コラム

03-6773-8180
平日 10:00~18:00

発信者情報開示請求が任意請求だったときの対処法を弁護士が解説

意見照会が届いたけれども、まだ開示請求が任意請求の段階であるとき、どのように対応すればよいかについて解説しています。

 

任意請求とは

発信者情報開示請求は、①任意請求②裁判という2の方法があります。

このうちの①任意請求とは、次のようなものです。

 

①任意請求

開示請求者がプロバイダに対して情報の開示を直接請求する方法

(※任意請求のイメージ)

 

任意請求は、「発信者情報開示請求書」というも書類をプロバイダに送付する方法で行われることが一般的です。

任意請求に対して開示すべきかどうかはプロバイダが判断することになります。

 

任意請求がなされる理由

任意請求については、開示に同意するという回答をしない限り、プロバイダの判断で開示するという可能性は非常に低いです。

裁判所の「お墨付き」があるわけではないからです。

 

とはいえ、開示請求をする側にとっても任意請求を行う理由があります。これについて気になる方はこちらの記事をご覧ください。

 

なお、プロバイダから意見照会が届いたということは、ログ保存期間経過によって開示を免れるというパターンには該当しないと考えて良いでしょう。

ログ保存期間について気になる方は、こちらの記事もご覧ください。

 

「任意請求」における方針は3つ

任意請求への対応については、方針はおおまかに3つあります。

3つの方針
  1. 不同意(拒否)の回答をご自身で行う
  2. 不同意(拒否)の回答を弁護士に依頼して行う
  3. 開示に同意し、示談交渉に入る

※ 無視するという方針も考えられますが、これは「拒否(不同意)であって理由の記載がないもの」として扱うプロバイダがほとんどです。

 

任意請求の場合、方針はどう決めればよいか

① 不同意(拒否)の回答をご自身で行うケース

次の項目が当てはまる方は、①の方針をとることになるでしょう。

①の方針をとる場合
  • ご自身の情報の開示を望まない方
  • 開示が認められるまでの時間を延ばしたい方

 

先述のとおり、任意請求の段階では発信者が開示に同意しない限りプロバイダが情報を開示する可能性は非常に低いです。

この時点では、プロバイダにとっては開示に同意したかどうかが最も重要ですから、同意しない理由について必ずしも精密なものが要求されているわけではないように思われます。

そのため、この段階ではご自身で回答を行うことで足りるケースも多いと考えます。

 

ご自身で回答を行う場合は、下記の記事もご参照ください。

 

 

なお、プロバイダが情報を開示しないという決定をすると、その旨は開示請求者に通知されます。

この通知を受けて、開示請求者はプロバイダを相手として裁判をするかどうかを判断しますが、裁判となった場合、改めて意見照会を送ってくるプロバイダがほとんどです。

そのため、裁判になった段階で弁護士に依頼しても、しっかりとした反論を行うことはできます。

 

ただし、プロバイダによっては、「任意請求の段階で意見照会を行っている以上、裁判の段階では改めて意見照会は行わない」という運用のところもあります。

 

そのため、①の方針をとる場合は、プロバイダに問い合わせ、「裁判の段階で改めて意見照会をするか」を確認しましょう。

このような問い合わせができない場合は、回答書のどこかに下記の一文を加えることをお勧めしています(ただし、これによって必ず裁判の段階で改めて意見照会が送付されることを保証するものではありません)。

文例

本開示請求が裁判に発展した際は専門家に相談の上回答する予定ですので、その際は改めて意見照会書をお送りいただきますようお願いいたします。

 

 

② 不同意(拒否)の回答を弁護士に依頼して行うケース

次の項目が当てはまる方は、②の方針をとることになるでしょう。

②の方針をとる場合
  • ご自身の情報の開示を望まない方
  • 早い段階で弁護士に反論を作成してもらいたい方
  • 今ある情報でも反論が十分可能な方
  • プロバイダとのやりとりを負担に感じる方
  • 万が一開示されたとしても相手方との交渉をはじめから代理人に依頼したい方

 

弁護士に依頼することで、法的に整理された回答を行うことができます。

また、プロバイダとのやり取りも弁護士に任せることができますので、対応の負担を軽くすることができます。

 

ただ、この時点では開示請求について情報が十分でない場合も多いです。

裁判に至っていれば、記録閲覧を行うことで情報を得ることができますが、この段階では今ある情報に基づいて回答を作成せざるを得ません。

 

そのため、この段階で弁護士に回答を依頼するケースは多くはないといえます。

 

③ 開示に同意し、直接の示談交渉に入るケース

次の項目が当てはまる方は、③の方針をとることになるでしょう。

③の方針をとる場合
  • 開示がほぼ確実に見込まれる方
  • 開示されるかどうか不確定な状況に強いストレスを感じる方
  • 紛争をできる限り早く終わらせたい方
  • 示談交渉を代理人に依頼したい方

 

この方針をとるときに注意しなければならないことは、一度開示してしまうと後戻りはできないということです。

また、相手とのやり取りは法律に基づく交渉になるため、この方針をとることを考えている場合でも、事前に一度弁護士に相談されることをお勧めします。

 


 

任意請求だったときの対処法は以上のとおりですが、どの対応がベストかはやはり一人ひとり結論は違ってきます。

ご自身のケースについて相談されたい方は、弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

弁護士に依頼できることや費用の目安等についてはこちらをご覧ください。

 

発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。

 

AUTHORこの記事を書いた人

弁護士 渡辺泰央

弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。

関連記事

CONTACTお問い合わせ

ご質問やご相談については、まずはお問い合わせフォームから、お気軽にお問い合わせください。