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Vtuberにも認められる開示請求|成功のポイントや過去の裁判例について解説

近年、Vtuberの人気が高まっており、市場規模も年々拡大しているようです。

しかし、注目が集まると同時に問題となっているのが、Vtuberに対する誹謗中傷です。Vtuberへの誹謗中傷について開示請求が認められたという報道も目にすることがあります。

そこで今回の記事では、Vtuberの方による開示請求について、成功のポイントや過去の裁判例のまとめなどを紹介します。

この記事はこんな方におすすめ

・誹謗中傷を受けているVtuberの方
・Vtuberによる開示請求の成功のポイントが知りたい方
・Vtuberに関する過去の裁判例を知りたい方

Vtuberとは

Vtuberとは、過去の裁判例では2D又は3Dのバーチャルキャラクターを用いて動画配信等を行うYouTuberであり、声優等とは異なり、個人が当該キャラクターを操作することを前提とするものと定義されています(東京地判令和 4・7・1)。

外見上はバーチャルのキャラクターですが、Vtuberは演者(いわゆる「中の人」)として声を当てるほか、モーションキャプチャーの技術を使ってリアルタイムに表情や動きを読み取り、それをキャラクターの表情や動きに反映します。

活動内容は主にインターネットでのライブ配信や動画投稿ですが、歌手として楽曲をリリースしたり、最近ではCMに出演することも珍しくありません。

Vtuberはそのキャラクターを演じるというよりは、演者自身の活動を、バーチャルキャラクターというフィルターを通して提供しているという要素が強いといえます。
バーチャルキャラクターそのものの設定(アトランティスの末裔とか、海賊団の船長など)もありますが、ライブ配信における「雑談」やSNS上の投稿においては、演者自身の実際の経験(実際に食べたものや訪れた場所など)が話されることがほとんどです。

Vtuberが誹謗中傷の被害を受けやすい理由

Vtuberが誹謗中傷を受けやすい理由は様々考えられますが、代表的なものは以下の2点があると考えられます。

「中の人」の素性が公開されていない

Vtuberは、自身の素性を公開していないことが一般的です。

容姿や年齢、出身地などは明らかにされていないため、かえってそれらを知りたいという欲求が刺激される人も多くいることでしょう。

そのためか、憶測やリーク情報(らしきもの)によるプライベートの情報が投稿されることも多くあります。

また、中には他の名義で活動している人を、Vtuberの「前世」(過去の名義)として結び付け、「前世で●●と言っていた(公開していた)からこのVtuberは●●だ」などと投稿されることもあります。

Vtuberの素性が公開されていない以上、(褒められたことではありませんが)プライベートの情報が注目を集め、結果としてプライバシー権侵害が生じてしまうことがあります。

過激な発言による誹謗中傷の誘発

Vtuberの活動の中では過激な発言や性的(と受け取られるよう)な発言がなされることもあります。

過激な発言そのものが非難の対象になることもあります。

しかし、より多いのが「過激な発言や性的な発言をしている人だから、このくらい言っても大丈夫だろう」と誤解し、行き過ぎた誹謗中傷を投稿してしまうというものです。

もちろん、Vtuberとしてはエンターテイメントとして過激な発言をしているものです。その意味で、Vtuber側に落ち度があるわけではありませんが、それを誤った方向で受け取る人もおり、その結果誹謗中傷の誘発につながっているということがあります。

どのような投稿が開示請求の対象になるか

開示請求は、あくまで法的に権利侵害があることが必要です。単に「配信がつまらなかった」とか「ゲームが下手だった」というだけでは単なる意見・感想ですから、こういった投稿が権利侵害が認められる可能性は低いといえます。

一方、Vtuberに対する誹謗中傷の内容はある程度パターンがあり、権利侵害が認められるものもある程度決まっています。代表的なものは、以下が該当します。

Vtuberの権利侵害が認められる誹謗中傷の典型例

・知的障害や精神疾患に該当するとの指摘
・年齢の公開
・家族や交際相手についての指摘
・住んでいる場所に関する情報
・犯罪予告 など

また、Vtuberに対する誹謗中傷が掲載されるサイトもある程度決まっています。典型的には以下のようなサイトですが、そのほとんどが開示請求の対象とすることができます。

