「とくダネ!」炎上事件にみる著作権と「報道」の関係性について
先日、フジテレビの報道番組「とくダネ!」に批難が集中し、炎上しました。ツイッターユーザーの投稿した動画の利用申請があまりに高圧的で、無断利用まで予告したというのが主な理由です。
ただ、これまでテレビがインターネット上のコンテンツを利用したこともないわけではありません。
例えば数年前に流行した、いわゆる「バカッター」の動画はテレビ局による報道にも取り上げられていましたし、この利用に関しては特に批判はなされませんでした。
この違いはどこにあるのでしょうか。
著作権と「報道」の関係
今回の事件についての法的な解説はすでに様々なところで述べられていますが、その中にフジテレビ側の行為が法律上許されるという指摘がそれなりにあります。
その根拠が著作権法41条※1です。
しかし、個人的には著作権法41条で正当化されるべきでない事案と考えます。
著作権法41条の趣旨は、著作権と国民の知る権利の調整です。正確な報道のためには他人の著作物の利用を避けられないという場面は間違いなくあります。このような場面で、著作権侵害を避けるあまり報道が不十分になるとすれば、国民の知る権利が機能しません。
そのため、知る権利が重視される場面では「事件を構成」する著作物の権利が少し制限される、というのが法律の趣旨です。
決して報道機関に特権を認めたものではありません。
「事件を構成」するものといえるのか
では、今回の事件において、フジテレビの利用を認めるべき事案でしょうか。
確かに天災の状況を報道するという意味では、国民の知る権利に寄与することもあるでしょう。
しかし、天災の状況は他人の動画によらなければ報道できないものではありません。つまり、事実の報道をするために他人の著作権を侵害することが不可避とまではいえないのです。
そう考えると、今回の動画は「事件を構成」しているとはいえないと考えるべきです※2。
天災のライブ感などはその場に居合わせた人の撮影によるものでなければ伝わらないというのは確かです。
しかし、そのことを理由に無制限の報道利用を許すとすれば、例えば戦場カメラマンの撮影した写真や映像の法的保護が極めて小さくなってしまいます。
そのような結論が妥当とは思われません。
メディアの特性を考えるべきか
知る権利との関係でいえば、該当の動画はすでにインターネット上で公開されています。インターネット上の動画を見れば天災の被害は認識できるのであって、テレビでなければ見られないものではありません。
「メディアが違えば視聴者も違うから報道利用を許すべき」との考えもあり得ると思います。しかし、そのような主張は既に多くの批判を受けているパクリ・コピペサイトによってなされているものです。
つまりこの理屈は、「他人の著作物へのただ乗り」の方便に他なりません。
この点にあっては、インターネットメディアとテレビに違いはないと思います。
著作物としての価値に違いはない
個人的には、一般ユーザーが手軽に撮影した映像だからという点で、安易な無断利用が検討されたと思います。しかし、プロが取材したものでも、素人がスマホで撮影したものでも、著作物としての価値に違いはありません。
他人の保有する権利に対しては、どのようなものであっても敬意を払うべきでしょう。
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※1 著作権法41条 写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。
※2 逆にいえば、その報道のためには他人の著作権を利用することは不可避といえる関係であれば、著作権方41条によって利用が正当化されるでしょう。この条文が適用される典型例としてよくあげられるのが、絵画が盗難されたとき、盗難の対象を報道するためその絵画の映像を流すような場面です。
発信者情報開示請求で開示が認められる3つのポイントについて解説
発信者情報開示請求の訴訟で開示が認められるかどうかのポイントは、次の3点に集約されます。
①投稿の内容
②裁判官の個性
③弁護士の質
結論に影響する最も大きな要素が、投稿の内容でしょう。
明らかに嘘の内容での誹謗中傷などは、①裁判官の個性や②弁護士の質にかかわらず開示が認められる可能性は高くなります。
投稿の内容によっては、訴訟が起きる前に結論がほぼ決まっているということも少なくありません。
次に重要なのは、裁判官の個性です。
裁判官による判断のプロセスは、法律の条文へのあてはめだけではありません。
「そもそも開示を認めるべき案件かどうか」という価値判断も担当の裁判官によってなされています。
裁判官も人間である以上、価値判断にブレはあると思われます。
そのため、担当の裁判官の個性によって結論が変わる可能性も大いにあるでしょう。
最後に、依頼した弁護士の質です。
上の2つに比べれば結論に与える影響は少ないものの、極めて重要であることに変わりはありません。
弁護士は、問題となっている投稿について、どういう意味で権利を侵害しているか、或いはしていないかを構成し、裁判官を説得します。
この説得は、上にあげた担当裁判官の価値判断に影響を与え、結果として裁判の結論を左右することがあります。
以上が開示が認められるかどうかのポイントです。
発信者情報開示請求に関して見通しを立てる際は、これら3つを中心に検討することが有用でしょう。
