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警察から捜査関係事項照会がきたときの回答|強制力はある?

電子掲示板SNSなどの投稿型サイトCGM)を運営していると、警察などの捜査機関から発信者情報開示IPアドレスなど)の要請が「捜査関係事項照会書」の形でなされることがあります。

警察からの要請ということで、漫然と応じている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、警察からの要請だからといって、それが免罪符になるわけではありません。

情報開示後の発信者からの権利主張(プライバシー権侵害)に対して、「警察からの要請だから応じた」ということを反論として使うことはできないのです。

もちろん、警察が守ってくれるわけでもありません。

そこで今回は、警察から捜査関係事項照会がなされたとき、サイト側が回答する際の考え方について説明したいと思います。

 

捜査関係事項照会には”強制力”はない

まず認識しなければならないのはこの点です。

警察からの要請を拒否すると、「公務執行妨害」などとして逮捕されるのではないかと考える方もいると思います。

しかし、そんなことはありません。

捜査関係事項照会などはあくまで任意の手続であって、強制力はないのです。

そのため、回答を拒否したからといって、このことを直接の理由として逮捕がなされることはありません。

 

”サイト側が犯罪を助長している”とみられることが最大のリスク

とはいえ、回答に応じないことにサイト管理者の逮捕リスクが全くないわけではありません。

犯罪を直接行っていない場合でも、犯罪を助長・促進している場合には、「幇助」として刑事処分の対象になることがあります。

つまり、サイト管理者が適切に捜査に協力しないことでサイト上で行われている犯罪を助長・促進しているとみられるような場合には、サイト管理者も「幇助犯」として逮捕されることがあります。

リスクが高い類型は例えば次のようなケースです。(あくまで一例です。)
これらの場合は、捜査に協力し、サイト上で犯罪行為がなされることを防止すべきでしょう。

 

リスクが高い類型

・拳銃や日本刀などの取引にサイトが使用されいている場合

・覚せい剤など違法薬物のやりとりにサイトが使用されている場合

・児童ポルノが投稿されたり取引されているような場合

・テロ、殺害などの犯罪予告が行われている場合

・ストーカー行為に使用されている場合  など

 

なお、警察から記事の削除要請がなされることがありますが、上記のようなケースでは削除に応じるべきと考えます。

 

捜査の対象にならないものには注意

警察などの捜査機関は、あくまで刑事処分の対象となる行為について捜査の権限があります。

そのため、例えばプライバシー権侵害肖像権侵害など刑事処分の対象とならないものに関しては、サイト管理者も逮捕リスクなどを考える余地はありません。

微妙なものは、名誉毀損業務妨害のケースでしょうか。

これらは刑事処分の対象となるものではあります。

しかし、ネガティブな内容も正当な表現の範囲内とされるケースは多いものです。

そのため、例えば企業の批判商品のレビューなどについては、表現方法や内容なども考慮し、慎重に検討しましょう。

 


いかがでしたでしょうか。

私個人としても、犯罪捜査に協力することは基本的には善い行いだと思いますし、”捜査にはなるべく協力すべきでない”とは考えてはいません。

しかし、警察からの要請に漫然と応じることには法的リスクがあるということは認識しておくべきだと思います。(また、簡単に削除や情報開示に応じると今度はユーザーが離れてしまいます。そうなるとサービスとして成立しないことになります。)

とはいえ、警察対応逮捕リスクはデリケートな問題もあります。

捜査関係事項照会の回答にお困りの場合は、一度専門家に相談されることをお勧めします。

 

「WEBに関わる法律講座」の運営元である四谷コモンズ法律事務所では、投稿型サイト等の管理者向けのサービスを提供しております。問題が大きくなる前に、ぜひ本サービスをご利用ください。

 

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AUTHORこの記事を書いた人

弁護士 渡辺泰央

弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。

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