何が行われる?不正インストールが疑われたときの証拠保全や立入調査【弁護士解説】
ソフトウェアの不正利用(不正インストール)の事案では、事業所への任意の立入調査や証拠保全が実施されることがあります。
いずれも事業所への立入調査ですが、実際はどのようなことが行われているか気になる方も多いと思います。
そこでこの記事では、ソフトウェアの不正利用(不正インストール)の事案における任意の立入調査や証拠保全について解説します。
この記事はこんな人におすすめ
- ソフトウェアの不正利用(インストール)があると指摘する通知が届いた方
- 任意の立入調査の要請を受けている方
- ソフトウェアの不正利用が疑われたときの任意の立入調査や証拠保全について知りたい方
>>「ソフトウェアメーカーからの」通知書への対応方法については以下の記事で解説しています。
>>「BSAからの」通知書への対応方法については以下の記事で解説しています。
任意の立入調査とは
任意の立入調査は、事業者の同意に基づいて行われる事業所への立入調査です。
ソフトウェアの利用規約に、メーカーの立入調査の権利を規定したものはありますが、それでも強制的に事業所に押し入りPCを検査・押収するような権限はありません。そのため、あくまで調査の対象となる事業者の同意が必要になります。
任意調査の要請に応じる場合は、事前にソフトウェアメーカー側と日程調整をします。また、事業に影響が出ないよう、土日や祝日に実施されることもあります。
立入調査を実施するのはあくまでメーカーの社員や代理人弁護士であって、裁判所がこれに介入することはありません。
証拠保全とは
証拠保全は、裁判所が認める立入調査です。
証拠保全が認められるためにはメーカー側が裁判所に申立を行い、事業所内での不正利用の疑いがあることを証拠によって認めてもらう必要があります。
立入調査を拒むことによる罰則などはありませんが、合理的な理由による拒否でない限りその後の裁判で不利に働く可能性が十分にあります。
証拠保全が実施される場合は、実施の1~2時間前に裁判所の担当者から連絡があります。この間に対応を検討することは非常に難しいものがありますから、証拠保全を受ける可能性がある場合には、すぐに相談できる弁護士を事前に探しておくことが重要です。
なお、立入調査の場合、メーカー側の代理人弁護士のほか、裁判官も現場に来ることが一般的です。
調査の方法はどういうものか
任意調査も証拠保全も、基本は写真撮影です。
ソフトウェアのインストール状況やMACアドレス等をモニター画面上に表示し、それを写真に収める形です。
調査は基本的に事業所内にあるすべてのPCが対象になります。
ソフトウェアにもよりますが、写真撮影はPC1台につき10分~30分程度かかりますから、調査対象のPCの台数が多い場合、調査終了までかなりの時間がかかります。
調査後の流れ
調査の結果、不正インストールの形跡が見当たらなければ、基本的にはそれ以上の追及はありません。
まれに不正インストールの形跡が見つからなかったにもかかわらず、請求を続けるメーカーもあります。しかし、証拠が見つからなかったという事実は疑われた側にとっては有利に働きます。その意味で、立入調査を受け入れることは、疑われた側にとってもメリットがある場合があります。
一方、不正インストールの形跡が見つかった場合は、それに基づいた示談交渉がなされます。この場合、不正インストールの証拠が見つかったわけですから、示談交渉を突っぱねると裁判などの法的手続に移行する可能性が高いでしょう。
当事務所では、不正インストールの通知が来たケースの対応に豊富な実績があります。
ご心配事やご相談したいことがある場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ソフトの不正インストール|示談金の額や減額の可能性について解説
ソフトウェアメーカーや、BSA、ACCSなどの団体から不正利用(不正インストール)の通知が届くというケースが多くあります。
そのような通知をきっかけに示談交渉が開始されることも多いですが、最終的に成立する示談がどのようなものになるか、気になる方も多いと思います。