当事務所では、被害者の方、投稿者のかたいずれについても発信者情報開示請求について豊富な対応実績があります。
悩まれる前に、ぜひ一度ご相談ください。
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著作権侵害の通報方法とは?著作権侵害の3つの行為も紹介
記事や画像・動画を無断転載された、違法アップロードされたなど著作権侵害に遭ったとき、著作権侵害の通報を考えることがあると思います。
しかし、通報のときにハードルになるのが「著作権侵害をどうやって説明したらいい?」「何を通知したらいいの?」ということです。
そこで今回は、通報の際に書いておくべき内容を説明します。
※ すべてのケースに対応できるものではありません
①自分の作品が著作権の保護を受けること
侵害の対象になっている作品が「著作権の保護を受けること」は説明しましょう。
もっとも、難しく考える必要はありません。ブログ記事やイラスト、写真、動画などは、基本的に著作権の保護を受けるからです。
そのため、ほとんどの場合この点は詳しく説明する必要はないでしょう
・私の執筆したこのブログ記事は、言語の著作物として著作権の保護を受けます
・転載された私のイラストは、絵画の著作物として著作権の保護を受けるものです
・転載された私の写真は、写真の著作物として著作権の保護を受けるものです
・無断でアップロードされた動画は、映画の著作物として著作権の保護を受けるものです
・作品□□□□(作品名)は、私が創作したものであり、私の個性が表れたものとして著作権の保護を受けます など
【この点を詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。】
著作権って、どんな作品に認められる?(その1 作者の個性)
著作権って、どんな作品に認められる?(その2 ありふれた表現)
②自分がその作品の著作権をもっていること
法律上は、自分が著作権をもっていない作品について通報することは基本的にできません。
そのため、侵害の対象となっている作品の著作権は自分がもっていることを説明する必要があります。
この点については、著作権は原則としてその作品を作った人にあります。
なお、著作権をもっているかどうかは、その作品の作者として表示されていることも重要な要素になります。
ペンネーム、ハンドルネーム、サークル名などであってもOKです。
そのため、著作権をもっていることの証明として、作者名・投稿者名の記載のある転載元ページ、商品紹介ページ、投稿画面などを添付することも効果的でしょう。
・□□□□(作品名)は、私が創作したものです
・商品紹介ページには、作者として私の氏名が表示されており、法律上私が著作者であると推定されます など
③著作権侵害行為があること
インターネットにおける著作権侵害は、ほとんどの場合、作品を無断でコピーし、新たにサーバにアップロードするという形式をとります。
これは、著作権法としては「複製権」「公衆送信権」「送信可能化権」の3つの権利を侵害する行為です。
また、無断で作品を改変された場合は、「翻案権」と「同一性保持権」を侵害する行為といえます。
どのような侵害行為があるかは、明記する必要があるでしょう。
・私の作品を無断でサイトにアップロードされており、複製権、公衆送信権及び送信可能化権を侵害が発生しています
・作品が無断で改変されており、翻案権及び同一性保持権の侵害も生じています など
【この点を詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。】
どういう行為が、法律違反になるの?(その1 複製)
④著作権が制限される場面でないこと
「私的使用目的」とか「引用」の場面は著作権が制限される代表的なケースです。
ただ、無断でコピーし、新たにサーバにアップロードするという形式にあっては、「引用」以外は考えづらいといえます。
そこで、転載先が引用元を明記しているなど「引用」の形式をとっているような場合は、「引用」にあたらないことを説明しましょう。(それ以外の場合は、必ずしも「著作権が制限される場面でないこと」を説明する必要はありません。)
・私の記事を全文転載しており、「引用」を逸脱する利用形態といえる
・私の作品がメインコンテンツとなっており、「引用」として許される利用形態とはいえない など
【この点を詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。】
どういう利用が許されるの? (その1 私的使用目的)
ケースバイケースの問題もあることに注意
著作権侵害を通報する際、説明すべきことは以上の4項目です。
しかし、具体的な事情によっては、もう少し緻密な検討も必要になります。
また、説明の仕方によって通報先の対応も変わることもあります。
通報の際の法律問題で迷ったら、一度専門家に相談することをお勧めします。
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削除代行業者とは?違反と判断される理由や報酬の返金請求を解説
平成29年2月20日、削除代行業者が違法であるとの判決が出されました。

この裁判例にどのような意味があるのかを解説してみたいと思います。
そもそも「削除代行業者」って?