Vtuberに対する誹謗中傷が掲載されるサイトの例

・5ちゃんねる(5ch.net)
・好き嫌い.com
・X(旧Twitter)
・まとめサイト、トレンドサイト など

>>「好き嫌い.com」の誹謗中傷対策については以下の記事でも解説しています。

誹謗中傷対策としての開示請求のメリット

誹謗中傷対策としての開示請求のメリットは、次のものがあります。

  1. 投稿者本人に削除を請求できる
  2. 将来の投稿をしないよう誓約させることができる
  3. 損害賠償を請求することができる

① 投稿者本人に削除を請求できる

削除請求は、投稿が掲載されたサイト管理者やサーバの管理者に対して行うことが一般的です。

もっとも、投稿者自身が削除できる投稿(SNSのコメントなど)については、投稿者を特定して本人に削除請求を行った方が確実な場合もあります。

② 将来の投稿をしないよう誓約させることができる

誹謗中傷の投稿が削除できたとしても、同じ投稿者が同じような投稿を繰り返す場合は誹謗中傷対策として十分とはいえません。

このような場合は、投稿者を特定して、二度と投稿しないという誓約をさせることが効果的です。

開示請求を行うことは、「行き過ぎた行為には法的措置をとる」という態度を(投稿者以外にも)示すことができるため、将来の誹謗中傷を抑止するという効果も期待できます。

③ 損害賠償を請求することができる

損害賠償にあたっては、⑴慰謝料と⑵調査費用(特定にかかった弁護士費用)を請求することが一般的です。

損害賠償が数百万円に及ぶことはまれですが、それでも金銭的な負担を負わせることは投稿者にとって非常に大きいペナルティとなります。

投稿者特定後は示談で終わることが多いですが、示談交渉が決裂した場合は裁判手続に移行することも可能です。

開示請求を成功させるポイント

Vtuberの方も開示請求ができるといっても、Vtuberの案件特有の難しさがあります。開示請求を成功させるポイントとしては、以下の点があげられます。

特定性(同定可能性)の証明

Vtuberはその素性を公開してはいないことが一般的です。そのため、誹謗中傷で名指しされるのはバーチャルキャラクターの名義であって、実際の演者の名前ではありません。

しかし、「権利が侵害された」と言えるのは実在の「人」であって、キャラクター自体の権利侵害は認められていません。そうすると、バーチャルキャラクターに対する誹謗中傷が、演者本人の権利を侵害するか、という点が問題になります。

この点について適切に証明することが、法的対策を成功させるポイントなります。

投稿内容の意味内容の適切な理解

Vtuberに関する話題においては、専門用語やインターネットスラングが飛び交うことがほとんどです。

また、Vtuberの事務所名や他のVtuberの名前なども当然のように話題にあがるので、一見すると何を言っているか分からないというケースも珍しくありません。

そして、開示請求を行う際は、権利侵害の理由を適切に説明する必要があります。そのため、前後の文脈も含めてその投稿がどういう内容を意味し、どういう点で権利侵害があるのかということを適切に説明することが成功のポイントになります。

(投稿者特定の場合)迅速な対応

開示請求において、経由プロバイダログ保存期間が問題になります。

投稿日から時間が経過したものについては、このログ保存期間の関係で投稿者特定が実現しない可能性が高くなります。

また、開示請求の手続を迅速に行わないと、手続きに手間取ってログ保存期間が経過してしまうというリスクもあります。

そのため、開示請求においては手続に精通している専門家による迅速な対応が不可欠です。

>>プロバイダのログ保存期間については、以下の記事でも解説しています。

「身バレ」を防いで開示請求を行うことはできるか

この点については、2023年に創設された住所、氏名等の秘匿制度」により、一定の要件の下に自身の情報を公開せずに開示請求の裁判を行うことができるようになりました。

この制度を利用することで、裁判の傍聴、記録閲覧、発信者への意見照会など各種手続きでも開示請求者の情報は公開されないことになります。

Vtuberの方が開示請求を行ううえで懸念されるのがいわゆる「身バレ」ですが、この制度を利用により法的措置に踏み切るハードルは低下したといえます。

実際、当事務所でも「住所、氏名等の秘匿制度」を利用した開示請求の実績が多くあります。

Vtuberに関する過去の開示請求の裁判例

これまでのVtuberに対する権利侵害が問題となった裁判例について紹介します。
(※プライバシー権保護の観点から、具体的な事実については抽象化しています。)

