インターネットにおけるプライバシー権とは?成立の3要件を解説
インターネット上の投稿がプライバシー権侵害にあたるというのが、開示が認められる代表的なケースです。
この記事では、プライバシー権侵害とは何か、また、どのような投稿が名誉毀損となるのかについて解説しています。
プライバシー権侵害とは
プライバシー権侵害とは、他人のプライベートにかかわることをみだりに公表することです。
もっとも、プライベートなことを公表することがすべてプライバシー権侵害になるわけではありません。
例えば、「○○さんは毎朝コーヒーを飲んでいるらしい」ということをネットに晒されても、おそらくプライバシー権侵害にはならないでしょう。
プライバシー権侵害に対しては法的措置をとることができますから、それに見合うだけのプライベートの内容が公表がされることが必要です。
なお、プライバシー権侵害と似たものとして、「個人情報保護」というものがあります。
個人情報もプライバシーも重なる部分はありますが、ネットの誹謗中傷を考えるうえでは「個人情報保護」の概念はあまり使われません。
そのため、発信者情報開示請求に関しては、プライバシー権侵害を考えればよいことが多いでしょう。
以下では、プライバシー権侵害の要件についてみていきたいと思います。
プライバシー権侵害の成立要件
特定性(同定可能性)が認められるか
まず、どれだけ秘密の内容を公開されても、それが誰をことなのか読者がわからなければ、プライバシー権侵害は成立しません。
そのため、プライバシー権侵害が成立するためには、その投稿が「開示請求者のことを指している」といえることが必要です(このことを「特定性(ないし同定可能性)」といいます。)。
特定性について詳しくは、こちらの記事で解説しています。
プライバシー権侵害の成立の3要件
プライバシー権侵害は、一般的には次の3つの要件がすべてそろっている場合に成立するとされています。
- 私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのあることがらであること
- 一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められることがらであること
- 一般の人々に未だ知られていないことがらであること
ややわかりづらいと思われますが、この3つがそろっているといわれる典型例は、次のようなものがあります。
- 個人の氏名、住所、電話番号、顔写真
- 給料・年収の額
- 不倫している事実
- 特定の人と交際していること、肉体関係があること
- 病歴(特に、性病、偏見のある病気、精神疾患など)
- 性的マイノリティであること
- 夜のお店(いわゆるキャバクラや風俗店)で勤務している(いた)こと など
なお、投稿の内容が本当のことであっても、プライバシー権侵害は成立します。
名誉毀損の場合は、内容が本当ことであれば成立する可能性が低くなります。
この違いは意識する必要があるでしょう。
違法性阻却事由があるか
違法性阻却事由というものがあると、例外的にプライバシー権侵害は成立しません。
プライバシー権侵害の場合、一般的には次の内容が認められれば違法性阻却事由があると考えられています。
その事実を公表する理由が公表されない法的利益に優越する場合
これをどう判断するかですが、様々な要素を総合して判断するとされています。
これまでの判例で例示された考慮要素は、次のようなものです。
- 公開された情報の性質や内容
- 情報が伝達される範囲
- 被害者が被る具体的な被害の程度
- 被害者の社会的地位
- 公開されたときの社会的状況や、その後の変化
- 情報を公開する必要性
- 公開された媒体の性質
もっとも、これが認められるのは犯罪報道や、公権力を行使する公務員(知事や議員など)の問題行為の公開などのケースに限られます。
単に大衆の興味を満たすような内容では違法性は阻却されないので注意しましょう。
判断に迷う場合は弁護士に相談を
プライバシー権侵害に関する一般論は以上のとおりですが、判断に迷うケースも少なくないと思います。
それぞれのケースでプライバシー権侵害が成立するかの見通しを立てるためには、やはり一度弁護士に相談されることをお勧めします。