「削除代行業者」とは、被害者に代わってサイト側に削除要請を行う業者です。
インターネット上で、”ネット上の書き込みを削除します”という広告を目にすることがありますが、弁護士や法律事務所以外の事業者・法人が出しているものは、削除代行業者である可能性が極めて高いでしょう。
なぜ違法と判断された?
削除代行が「法律事務」に該当するためです。
「法律事務」を弁護士以外が行うことは、法律で禁止されています。
結果的に削除できれば、弁護士でも業者でもいいのでは?
削除代行業者には何の資格もありませんし、国の監督が直接及ぶわけでもありませんから、適切に仕事をすることについて何の担保もないのです。
そのような業者に、自分の権利義務や個人情報を預けることは非常に危険です。
また、悪質な業者の中には、依頼者の誹謗中傷等の書き込みを自ら行って、延々と報酬をむしり取ろうとする者もいます。
そのため、削除代行業者は徹底的に排除されなければならないのです。
また、削除代行業者に依頼を続けることは、違法な業者に金銭を支払うことを意味しますので、コンプライアンスの観点からも問題です。
削除代行業者に支払った報酬は返金請求できる?
削除代行業者に支払った報酬は、”全額”返金請求の対象になります。
違法な事業であって契約が無効だからです。
契約書に押印していても、返金が請求できます。
また、削除に成功したため納得して報酬を支払ったという場合でも、返金請求が可能です。
自分が返金請求ができるかどうかはどう判断すればいい?
・連絡の窓口が法律事務所でない
・報酬支払先の口座名義が弁護士(弁護士法人)でない
このような場合は、ほとんどのケースで返金請求ができます。
削除代行業者の中には、「削除要請は提携弁護士に依頼している」としているケースもありますが、そのような場合でも、上記にあてはまる場合は返金請求できる可能性が高いといえます。
当事務所では、削除代行業者への返金請求に相談料無料、着手金無料で対応いたします。
☑ 過去に削除代行業者を利用したが、お金が返ってくるなら返金請求したい
☑ 削除代行業者に現在依頼しているが、依頼を続けるのが不安
☑ いま依頼している削除代行業者のやり方に疑問がある
このような考えをお持ちの方は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。
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名誉毀損やプライバシー権侵害の発信者情報開示請求の方法とは
発信者情報開示請求に係る意見照会に対し、どのような形式で回答したらよいか分からない方も多いと思います。
そこで今回は、回答形式の参考として回答書の書式を提供したいと思います。
※ すべてのケースに対応できるものではありません。あらかじめご了承ください。
名誉毀損を理由とする発信者情報開示請求に対して
【書式はこちら】(PDF)
使用方法
サイト管理者やプロバイダから送付される回答書には
このように記載し、上記書式に記入したものを同封して返送しましょう。
補足説明
・書式には、【特定性(同定可能性)】、【社会的評価の低下】、【違法性阻却事由】の各項目がありますが、すべてを記入する必要はありません。この3つのうちいずれかの主張が認められれば名誉毀損は成立しないとされていますから、最低でも1つの項目を記入しましょう。
・回答内容を裏付ける資料がある場合には「添付資料」等の形で回答書に添付しましょう。
プライバシー権侵害を理由とする発信者情報開示請求に対して
【書式はこちら】(PDF)
使用方法
名誉毀損のものと同じです。
補足説明
・書式には、【特定性(同定可能性)】、【プライバシー権侵害の要件】、【違法性阻却事由】の各項目があり、【プライバシー権侵害の要件】はさらに3つ、【違法性阻却事由】は2つの項目に分かれていますが、これらをすべてを記入する必要はありません。これら合計6つのうちいずれかの主張が認められれば、プライバシー権侵害は成立しないとされていますから、最低でも1つの項目を記入しましょう。
・回答内容を裏付ける資料がある場合には「添付資料」等の形で回答書に添付しましょう。
利用にあたってのお願い
・今回紹介した書式を利用される方は、必ず書式中の【利用上の注意】及び【利用規約】を確認してください。
・営利目的での利用など、意見照会への回答者以外の方がご利用を希望される場合は、必ず事前に当事務所にご連絡いただきますようお願いいたします。
・今回紹介した書式は絶対的なものではありません。回答の形式に決まりはありませんから、この形式でなければ回答できないというものではありません。
