勝訴率について規定によりお伝えすることができかねますので、ご了承ください。

 

これまでの実績と弁護士費用は?

当法律事務所では、WEBに関する知識のある弁護士が対応し、これまでに100件以上の実績がございます。

ファイル共有ソフトの使用に関する意見照会書を受領した方について、当事務所では次のような費用で対応を承っております。

●セカンドオピニオンの相談は可能?

もちろん可能です。

  • 質問に対して詳しく答えてくれなかった
  • 「すぐに開示に同意して示談金を支払うべき」と言われたが、方針についてもう少し検討したい
  • 非開示の可能性を探りたい

といった方のご相談も多数お受けしております。他事務所にない方針をご提案できる場合がございますので、まずは一度ご相談ください。

 

●相談の費用や相談までの日数は?

法律相談は初回30分に限り、無料です。

電話であれば、最短当日での対応も可能ですので、お気軽にご連絡ください。

 

 

>>トレントに関するよくある質問についてはこちらでも解説しています。

トレント(torrent)の発信者情報開示請求 よくある質問について専門弁護士が解説

 

ABOUT US

弁護士 渡辺泰央
弁護士 渡辺泰央
弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。