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プライバシー権侵害の開示請求 拒否する場合の「不同意の理由」書き方を解説

「侵害された権利」の欄にプライバシー権と書かれた意見照会を受け取ったときの、拒否(不同意)の理由の書き方について解説しています。

名誉毀損の成立要件

法律上、プライバシー権が成立するためには、以下の要件が必要です。

① 特定性(同定可能性)がある

② プライバシー権侵害成立の三要件が認められる

③ 違法性阻却事由がない

この①~③いずれかが認められない場合にはプライバシー権侵害は成立しません。そのため、開示請求を拒否(開示に同意しないと回答)する際は、このいずれかが認められないことを拒否の理由に記載することが有効です。

特定性(同定可能性)がないこと

プライバシー権侵害が成立するためには、その投稿が「開示請求者のことを指している」といえることが必要です(このことを「特定性(ないし同定可能性)」といいます。)。

そのため、「誰のことを指しているかわからない」あるいは「他の人のことを言っているとも読める」という場合には、特定性が認められず、名誉毀損は成立しないことになります。

書き方はケースによってまちまちですが、記載例としては以下のようなものになります。

記載例
  • 投稿の対象者について、何も情報(氏名、性別、所属など)が書かれておらず、誰のことを言っているか読み取れない
  • 「Wさん」とイニシャルが書かれているだけで、「W」に該当する人は複数いる
  • 「経理部の女」と書かれているが、経理部の女性従業員は複数いる
  • 「あのデブ」とだけ書かれているが、ふくよかな方は大勢いる

 

ただし、特定性は前後の文脈も含めて判断されます。

そのため、単にその投稿に書かれたものが「源氏名や伏字、イニシャルだけ」という主張だけでは特定性が否定されるとは限りません。

 

開示請求者側も、何か根拠があって「自分のことだ」と思っているわけですから、特定性の点で反論する場合は説得的な記載が必要になります。

プライバシー権侵害の要件が認められないこと

プライバシー権侵害は、一般的には次の3つの要件すべてがそろっている場合に成立するとされています。(プライバシー権侵害の要件について難しい議論はありますが、ここでは分かりやすさを優先した説明をしています。)

 

プライバシー権侵害が認められる三要件
  1. 私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのあることがらであること
  2. 一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められることがらであること
  3. 一般の人々に未だ知られていないことがらであること

 

そのため、反論としては、これらのどれかが認められないという内容になります。

記載例
  • 「○○」と書かれているが、「○○」すること自体は違法・不正な行為ではないし、公開されることで羞恥心を覚える内容でもない(②)
  • 「○○」というのは、自分自身で公開していた内容であって、一般の人々に未だ知られていないとはいえない(③)

 

違法性阻却事由がある

違法性阻却事由というものがあると、プライバシー権侵害は成立しません。

プライバシー権侵害の場合、一般的には次の内容が認められれば違法性阻却事由があると考えられています。

 

プライバシー権侵害における違法性阻却事由

その事実を公表する理由が公表されない法的利益に優越する場合

 

これをどう判断するかですが、様々な要素を総合して判断するとされています。

これまでの判例で例示された考慮要素は、次のようなものです。

 

プライバシー権侵害における違法性阻却事由の考慮要素の例
  1. 公開された情報の性質や内容
  2. 情報が伝達される範囲
  3. 被害者が被る具体的な被害の程度
  4. 被害者の社会的地位
  5. 公開されたときの社会的状況や、その後の変化
  6. 情報を公開する必要性
  7. 公開された媒体の性質

 

これらの記載例は、以下のとおりです。

 

記載例
  • 公開された情報の内容は「○○」というものであり、性質上必ずしも秘匿性の高いものではない(①)
  • 情報の伝達範囲は、この掲示板の閲覧用パスワードを知るものに限られる。一般に公開されているわけではないから、その伝達範囲は広いとはいえない(②)
  • ○○氏の負う不利益は、不快感程度のものである(③)
  • ○○氏は●●という公益に関わる活動をしており、その社会的影響力も大きい(④)
  • ○○氏は●●という公益に関わる活動に現実に従事しており、現在もその地位にある(⑤)
  • ○○氏の活動は公の評価を受るべきものであり、公開された情報はその評価のため必要な情報である(⑥)
  • 公開された媒体はニュースサイトであり、ゴシップサイトのようなものではない(⑦)

 

もっとも、これが認められるのは犯罪報道(逮捕や起訴の報道)や、公権力を行使する公務員(知事や議員など)の問題行為の公開などのケースに限られます。

単に大衆の興味を満たすような内容では違法性は阻却されないので注意しましょう。

 


プライバシー権侵害のケースでの拒否理由の書き方の説明は以上のとおりですが、もちろん具体的な記載はケースによって違いますし、実際に文章にするのが難しい場合もあると思います。

意見照会書への回答について相談されたい方は、当事務所にぜひ一度お問い合わせください

 

 

弁護士に依頼できることや費用の目安等についてはこちらをご覧ください。

 

発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。

 

AUTHORこの記事を書いた人

弁護士 渡辺泰央

弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。

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