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発信者情報開示請求とは?手続の流れ・方法・犯人特定までの期間について解説

発信者情報開示請求とは

発信者情報開示請求とは、インターネット上の匿名の投稿によって権利侵害を受けた被害者が、サイト管理者や経由プロバイダに対して、発信者(投稿者)の特定に資する情報(発信者情報)の開示を請求する手続をいいます。

この制度は、プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に定められています。

インターネットやスマートフォンの普及により、誰でも気軽に情報発信をすることが可能になりました。その反面、匿名の投稿による誹謗中傷も多く発生しています。

違法な投稿を行った者(投稿者)に対して、被害者は損害賠償等を請求することが可能です。しかし、投稿者の住所や氏名が分からなければ法的な請求を行うことはできません。

そこで、投稿者への法的請求の前段階として、匿名の投稿者を特定するための手段として使われるのが、この発信者情報開示請求の手続です。

発信者情報開示請求の流れ

発信者情報開示請求は、基本的に次の2ステップが必要です。

① サイト管理者に対する発信者情報開示請求
問題のある投稿が掲載されたサイトの管理者に対し、IPアドレスやタイムスタンプ等の開示を求める
② 経由プロバイダに対する発信者情報開示請求
投稿時のIPアドレスを割り当てた経由プロバイダ(ISP)に対して契約者の住所や氏名の開示を求める

これらを順番に解説していきます。

なお、2022年に施行された改正法により、発信者情報開示請求が1つの手続で可能になったということが報道されています。これは、上記①②を1つの裁判手続で行うことができるようになったということであって、①②のステップを取ることに変わりはありません。

① サイト管理者に対する発信者情報開示請求

匿名の投稿によって権利侵害を受けた被害者は、まず違法な投稿がなされたサイト(電子掲示板やSNS)の管理者に対して発信者情報開示請求を行います。

サイトの管理者が投稿者の氏名や住所などの情報を保有していることはほとんどありませんので、サイト管理者には、投稿に使用されたIPアドレスや投稿のタイムスタンプの開示を請求することになります。

② 経由プロバイダに対する発信者情報開示請求

サイト管理者からのIPアドレスの取得に成功すると、投稿時のIPアドレスを割り当てた経由プロバイダを調査することができます。

経由プロバイダとは、ユーザーに対してインターネットの接続サービスを提供する事業者を指します。例えば、NTTdocomo、KDDI、ソフトバンクのほか、NTTコミュニケーションズ、JCOMなどがあげられます。

経由プロバイダに対しては、サービス契約者の氏名や住所などの情報の開示を請求します。経由プロバイダからの情報の開示を受けることにより、違法な投稿をした犯人の特定が成功するという流れになります。

投稿者(犯人)特定までの期間は?

発信者情報開示請求を始めてから投稿者を特定するまでには、3か月~6か月程度かかることが一般的です。

サイト管理者や経由プロバイダによって発信者情報開示請求への対応はまちまちですから、その影響で特定までの期間に違いが生じてきます。

また、発信者情報開示請求を受けたサイト管理者や経由プロバイダは、発信者に対して「意見照会」を行う義務があります。発信者がこの意見照会に対して開示に同意すると回答した場合は、結果的に投稿者特定までの期間が短くなります。

発信者情報開示請求の具体的なやり方

発信者情報開示請求のやり方は、大きく分けて以下の2つがあります。

開示請求の方法

  • 1 任意請求
  • 2 裁判

それぞれについて解説していきます。

1 任意請求

任意請求とは、裁判の手続によらずに行う(発信者情報開示の)請求をいいます。

実務上は、「発信者情報開示請求書」という書面を郵送して行うのが一般的です。発信者情報開示請求書の書式は、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会のHPで公開されています。

郵送で発信者情報開示請求を行える点で任意請求はメリットがありますが、反面、任意請求では開示に応じないとするサイト管理者や経由プロバイダがほとんどです。

この理由は、サイト管理者や経由プロバイダは個人情報保護の義務を負っていることや、簡単に開示してしまっては投稿者からプライバシー権侵害の主張を受ける可能性があることがあげられます。

任意請求が有効に活用される場面もありますが、投稿者(犯人)特定を達成するための現実的な方法とはいいがたいところがあります。

2 裁判

実務上は、発信者情報開示請求を裁判の形で行うことがほとんどです。

裁判所が開示を認めると判断した場合は、サイト管理者や経由プロバイダはその判断に従って情報を開示することになります。

一口に裁判といっても、発信者情報開示請求の関係では更に3つの手続に分けられます。

開示請求の3つの方法

  • (1)仮処分
  • (2)通常訴訟
  • (3)発信者情報開示命令申立

(1) 仮処分

仮処分は、主にサイト管理者に対するIPアドレス等の開示請求のために利用されてきました。

通常訴訟よりも早く審理が終わるという点でメリットがありましたが、担保金を供託しなければならないなどのデメリットもありました。後述の発信者情報開示命令申立の制度ができた現在では、利用される場面は限定的といえます。

(2)通常訴訟

通常訴訟は、経由プロバイダに対してサービス契約者の住所や氏名の開示を請求する際に利用されてきました。
こちらも判決までに数か月かかるというデメリットがあり、発信者情報開示命令申立の制度ができた現在では、利用される場面は多くはありません。

(3)発信者情報開示命令申立

発信者情報開示命令申立は、2022年に新設された裁判手続です。
担保金の供託などは必要なく、また通常訴訟よりも早く決定が出ることがほとんどですので、現在ではこの手続が利用されることが多くなっています。

この制度の最大の特徴は、従来は別々の手続だったサイト管理者への開示請求と経由プロバイダへの開示請求を一括して行うことができる点です。

これにより被害者の手続の負担が減った半面、解釈や運用が定まっていない点もあり、課題がないというわけではありません。

まとめ

以上が発信者情報開示請求の手続の説明です。

当事務所では、発信者情報開示請求の実績が豊富にあります。

発信者情報開示請求についてお困りの方は、ぜひ当事務所までお問い合わせください。

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AUTHORこの記事を書いた人

弁護士 渡辺泰央

弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。

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