弁護士に依頼できることや費用の目安等についてはこちらをご覧ください。
発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。
NAVERまとめ炎上事件からみた削除・開示請求対応のあり方を解説
削除・開示請求の手続を複雑にしても良いことはない
今回の事件でLINE側に批判が集まった理由のひとつに、”削除請求の方法がわかりづらい”という点がありました。 削除・開示請求の方法を分かりづらくすることで、場合によっては被害者からの請求を断念させ、削除・開示請求の件数を少なくするという効果はあるかもしれません。(LINE側にこの意図があったかどうかは不明ですが。) しかし、サイト側が指定した方法でなくとも、法的に正しい請求が行われればそれは有効なのです。 また、「サイト側が指定した方法をとらないから対応しない」という理屈では、法的責任を免れることはできません。 サイト側が指定した形式でない請求であっても、それを放置すれば当然に法的リスクは高まります。 サイト側が行う削除・開示請求の方法の指定は、サイト側とユーザー側双方の利便を目的としてなされるべきものであることを確認しておきましょう。過度の資料や手間を要求すべきでない
今回の炎上の理由の二点目として、LINE側が削除対応のため請求者に”手間”を要求したということがあげられます。 権利者本人からの請求であることを確認するため資料を求めることは必要ですが、それは合理的な範囲にとどめるべきでしょう。 本人確認は、印鑑登録証明書の添付が望ましいとは考えられていますが、免許証やパスポートのコピーでも十分である場合は多いです。 結局、権利者本人の確認は不当な請求を防止するため必要となるものですから、その目的を達成できれば十分なのです。 過度の負担を請求者に課すと”被害者なのに負担を強いられた”とか”態度が高圧的である”と捉えられる可能性がありますから、請求者に求める事項はよく検討しておく必要があります。事前に削除・開示請求対応の体制は整えておく
削除・開示請求対応をめぐる炎上事件は、場当たり的な対応をしていたケースがほとんどです。 今回のLINEについても、事件が起こった時点と現在では体制が変わっているようです。 一般的に、”批判を受けてから体制を変える”では遅すぎるのであって、サービスの信用性にも影響を与えてしまいます。 最近では特にキュレーションサイトなど投稿型サイトの法的責任に関心が集まっていますから、炎上してしまう前に、法的に適切な削除・開示請求対応の体制はしっかり整えておくことが重要でしょう。 「WEBに関わる法律講座」の運営元である四谷コモンズ法律事務所では、投稿型サイト等の管理者向けのサービスを提供しております。問題が大きくなる前に、ぜひ本サービスをご利用ください。 【関連記事】まとめサイト運営者に知ってほしい「パクり」の種類や対処法
「WELQ」の事件により、キュレーションサイトやまとめサイトに対する批判が高まっています。
これによってキュレーションサイトやまとめサイトの炎上の危険性は高まっており、第二の「WELQ」が生まれる可能性も十分にあるところです。
そこで今回は、キュレーションサイトやまとめサイトをこれからはじめる方だけでなく、すでに運営している方にもできる法的な対処法について説明してみます。
「パクり」の批判への対処法
キュレーションサイトやまとめサイトへの批判として大きいものは、「他人のコンテンツをパクっている」という点です。
「パクり」は法的には著作権の問題ですので、法的対処法としても、著作権侵害にならないようにすることが重要です。
対処法は、「パクり」(つまり類似の)コンテンツの種類によって変わってきます。
画像の「パクり」について
写真やイラストなどの画像は、ほとんどすべてに著作権が認められます。
そのため、ネット上から適当に拾ってきた画像を利用することは著作権の問題があり、批判の対象となります。
万が一著作権を侵害する形で画像を使用している場合は、画像の差し替えを行いましょう。
また、画像素材を提供するサイトを使用していることもあると思いますが、そこの利用条件に違反していると、著作権侵害になります。
そのため、利用している画像提供サイトの利用条件(利用規約)はもう一度確認しましょう。利用条件に違反していることが判明している場合は、その条件を満たすよう使用形態を変えることや、画像の差し替えの対処が必要です。
※画像の著作権について詳しくはこちら
文章の「パクり」について
文章にも著作権は認められますから、誰かのブログ記事などをコピペすることは著作権侵害の行為として、批判の対象となります。
