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【サイト・サーバ側】投稿型サイトの管理者が負う法的責任とは?

インターネット上の誹謗中傷プライバシー侵害が話題になるとき、しばしば取り上げられるのが”サイト管理者の責任”です。

例えば、他人を誹謗中傷するような情報が電子掲示板投稿されたとき、責任を負うべき人はその投稿をしたユーザーです。

しかし、このような場合、情報を掲載していた掲示板の管理者には、全く責任はないのでしょうか。

今回は、他人の権利を侵害するような情報が投稿されたとき、サイト管理者が負うべき法的責任について解説してみます。

 

そもそも、サイト管理者が責任を負うことはある?

”他人の権利を侵害するような情報を投稿したのはユーザーであって、サイト管理者は無関係”と考えている方も、中にはいらっしゃると思います。

しかし、過去の裁判例には、サイト管理者に数百万円の損害賠償を認めたものがあります。

このケースは、投稿された情報が名誉毀損にあたるものでした。しかし、プライバシー権侵害著作権侵害のケースであっても同じように考えられます。

ユーザーから投稿を受け付けるようなサイトの管理者は、口コミサイトであれ動画サイトであれ、投稿されたコンテンツについて責任を負うことがあるのです。

 

投稿型サイトの管理者が負う3つの責任

投稿型サイト管理者は、大きく分けて次の3つの責任を負うことがあります。

 

(1) 削除義務

投稿された情報が他人の権利を侵害するものである場合、サイト管理者は、そのような情報を”削除する義務”を負うことがあります。

サイト管理者がこの削除義務を負うケースは、被害を受けた人に「差止請求」が認められる場面です。

例えば、著作権侵害商標権侵害がなされたとき、被害者に「差止請求」が認められることは法律に明記されています。

また、法律に明記されているものでなくとも、「差止請求」が認められることがあります。名誉権プライバシー権などの「人格権」が侵害されるケースが典型です。

名誉毀損プライバシー侵害を理由とした削除請求は多くなされていますが、これらは、実は解釈によって認められるものなのです。法律に明記されていくとも”削除義務”が認められることがあるために、サイト管理者が対応に苦慮することがあり、また削除が妥当かどうかの議論もしばしば生じるのです。

 

(2) 発信者情報開示義務

匿名で投稿がなされた場合、被害を受けた人は発信者が誰か分かりません。

そこで、発信者を特定するために、サイト側に発信者に関する情報の開示を求めることがあります。

この開示請求は、いわゆるプロバイダ責任制限法に定められているもので、この法律の要件を満たす場合には、サイト管理者に発信者の情報(IPアドレスなど)を開示する義務が認められることになります。

 

(3) 損害賠償義務

サイト管理者は、情報の掲載によって被害を受けた人に対して直接損害賠償義務が認められることがあります。

例えば先ほど述べた裁判例では、サイト側が削除義務を怠ったために、損害賠償義務があると判断されています。

もちろん、人の権利を侵害するような情報が投稿されたからといって、直ちにサイト管理者が損害賠償責任を負うわけではありません。

しかし、だからといって”サイト管理者は法的責任を負うことはない”と考えることは決してできませんので、注意しましょう。

 

このように、投稿型サイトの管理者もさまざまな法的責任を負うことがあります。(なお、上に挙げたものは民事的な責任ですが、場合によっては逮捕などの刑事処分を受けることもあります。)

 

投稿型サイトは、板挟み

サイト管理者の責任”を考えるとき、ひとつ注意すべき点があります。情報を投稿したユーザーが常に”悪者”というわけではないということです。

インターネット上に情報を投稿することによって、自身を表現したり、社会にメッセージを訴えるユーザーも多くいます。

そのような投稿に関して、他人に対するネガティブな内容を含むからといって、安易に削除したり情報開示したりしてしまうと、今度は投稿したユーザーの正当な利益を害することになります。

場合によっては、「表現の自由の侵害」や「プライバシー侵害」などとして、投稿者から損害賠償請求を受けることもあり得るのです。

つまり、投稿型サイト管理者は、情報を投稿するユーザーと、その情報に触れるユーザーの”板挟み”の状態にあるといえます。

 

投稿型サイトの適切な運営とは

削除請求開示請求がなされたとき、法的に見て適切な対応がなされているかがポイントです。

投稿型サイト管理者は、ユーザーによって投稿されたものすべてを監視するまでの法的義務はないとされています。

しかし、そうであるからこそ、削除請求開示請求には適切に応じることが求められるのです。

サイト管理者の責任”を考えるときは、違う立場のユーザーの板挟みにあるという状況を理解し、どちらのユーザーにも偏らないバランスを考えることが重要な視点といえるでしょう。

 

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弁護士 渡辺泰央
弁護士 渡辺泰央
弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。