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トレント(torrent)の発信者情報開示請求は拒否できる?不同意の理由について解説

トレント(torrent)での開示請求を受けた方から、開示を拒否(不同意)したいという相談を多くいただいております。

この記事はこんな方におすすめ

・不同意の理由に何を書けばよいか分からない方
・自分で書いてみたが本当に有効か不安な方

この記事では、トレント(torrent)の開示請求は拒否できるのか、また拒否する際の不同意の理由についても解説しています。

開示請求に拒否(不同意)の回答をすれば開示は免れるか

トレント(torrent)の使用について開示請求を受けた場合、プロバイダから意見照会書というものが郵送されます。

この意見照会書には、開示に同意するか拒否(不同意)するか、拒否するのであれば不同意の理由も併せて回答するよう記載されていますから、開示を拒否する(不同意)と回答することもできます。

もっとも、拒否の回答をしても、必ずしも開示を免れるわけではありません。

発信者側(トレント(torrent)使用者側)が開示に同意しなかった場合は、法律上開示が認められるかどうかが判断され、その結果によって開示・非開示が決まります。

開示請求の拒否(不同意)の理由には何を書けばよいか

拒否(不同意)の理由には、その開示請求が法律の要件を満たしていないという法的な反論を記載する必要があります。

そのため、あくまで法的に有効であることが求められます。以下では、法的な反論として有効なものと、(少なくとも開示請求との関係では)有効にはならないものを説明します。

拒否(不同意)の理由として有効なもの

権利侵害(著作権侵害)の明白性が認められないこと

開示請求が認められるためには、法律上「権利侵害の明白性」が認められる必要があります。

そのため、今回の開示請求が権利侵害(著作権侵害)の明白性を満たさないということは、法的に有効な反論になります。

例えば、ある作品のファイル共有行為について開示請求がなされたが、その開示請求者は当該作品の権利者でないという場合は、「権利侵害の明白性」は認められないことになります。

IPアドレス等の取得の正確性に疑義があること

プロバイダに対する開示請求は、それに先行してトレント(torrent)の使用者のIPアドレスやタイムスタンプ等を取得するという作業が行われています。

これによって得られたIPアドレス等をもとにプロバイダに開示請求をするわけですが、このIPアドレス等の取得方法は開示請求者によって実は違っています。そして、中には取得方法が適切なものでなかったり、正確性に疑問があるものもあります。

適切な方法で得られたIPアドレス等でなければ、それに紐づいた回線契約者の情報は開示の対象とはなりませんから、このような事情は法的に有効な反論となります。

ただし、システムを利用してIPアドレス等の取得が行われていることもあります。この場合は、システムの要件や仕様を正確に把握したうえで、技術的な側面から反論する必要があります。

拒否(不同意)の理由として有効でないもの

トレント(torrent)の使用に身に覚えがない

そもそもトレント(torrent)の使用に身に覚えがないというケースもありますが、単にこの事情だけでは開示を拒否する理由としては法律上有効とはなりません。

先述のとおり、開示請求者側はプロバイダに対する開示請求に先行して、トレント(torrent)の使用者のIPアドレスやタイムスタンプ等を取得しています。

これによって得られたIPアドレスやタイムスタンプ等に紐づいた回線契約者の情報は、その取得が適切なものである限り開示の対象となります。

つまり、回線契約者がトレント(torrent)の使用者でないという事実は、法律上は開示を妨げる事情にはなりません。回線契約者が使用者でなくても、同居の家族が使用している場合などもあるからです。

法律がこのような建付けになっているため、仮に回線やデバイスが乗っ取られたケースであっても、乗っ取りの被害者の情報が開示されることになります。

ダウンロードしたファイルに身に覚えがない

トレント(torrent)の使用はしていたが、ダウンロードしたとされるファイルに身に覚えがないケースもありますが、この事情も開示を拒否する理由として法律上は有効とはなりません。

上記のとおり、開示請求者側がトレント(torrent)に使用されたものとして取得したIPアドレスやタイムスタンプ等に紐づいた回線契約者の情報は、その取得が適切なものである限り開示の対象となります。

そのため、単にファイルに見覚えがないとか、ダウンロードした記憶がないというだけでは有効な反論とはなりません。

ダウンロードしたファイルの正規品を後から買った

違法なダウンロードをした後に正規品を購入し、正規の金額を支払ったとしても、過去の違法がなくなるわけではありません。

仮に後から買えばよいというルールになっていると、「違法を指摘されたら買えばよい」ということになってしまい、違法ダウンロードを助長してしまうからです。

また、トレント(torrent)はダウンロードをしていると同時にアップロードもするという仕様となっています。そのため、法的な責任としては1本のダウンロードだけではなく、アップロードについても責任を問われるものです。

したがって、違法にダウンロードしたファイルの正規品を後から買ったというのは開示を拒否する理由としては法律上有効とはなりません。

示談金を払うから開示はしてほしくない(匿名で示談したい)

示談金を払うから開示してほしくないというのは、法律上有効な反論ではありません。

開示請求者の中には、匿名での示談に応じ、示談金の支払いが確認出来たら開示請求は取り下げるという対応をする者もいます。

しかしそれは、あくまで開示請求者側が任意に匿名での示談に応じているだけで、そのような示談が拒否されればそれまでです。

示談金ビジネスであり不当な請求だ

トレント(torrent)の開示請求に関して、しばしば「示談金ビジネスだ」とか「不当な請求だ」いう批判的意見を目にします。

しかし、開示請求者側も違法なアップロード・ダウンロードという被害を被っていることはあります。そのため、単に不当な示談金要求の開示請求だという批判は、少なくとも開示請求の反論としては成立しません。

>>トレントに関するよくある質問についてはこちらでも解説しています。

AUTHORこの記事を書いた人

弁護士 渡辺泰央

弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。

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