もっとも、文章の「内容」については、著作権は認められません。つまり「表現」が違えば、「内容」が同じであっても著作権侵害とはならないのです。
小手先の加工(例えば、「~です。~ます。」調を「~だ。~である。」調に変えるだけ)では著作権侵害となりますが、文章の流れや構成まで変えてしまえば、著作権侵害とはなりません。
コピペに近い形で記事を流用しているような場合は、(「内容」が同じでも構いませんので)独自の「表現」といえる程度にまでリライトすることが必要でしょう。
また、「引用」として利用する場合は、その要件を満たすことが必要です。
※「内容」と「表現」について詳しくはこちら
※「引用」について詳しくはこちら
表示・広告規制違反への対処法
今回の「WELQ」事件では、薬事法の表示規制違反が批判の対象となりました。
薬事法をはじめ、法律には「表示すべきもの」「表示してはいけないもの」のルールが多く存在しています。
そのため、コンテンツの内容を確認し、表示・広告規制違反がある場合はすぐに削除またはリライトしましょう。
表示・広告規制がある代表例は、次のとおりです。
・金融商品取引法
・景表法(不当景品類及び不当表示防止法)
・特商法(特定商取引に関する法律)
・消費者保護法 など
どのような表示・広告規制が適用されるかは、サイトの種類によって変わってきます。自身のサイトに表示・広告規制が適用されるものであるかは一度確認してみましょう。
情報の「発信者」としての自覚をもつこと
キュレーションサイトやまとめサイトは、他者の作ったコンテンツを使用するものです。
しかし、そのコンテンツを使用している以上、サイト管理者自身にもそれらのコンテンツの内容について責任があります。
”自分が作ったものでないから関係ない”ということはできません。
「WELQ」の問題も、外部ライターや一般ユーザーに記事作成を任せ、内容のチェックがずさんになっていたことが炎上の原因のひとつでした。
キュレーションサイトやまとめサイトを運営するときも、やはり情報の「発信者」としての自覚をもつことが、炎上を防止する最も重要な心構えといえます。
「WEBに関わる法律講座」の運営元である四谷コモンズ法律事務所では、投稿型サイト等の管理者向けのサービスを提供しております。問題が大きくなる前に、ぜひ本サービスをご利用ください。
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警察から捜査関係事項照会がきたときの回答|強制力はある?
電子掲示板やSNSなどの投稿型サイト(CGM)を運営していると、警察などの捜査機関から発信者情報開示(IPアドレスなど)の要請が「捜査関係事項照会書」の形でなされることがあります。
警察からの要請ということで、漫然と応じている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、警察からの要請だからといって、それが免罪符になるわけではありません。
情報開示後の発信者からの権利主張(プライバシー権侵害)に対して、「警察からの要請だから応じた」ということを反論として使うことはできないのです。
もちろん、警察が守ってくれるわけでもありません。
そこで今回は、警察から捜査関係事項照会がなされたとき、サイト側が回答する際の考え方について説明したいと思います。
捜査関係事項照会には”強制力”はない
まず認識しなければならないのはこの点です。
警察からの要請を拒否すると、「公務執行妨害」などとして逮捕されるのではないかと考える方もいると思います。
しかし、そんなことはありません。
捜査関係事項照会などはあくまで任意の手続であって、強制力はないのです。
そのため、回答を拒否したからといって、このことを直接の理由として逮捕がなされることはありません。
”サイト側が犯罪を助長している”とみられることが最大のリスク
とはいえ、回答に応じないことにサイト管理者の逮捕リスクが全くないわけではありません。
犯罪を直接行っていない場合でも、犯罪を助長・促進している場合には、「幇助」として刑事処分の対象になることがあります。
つまり、サイト管理者が適切に捜査に協力しないことでサイト上で行われている犯罪を助長・促進しているとみられるような場合には、サイト管理者も「幇助犯」として逮捕されることがあります。
リスクが高い類型は例えば次のようなケースです。(あくまで一例です。)
これらの場合は、捜査に協力し、サイト上で犯罪行為がなされることを防止すべきでしょう。
・拳銃や日本刀などの取引にサイトが使用されいている場合
・覚せい剤など違法薬物のやりとりにサイトが使用されている場合
・児童ポルノが投稿されたり取引されているような場合
・テロ、殺害などの犯罪予告が行われている場合
