身に覚えのない発信者情報開示請求(意見照会書)が届いたときの対処法を弁護士が解説!
意見照会書が届いたけれども、全く身に覚えがないというケースも珍しくありません。
この記事では、身に覚えのない投稿についての意見照会書が届いたときはどう考えたらよいか、またそのときの対処法について解説しています。
なお、BitTorrent(トレント)などのファイル共有ソフトの使用に関して意見照会書を受け取った方は、こちらの記事もご覧いただければと思います。
また、BitTorrent(トレント)などのファイル共有ソフトの使用に関して過去の逮捕事例はこちらで紹介しています。
「何かの間違い」の可能性は低い
投稿に身に覚えがない場合、何かの間違いだと考える人がほとんどです。
しかし、意見照会書を送る際にはプロバイダは十分確認しますから、プロバイダの手違いで送られるということは考えづらいです。
その投稿にご自身の契約している回線が使用されたと考えるべきでしょう。
「回線を使用できる人」が使用したと考える
ご自身が投稿していないとすれば、回線を使用できる人が投稿したと考えるのが妥当です。
例えば、家庭の回線であれば、同居の方かもしれませんし、Wi-Fiのパスワードを教えた友達かもしれません。
会社の回線であれば社員の方が考えられます。
なお、古いWi-Fiルーターには、アクセスするためのパスワードが設定されていないものも一部あったようです。
使用者がそのことを知らず、無断で投稿に使用されたという例もありますので、念のためお使いの機種がそのようなものでないかも確認する必要はあるでしょう。
個人情報は開示されてしまうか
残念ながら、ご自身が投稿していないことを証明しても、開示を防ぐ効果はありません。
開示の要件が認められる限り、相手に情報は開示されてしまいます。
見知らぬ人に自分の情報が伝わることに抵抗がある方がほとんどだと思いますが、法律の仕組みがそのようになっている以上、やむを得ないところです。
以上を踏まえ、身に覚えがない開示請求が届いたときの対処法について説明します。
身に覚えがない発信者情報開示請求への対処法
①まず開示請求が認められるケースかどうかを検証する
さきほど、拒否(不同意)の回答をしても開示されるという結論には変わりないと説明しましたが、あくまでこれは「開示請求の要件が揃っている」ことが前提です。
開示請求の要件が認められない(例えば、権利侵害が認められない)ケースの場合、不同意(拒否)の回答をすれば、こちらの情報は開示されません。
そのため、身に覚えのない開示請求であっても、開示請求が認められるものであるかどうかは念のため検証する必要はあるでしょう。
実際に開示が認められるかどうかはケースバイケースの判断ですが、こちらの記事では、どのような投稿が開示の対象となるのかの一般的な判断基準について解説しています。
②同意・不同意(拒否)どちらの回答をするか決定する
①で検討した結果をもとに、同意・不同意(拒否)どちらの回答をするか決定します。
開示請求が認められると判断できる場合
この場合は、開示に同意し、早めに「自分が投稿者でないこと」を説明して理解してもらうことが早期解決につながります。
とはいえ、見知らぬ人に個人情報が開示されることに抵抗がある方も少なくないと思われます。
そのような方は、とりあえず不同意(拒否)の回答を行うのもひとつの手です。
特に、今回の開示請求が任意請求である場合、プロバイダはこちらが同意の回答をしない限り個人情報を開示しません。
プロバイダが任意で開示しない場合、開示請求者はプロバイダを相手に裁判をする必要があります。
しかしこのとき、開示請求者が裁判までは行う気はないということもあります。
この場合、こちらの情報は開示請求者に伝わらずに終了しますから、このような幸運なケースを期待して不同意(回答)を行うこともあります。
なお、任意請求や裁判の区別、任意請求がなされる理由などについて詳しくは以下の記事で解説しています。
開示請求が認められない、又は微妙なケースと判断できる場合
この場合は、不同意(拒否)の回答をすることをお勧めします。
結果的に開示請求が認められなければ、こちらの個人情報が開示されることはないからです。
また、仮に見通しが外れて開示請求が認められたとしても、開示された後に「自分が投稿者でないこと」を説明すれば十分ということもあります。
③(開示された後)投稿者でないことを説明する
開示された後は、面倒でも自分が投稿者でないことを説明する必要があります。
回線契約者と投稿者が違う場合は、原則として回線契約者が責任を負うことはありません。
しかし、回線契約者は日常的にその回線を使用しているでしょうから、その投稿をしたと最初に疑われるのは回線契約者です。
そのため、行ってもいない投稿で責任を負うことを防ぐために、ご自身が投稿者でないことをしっかり説明する必要があるのです。
自分が投稿者でないことを示す事情については、例えば次のようなものが考えられます。
・被害者と面識・関わりがない
(例:被害者の知人・同僚・顧客などではない、被害者(会社)の従業員でない など)
・誹謗中傷をする動機がない
(例:被害者とトラブルになったことはない など)
・その投稿を行う可能性がない
(例:投稿内容は男性目線で書かれているが、自分は女性である など)
・他に投稿者がいる可能性がある
(例:Wi-Fiにパスワードがかかっていなかった、パスワードを見やすいところに掲示していた など)
逆に、これらの事情を全く説明できない場合、単に「身に覚えがない」と言い訳しているに過ぎないとされてしまう可能性があります。
そうなってしまうと法的責任を負うことは免れませんので、やはり自分は投稿者でないことは丁寧に説明する必要があるでしょう。
投稿者でない回線契約者が責任を負うパターンとは
回線契約者と投稿者が違うケースでも、次の場合には例外的に責任を負う可能性もあります。
- 会社の回線が使用されたケースで、投稿内容が競合他社を貶めるものであった場合
- 違法な投稿に使用されることがわかっていてあえて回線を貸したような場合
とはいえ、責任を負うのは例外的であって、「回線契約者も名義がある以上共犯だ」といった乱暴な議論で責任を負わされることはありません。
当事務所では、発信者側での発信者情報開示請求対応に多数の実績があります。
発信者情報開示請求を受けたけども対応を相談されたいという場合は、ぜひ一度お問い合わせください。
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発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。