そこでこの記事では、ソフトウェアの不正利用が発覚したケースでの示談金の額はどのようなものか、減額の可能性はあるのかについて解説しています。
この記事はこんな人におすすめ
- ソフトウェアの不正利用(インストール)があると指摘する通知が届いた方
- 不正利用が発覚したケースでの示談金の額の計算方法が知りたい方
- ソフトウェアの不正利用で莫大な示談金の請求を受けている方
>>「ソフトウェアメーカーからの」通知書への対応方法については以下の記事で解説しています。
示談金の計算方法
法律的には、ソフトウェアの不正インストールは著作権侵害であり、民法上の不法行為に該当します。
このときに請求される損害の項目は、以下のものが一般的です。
- 著作権侵害による損害
- 弁護士費用
- 遅延損害金
これらを順番に解説していきたいと思います。
① 著作権侵害による損害
著作権侵害による損害は、基本的には次のように計算されます。
ソフトウェアの小売価格はある程度客観的に決まっているので、示談で最も問題になるのは不正インストールの件数でしょう。
この件数は、こちらが不正インストールを認めた場合はその件数、認めなかった場合は証拠保全や任意調査で確認できた件数になることがほとんどです。(その他、不正インストールの告発をした人の情報から認定するということも考えられますが、告発した人が確たる証拠を提出していない限り、この件数で認定されることはないと思われます。)
>>ソフトウェアの不正利用に関する立入調査や証拠保全についてはこちらの記事で解説しています。
② 弁護士費用
ここでいう弁護士費用は、損害賠償請求にかかった弁護士費用です。
基本的に、裁判で認められるのは、①で認められる金額の10%です。つまり、著作権侵害による損害が100万円であれば弁護士費用は10万円となります。
実際に著作権者が弁護士に支払ったのはこれより多い金額かもしれませんが、ほとんどの裁判例では10%に限り認められていますので、示談の場面でも最終的にはこれに従って計算されることが一般的です。
③ 遅延損害金
遅延損害金は、法的には不正インストールを行ってから実際に損害賠償を支払うまで年3%で計算されます。
例えば、①著作権侵害による損害が100万円の場合、②弁護士費用は10万円になります。そして、不正インストールがあった日から実際に損害賠償を支払うまでがちょうど1年だとすると、遅延損害金は3万3000円になります。
この場合、示談金の額は113万3000円となるということになります。
金銭以外の条件
示談の際は、ソフトウェアメーカー側が示談書を提示することが一般的です。そのような示談書には金銭の支払い以外にも、以下のような条件が記載されています。
著作権者側から提示される示談書は分量がかなり多いこともあります。その文書チェックについては弁護士に依頼することも有用です。
示談金の額を減額することはできるか
不正利用していたソフトウェアが業務用の非常に高価なものである場合や、不正インストールの件数が非常に多い場合などでは、請求される金額が莫大なものになるケースも珍しくありません。
そして、示談金額は上記のとおりある程度機械的に計算されるため、示談金の額を減額することは簡単ではありません。
とはいえ、計算の根拠となった小売価格や不正インストールの件数が著作権者側にとって不当に有利に設定されていることがあります。また、そもそも著作権者側が把握している不正インストールの事実が本当に正確なものかについても争う余地はあります。
その他、長期間の分割払いを認める示談が成立することもあります。
当事務所では、不正インストールの通知が来たケースの対応に豊富な実績があります。
ご心配事やご相談したいことがある場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
発信者情報開示請求を受けたときに弁護士に依頼できる内容や費用
この記事では、発信者の方が弁護士に相談・依頼することでどんなメリットがあるか、また、そもそもどんなことを依頼できるか、費用の目安について解説しています。
① 見通しについての法律相談