・ストーカー行為に使用されている場合 など
なお、警察から記事の削除要請がなされることがありますが、上記のようなケースでは削除に応じるべきと考えます。
捜査の対象にならないものには注意
警察などの捜査機関は、あくまで刑事処分の対象となる行為について捜査の権限があります。
そのため、例えばプライバシー権侵害や肖像権侵害など刑事処分の対象とならないものに関しては、サイト管理者も逮捕リスクなどを考える余地はありません。
微妙なものは、名誉毀損や業務妨害のケースでしょうか。
これらは刑事処分の対象となるものではあります。
しかし、ネガティブな内容も正当な表現の範囲内とされるケースは多いものです。
そのため、例えば企業の批判や商品のレビューなどについては、表現方法や内容なども考慮し、慎重に検討しましょう。
いかがでしたでしょうか。
私個人としても、犯罪捜査に協力することは基本的には善い行いだと思いますし、”捜査にはなるべく協力すべきでない”とは考えてはいません。
しかし、警察からの要請に漫然と応じることには法的リスクがあるということは認識しておくべきだと思います。(また、簡単に削除や情報開示に応じると今度はユーザーが離れてしまいます。そうなるとサービスとして成立しないことになります。)
とはいえ、警察対応や逮捕リスクはデリケートな問題もあります。
捜査関係事項照会の回答にお困りの場合は、一度専門家に相談されることをお勧めします。
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ピコハラってハラスメント?PPAPの著作権や商標について解説
ピコ太郎さんの「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」が人気を集めていますね。
忘年会でPPAPを強要されることが「ピコハラ」(”ピコ太郎ハラスメント”の略でしょうか)だという指摘もあるみたいです。
たまには楽しい記事も書きたいので、今回はPPAPを弁護士が法律面から(真面目に)考察してみたいと思います。
PPAPの著作権
PPAPは、音楽、歌詞、振付けから構成される作品です。それぞれについて著作権が認められるかを検討してみましょう。
(1) 音楽
音楽には当然著作権が認められるもので、PPAPも例外ではありません。
JASRACへの管理信託もすでにされているようですね。
(2) 歌詞
歌詞は正直微妙だと思います。
使われている単語や文章は非常に単純ですから「ありふれた表現」とされる可能性は高く、著作権が認められる範囲は狭いような気がします。
現実的にも、「I have a pen.」と言ったらピコ太郎さんに対する権利侵害だ、なんて言われたらたまりません。
歌詞について著作権侵害が認められるとすれば、歌詞の全部又は大部分をまるまるコピーしたような場合でしょうか。
なお、歌詞についてもJASRACに信託されているようです。(もっとも、このことと、歌詞にどの程度著作権が認められるかは別の問題です。)
(3) 振付け
振付けに著作権が認められるかも、ちょっと微妙です。
ダンスの振付けについて、既存のステップを組み合わせたりアレンジを加える程度では著作権は認められないと判断されたことがあるからです。(社交ダンスの振付けの著作権が問題となった事例ですが)
振付けに著作権が認められるためには、「顕著な特徴」が必要とされていますが、PPAPに「顕著な特徴」はあるでしょうか。果物にペンを指す動作は特徴的といえますが、ここに著作権を認めるに足りる「顕著な特徴」があるといえるかは・・私には判断できません。
なお、同じく流行になっている「恋ダンス」の振付けには著作権が認められそうな気がします。
PPAPの商標
特許情報プラットフォームによれば、「PPAP」のほか、「APPLE PEN」や「PINEAPPLE PEN」などが商標出願されているようです。
本記事作成の時点ではまだ出願中で登録はされていないようですが、登録が完了すれば「PPAP」を商品名やサービス名として使うと商標権侵害となるケースが出てきますね。
PPAPを忘年会で踊ってもいい?
PPAPの音楽には少なくとも著作権が認められるでしょうから、忘年会で踊ってもいいかは一応気になりますね。
結論からいえば、非営利目的・無料・無報酬であれば、踊っても構いません。
忘年会の一発芸であれば営利目的はないでしょうから、一発芸のためにピコ太郎さんに許可を求めるまでの必要はないでしょう。
(なお、「踊ってみた」の動画をYOUTUBEなどにアップロードする行為は著作隣接権も関係する議論ですのでここでは割愛します)
「ピコハラ」は違法? 犯罪行為?
