前回、BSAなどからソフトウェアの不正インストールをしているとして、BSAやACCSなどから通知が届いたときの一般的なお話をしました。
今回は対応をするにあたっての具体的な考え方を説明したいと思います。
1.通知書に書かれた調査要請にはすぐに回答した方がいい?
焦って回答する必要はありません。
すぐに回答したからといって、法的に有利になることはありません。また、特に最初の回答はその後の交渉に決定的な影響を与えます。
通知書に書かれた期限も絶対的なものではありませんから、この段階で専門家のアドバイスを受けるなどして、慎重に検討したうえで回答することを強くお勧めします。
2.立入検査の要請には応じなければならない?
権利者側(BSA、ACCSなどを含む)からの通知書に立入検査の要請があることがありますが、基本的に、この立入検査は任意のものです。これに応じる法的義務まではありません。
もっとも、不誠実な態度を示し続けると「証拠保全」が認められる根拠などになり得ますから、拒否の判断には慎重な検討が必要です。
3.証拠保全はどのようなもの?
簡単に説明すると、裁判所の職員の方が自社オフィスに来て、PCの中身などオフィス内にある証拠の開示を求めるものです。
任意の立入検査と違い、法律に基づいた手続です。
4.証拠保全には事前の通知はある?
事前通知はありますが、証拠の隠滅を避ける目的から、通知があるのは証拠保全実施の約1時間前です。
この間に対応を検討することは非常に難しいものがありますから、万が一に備え、すぐに相談できる弁護士を事前に探しておくことが重要です。
5.不正インストールがあったら、弁護士に相談してもムダ?
そんなことはありません。前回も少し触れましたが、仮に不正インストールがあったとしても、場合によっては、会社の責任にはならないケースもあり得ます。
また、権利者側(BSA、ACCSなどを含む)の要求する損害賠償の額は、必ずしも法律的に妥当といえないこともあります。弁護士に相談することで、この点について専門家のチェックを受けることもできます。
6.今から正規のライセンスを買えば問題ないのでは?
過去の裁判例で、不正インストールを行った後に正規品を購入しても、過去の不正インストールについての損害賠償義務は消滅しないと判断されたものがあります。
「後に正規品を購入したからそれで一件落着」とは考えない方が良いでしょう。
あくまで「法律問題」としての対応を
ソフトウェアの不正インストールのは法律問題ですから、「会社にとって不利なこと・やましく思えることを正直に伝えたから温情がある」などということは基本的にないと考えましょう。むしろ、そうすることで法的に責任を負う必要のない部分まで責任を負ってしまい、かえって会社に損害を与えてしまうということもあり得ます。
対応には慎重な判断が必要ですが、特に以下のようの事情があるときは、速やかに不正インストール対応に明るい専門家に相談し、しっかりとした対応を検討しましょう。
・ ソフトウェアの不正インストールがあるとして、権利者(BSA、ACCSやソフトウェアメーカー)から通知が来たが、どう対応すればよいかわからない。
・ 自社の調査の結果、従業員が無断で不正インストールを行っていたことが判明した。
・ 一度回答したら、次々と会社資料の提出を求められ、手におえない。
・ 合意書へのサインを求められたが、本当にサインしてよいか不安である。
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