開示の是非は法律に基づいて判断されますが、実際に開示が認められるかどうかはケースバイケースの判断にならざるを得ません。
投稿そのものの内容だけでなく、前後の文脈なども判断材料になるからです。
ご自身の投稿はどのくらい開示される可能性があるかを弁護士に相談することで、精度の高い見通しを立てることができます。
そして、その見通しに基づいて今後の方針を立てることができますから、現在の漠然とした不安を解消することにもつながります。
法律相談料 | 5,500円/30分あたり(税込・初回30分は無料) |
② 意見照会に対する回答書の作成依頼
開示請求を受けたとしても、発信者側にも言い分があることは多いです。
そして、こちらの言い分がしっかり伝われば非開示にできるケースも少なくありません。
ただ、開示請求が法律に基づくものである以上、それに対する反論も法的に整理されたものでなければいけません。
こちら側の言い分や証拠を雑多に出しても、裁判所はこちらの意図を十分にくみ取ってはくれません。
弁護士に回答を依頼することで、法的に整理された形でこちらの言い分を裁判所に届けることができ、非開示の判断が出る可能性を上げることができます。
また、プロバイダとのやりとりも弁護士に任せることができますので、プロバイダとのやりとりに不安があるという場合も安心できます。
当事務所では、回答書(意見書)の作成による非開示の実績が多数ございます。代表的なものは以下の記事で紹介しています。
意見書作成費用 | 着手金 | 成功報酬 |
任意請求の段階 | 165,000円~(税込) | 0円 |
裁判の段階 | 165,000円~(税込) | 165,000円(税込) |
※対象となっている投稿の数などで費用は増減することがあります。
③ 示談交渉の代理
開示の可能性が高いと判断された場合や、実際に開示されてしまった場合は、示談について検討することになります。
弁護士に示談について相談することで、示談の見通しや、示談金の相場について知ることができます。
また、示談交渉を弁護士に依頼することで、相手方とのやりとりを任せることができます。
相手方との交渉は、専門家でなければ難しいものですし、本人の負担も想像以上に大きいものです。
弁護士に交渉を任せることで、このような負担を軽くすることができます。
示談交渉の代理 | 着手金 | 成功報酬 |
132,000円~(税込) | 165,000円~(税込) |
※対象となっている投稿の数などで費用は増減することがあります。
お気軽にお問い合わせください
四谷コモンズ法律事務所では、相談に来られた方にとって最良と考えるアドバイスをご提供いたします。
弁護士がご依頼いただく必要がないと考えるときは、ご相談のみで終了することも多くあります。無理に依頼を勧めたりすることはいたしません。
現在の状況を整理するだけで、ご不安が解消することもあります。
ご心配事やご相談したいことがある場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。
開示が認められても発信者側が損害賠償請求で勝訴する可能性は?
発信者情報開示請求によって開示に成功した側は、発信者に対して損害賠償を求める通知を送ってくることが一般的です。
ここから当事者間(被害者・発信者)の交渉が始まりますが、折り合いがつかなかった場合は、損害賠償請求の裁判に発展します。
開示後の裁判で発信者側に勝つことはあるのかを解説したいと思います。
全面勝訴することは難しい
開示請求の裁判を経て開示に至った場合は、問題となった投稿について裁判所が一度「違法」と判断したものといえます。
そのため、損害賠償請求の裁判でも、基本的には「違法」と判断されることがほとんどです。
ただ、「その投稿が違法かどうか」と「損害賠償の額がいくらか」は別の問題です。
投稿内容が違法であれば開示が認められますから、極端な話、損害賠償の額が100円であっても違法は違法なので開示は認められます。(開示請求の裁判では、損害の額は判断されません。)
したがって、損害賠償請求の裁判では、投稿が違法であることを前提に、損害賠償の額を可能な限り下げる方向で争うというパターンが多いといえます。
勝訴するケースとは?