PPAPを踊らせることがハラスメントとして損害賠償の対象となるでしょうか。
多分程度によりますが、損害賠償の対象となるケースはあまりないと思います。
ハラスメント行為について損害賠償が認められるのは、それによって人格的な利益が害されたといえるためです。
PPAPを踊らせることは人格を傷つけること、とまではいい難いように思います。(そこまでいったらピコ太郎さんにも失礼な気がします)
もっとも、再三拒否したにもかかわらずムリヤリやらせるとか、踊らなかったことを理由に解雇や懲戒などを行うようなケースでは違法と判断されるでしょう。
また、暴行や脅迫を用いてPPAPを踊らせるときは、強要罪が成立することがあります。
まだまだ法的検討の余地はありそうですが、キリがないのでこの辺で終わりにします。
年末にかけて、踊る人もそれを見る人も増加すると思いますが、マナーを守って楽しい年末をお過ごしください。
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サイト上での画像の盗用・・・ 対策法は?
ネット上での画像の盗用はかなり前から問題となっていました。
しかし近年でもキュレーションメディアやまとめサイトなどの広がりに伴い、深刻な問題として再認識されているようです。
最近でもこんなニュースがありました。
まとめサイトの盗用、ある“浴衣画像”が「収拾つかない」事態に
(2016年12月7日 株式会社朝日新聞社「withnews」HPより)
そこで今回は、そんな”古くて新しい”画像盗用の問題と(法的な)対策法について説明してみます。
画像の盗用は、当然に”著作権侵害”
ネット上の画像をコピーし、他のサーバーにアップロードしてサイト上で公開することは著作権侵害となります。
著作権法においては、「著作権の保護を受けるものかどうか」という議論がありますが、画像の盗用に関してはこれを考える必要ないでしょう。画像は文章などに比べ、”著作権の保護を受ける”と判断されるハードルは低いからです。
”よく似た別の画像を作っている”とか、”うちのサイトにある画像を参考にされた”とかのケースであれば話は別ですが、丸パクリや一部トリミングして使用されたなど(いわゆる「盗用」)のケースでは、ほとんどの場合で著作権侵害があるといえるでしょう。
画像が盗用されたときにできること
画像が盗用された、つまり著作権が侵害された場合は、加害者に対して差止(削除)請求と損害賠償請求ができます。
差止(削除)請求は、その画像を掲載しているサーバの管理者に対しても行うことができます。
なお、加害者が誰か分からないときでも、発信者情報開示の制度を使うことで、加害者を特定できる場合があります。
著作権を持っていることの証明方法は?
差止(削除)のケースでも損害賠償のケースでも、自身が著作権を持っていることを証明しなければならないことがあります。
これについては、元データを持っていることを示すなどの必要がありますが、これでは誰の目からも”著作権を持っている”ことが明らかとはいえませんから、場合によっては無意味な争いが生じる可能性もあります。
この点をクリアするもっとも簡単な方法は、画像に「著作権表示」をして公開することです。こうすることで、”著作権を持っている”ことが明確になりますし、法律上も権利を持っていると推定されることになります(14条)。
著作権表示の方式は「作者名として通常の方法により表示」されていればよく、それ以外の制限はありません。
そのため「Photo by ●●」とか「© ●●」などといった表示で問題ありません。
損害賠償を効果的に行う方法は?
著作権侵害の被害者は、加害者に対して損害賠償請求ができます。
ただ、何も対策をしていなければ、賠償額は微々たるものになったり、ときには全く賠償金が取れないというケースもあります。
これを防止するための最も良い方法は、画像の使用料をサイト上に明示しておくことです。
画像販売サイトでなくとも、例えば「当サイトに掲載された画像の使用量は、一律●●円です」などと表示することは可能です。
このように表示しておくと、盗用された際の損害賠償額についてこの金額を基準とすることができます。
なお、あまりに多額の金額を表示しておくと無効となる可能性もありますので、画像販売サイトの価格なども参考にしながら、妥当と思われる金額を表示しておきましょう。
画像盗用の問題は極めて深刻ですが、事前に対策しておくことで、法的にかなり有利な状況を作れますし、それが強い抑止力にもなります。
ただ、実際に加害者に請求するなどの場合は法的な手続が必要な場合もありますから、盗用でお困りの際は一度専門家に相談されることをお勧めします。
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