年齢に関する投稿でプライバシー権侵害が認められた事例(東京地判令和2・12・22)

Vtuberの「概ねの年齢」を「5ちゃんねる」に投稿したことで、開示請求が認められた事例です。年齢についての投稿がプライバシー権侵害に該当すると認定されました。

なお、過去にそのVtuberがテレビ番組に出演したことがあり、その際に個人情報が表示されたことがあったようですが、それは投稿日より10年も前の出来事であるとして、プライバシー権侵害の成立は否定されないと判断されています。

生育環境に結び付けた批判で名誉感情侵害が認められた事例(東京地判令和3・4・26)

「5ちゃんねる」に投稿された、Vtuberの生育環境に結び付けた形での批判について、開示請求が認められた事例です。このような批判は、単なるマナー違反等を批判する内容とは異なり、社会通念上許される限度を超えるものとして、名誉感情の侵害が認められました。

ちなみにこのケースでは、特定性(同定可能性)の問題についても言及されました。以下が、特定性の認定に当たって考慮された事情です。

  • そのVtuberの名義で活動しているのは原告のみであること
  • プロダクションがVtuberのキャラクターを製作する際には、タレントとの間で協議を行った上で、当該タレントの個性を活かすキャラクターを製作していること
  • 動画配信における音声は原告の肉声であること
  • CGキャラクターの動きについてもモーションキャプチャーによる原告の動きを反映したものであること
  • 動画配信やSNS上での発信は、キャラクターとしての設定を踏まえた架空の内容ではなく、キャラクターを演じている人間の現実の生活における出来事等を内容とするものであること

以上の各事情から、そのVtuberの活動は、単なるCGキャラクターではなく、原告の人格を反映したものであると判断されています。

ある人物の顔写真をVtuberの演者の顔であるとして公開したことにつきプライバシー権侵害が認められた事例(東京地判令和3・6・8)

「5ちゃんねる」において、ある人物の顔写真をVtuberの演者の顔であるとして公開したものについて、開示請求が認められた事例です。そのような顔写真の公開はプライバシー権侵害に該当すると判断されました。

年齢を公開したり精神障害に該当するとの投稿で、名誉毀損、名誉感情侵害、プライバシー権侵害が認められた事例(東京地判令和3・12・17)

Vtuberの年齢に関する投稿や、精神障害に該当するとの侮辱的な投稿について、開示請求が認められた事例です。このケースでは、名誉感情侵害やプライバシー権侵害のほか、Vtuberに対する名誉毀損が認められています。

精神的に不調を公表したことについて、それを揶揄するような投稿に対して名誉感情侵害が認められた事例(東京地判令和4・7・1)

精神的な不調により活動を休止していたVtuberについて、それを揶揄するような内容を「Twitter」(現在は「X(エックス」)に投稿したことが名誉感情侵害にあたるとして、開示請求が認められた事例です。

Vtuberのマネジメント会社が、Vtuberのイラストの無断転載について著作権侵害を主張した事例(東京地判令和5・9・25)

Vtuberのイラストを無断でサイトに転載したことについて、Vtuberのマネジメント会社が、そのサイトのサーバーを管理する会社に対して開示請求を行った事例です。このケースでは、イラスト転載の際に一部が切り取られていたようですが、それでも著作権侵害は認められました。

マネジメント会社がイラストレーターから著作権を譲り受けていたことから、マネジメント会社を原告として訴えを提起することができた事例です。このように、主張する権利の種類によっては、Vtuber本人でなくマネジメント会社が原告となることもあります。

まとめ

Vtuberに対する誹謗中傷の問題は比較的新しい分野ですが、従来の誹謗中傷問題と共通するところもあり、対策が可能なケースも多くあります。

当事務所では、Vtuberの誹謗中傷問題を取り扱っております。

Vtuberに対する誹謗中傷問題でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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AUTHORこの記事を書いた人

弁護士 渡辺泰央

弁護士。上智大学法学部国際関係法学科、東北大学法科大学院卒業。2010年司法試験合格。2012年弁護士登録。第二東京弁護士会所属(登録番号:45757)。 インターネットの誹謗中傷・著作権関連事件の実績多数。トレントなどのファイル共有ソフトの利用やソフトウェアの不正インストールに関するケースも数多く手掛ける。

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