とはいえ、中には全面勝訴に成功するケースもあります。
その理由として、次の2つが考えられます。
①開示請求の段階では裁判所の判断材料が違うことがある
先ほど、勝訴が難しいとした理由を「情報の開示に至った場合は、問題となった投稿について裁判所が一度「違法」と判断した」ためと説明しました。
しかし、開示請求の段階ではの裁判所の判断材料は限定されていることがあります。
発信者の言い分は、あくまで意見照会への回答として、プロバイダを通じて裁判所に提供されるだけだからです。
そして、意見照会への回答は、時間的、物理的な制約から、発信者が十分な回答ができないケースもあります。
また、発信者への意見照会は基本的に1回限りです。
開示請求者(原告)側は、回答書に記載された発信者の主張に対して反論することができますが、これに対して発信者がさらに反論をする機会はないのです。(プロバイダによっては開示請求者(原告)側の主張が出るたびに意見照会をしてくれるところもありますが、このような対応をしてくれるのはかなり少数です。)
一方、損害賠償請求の場合は、発信者側もその言い分が尽きるまで主張することができますし、開示請求者側の反論に対してさらに反論することも可能です。
このように、開示を判断するときと、損害賠償を判断するときで、裁判所にある判断材料は変わってくることがあるのです。
②開示請求と損害賠償請求では、判断する裁判官が違う
開示と損害賠償では、基本的に判断する裁判官も違います。
ある投稿内容が違法であるかどうか微妙なケースでは、裁判官の考え方によって結論が変わることがよくあります。
また、損害賠償請求について判断する裁判官が、開示請求の段階で投稿を「違法」と判断した裁判官に忖度するということもありません。
これら2つの理由から、開示請求の裁判では違法と判断された投稿が、損害賠償の裁判では適法と判断され、全面勝訴することもあるのです。
実際、私の担当した事件でも、損害賠償の裁判で全面的に勝訴したケースがあります。
開示されてしまった後は、方針決定が重要
発信者が全面勝訴するケースもあるとはいえ、基本的には多くないといえます。
そのため、自分の情報が開示されてしまったときは、全面勝訴を目指して争うのか、それとも損害賠償の額を可能な限り低くすることを目指すのかは慎重に見極めた方がよいでしょう。
当事務所では、発信者側での発信者情報開示請求対応に多数の実績があります。
発信者情報開示請求を受けたけども対応を相談されたいという場合は、ぜひ一度お問い合わせください。
発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。
インターネットの誹謗中傷における示談の相場を弁護士が解説
インターネットの誹謗中傷案件で、犯人が特定されたという報道はしばしば目にすることがあります。
しかし、その後はどうなったのか、示談はどのように行われたのかという情報は、守秘義務の問題もありなかなか知ることができません。
そこでこの記事では、ネット誹謗中傷における示談のよくあるパターンについて説明したいと思います。
ほとんどが金銭での解決
ネット誹謗中傷案件も法的な紛争です。
法的紛争は最終的には金銭で解決することがほとんどで、ネット誹謗中傷案件も例外ではありません。
つまり、ネット誹謗中傷案件も、加害者が被害者にお金を払って示談することが一般的です。
示談金の内容は?
ネット誹謗中傷案件では、損害として請求されるのは次の2つです。
- 犯人特定にかかった調査費用(弁護士費用)
- 慰謝料
このうち、①犯人特定にかかった調査費用(弁護士費用)は、犯人特定のために弁護士に対して実際に支払った金額です。
この額については何かルールがあるわけではありません。開示請求者と弁護士との契約で決まりますから、当然、安いところもあれば高いところもあります。
相場としては、50万円から100万円程度のところが多い印象です。
②慰謝料は精神的苦痛に対して支払われるもので、ケースによって変わってきます。
示談において請求されるのは数十万から100万円程度でしょうか。(ケースによってはこれ以上の場合もあります。)
以上の①と②を合わせ、被害者側からは投稿者に対してまずは100万円から300万円の請求がなされます。
実際の示談の相場は?
とはいえ、①の調査費用はともかく、②の慰謝料は請求時には相場より大きい金額が設定されるのが一般的です。
そのため、投稿者が代理人として弁護士を依頼した場合、基本的には示談金の減額交渉がなされることになります。
示談交渉を経由すると、減額を求める理由や状況にもよりますが、最終的には20万円~100万円の間で示談がまとまることがほとんどです。
なお、示談交渉が決裂すると裁判になりますが、交渉決裂の理由のほとんどが金額に折り合いがつかなかったというものになります。
①調査費用と②慰謝料以外に請求されるものはある?
示談交渉の際は、①と②のほかに、例えば「書き込みで売り上げが下がった」として売上減少額を請求したり、「人材採用・育成費用が余分にかかった」として人材採用費用を請求するようなパターンもあります。
しかし、これらはいずれも裁判では認められづらい傾向にあります。
そのため、示談の際もこれらの支払いについて合意されることは多くはありません。
その他の条件について
インターネット上の誹謗中傷案件で示談する場合は、金額以外にも取り決められることがあります。
例えば、今回の件について一切の口外をしないとか、今後お互い一切関わらないなどです。
また、投稿者からの謝罪もありますが、これは謝罪文を送ったりすることがほとんどです。
直接面会して頭を下げる、ということが行われるケースは多くはありません。
当事務所では、投稿者、発信者いずれの立場でも、開示後の示談交渉について多数の実績があります。
発信者情報開示請求を受けたけども対応を相談されたいという場合は、ぜひ一度お問い合わせください。
発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。
発信者情報開示請求の裁判におけるプロバイダの対応や回答書について
発信者情報開示請求の裁判では、被告は発信者本人ではなくプロバイダになります。
そのため、裁判ではプロバイダが被告として一定の対応を行います。
裁判でプロバイダは発信者のためにどのような活動をしてくれるのかを解説したいと思います。
プロバイダが反論するのは「自社のため」
プロバイダは、発信者に関する情報を保有していますが、これは個人情報に該当しますし、このような情報を気軽に公開してしまうとプライバシーを侵害したとされる可能性があります。
そのため、プロバイダが最も関心があることは、「自分が個人情報保護法違反やプライバシー侵害をしたと言われないこと」です。
開示請求の裁判を起こされたとき、しっかり反論しなかったために開示を認める判決が出てしまい、情報を開示してしまいました、となれば、そのプロバイダは個人情報保護法違反やプライバシー侵害と言われる可能性が高くなります。
この理由から、プロバイダは開示請求の裁判で非開示に向けた反論を行っているのです。
発信者のための反論という要素もあるかもしれませんが、メインはあくまで「自社のため」ということは理解しておく必要があるでしょう。
プロバイダの反論には限界がある
プロバイダは開示請求の裁判でも反論はしてくれますが、限界があります。
なぜなら、書き込みの内容について、プロバイダは具体的な事情を知らないからです。
そのため、法律の解釈や過去の裁判例との比較などの反論はしてくれますが、抽象的な内容がほとんどです。
例えば、「○○部長からパワハラを受けた」という書き込みについて開示請求の裁判が起こされたとしましょう。
この裁判で反論しようとしても、プロバイダは「○○部長」がパワハラを行っていたかどうかはわかりません。
そのため、プロバイダとしては「「パワハラ」というのは抽象的な言葉であり、また感じ方も人それぞれなので、「パワハラ」という言葉だけでは違法とはいえない」というような抽象的な反論しかできないことになります。
これ以上の反論をするとすれば、「○○部長」の身辺を調査するとか、関係者に話を聴くなどの証拠収集活動が必要となるでしょうが、プロバイダがそこまでする義務はありません。
発信者が提出する回答書が重要となる
一方、開示請求を受けたプロバイダは、発信者に対して意見照会を行うこととされています。
発信者がこの回答において具体的な反論を記載し、証拠資料もつければ、プロバイダはこれを参考にできます。
少なくとも、ほとんどのプロバイダは回答書や添付された証拠を裁判の証拠として提出しています。
この理由から、意見照会書を受け取った発信者は、反論や証拠をしっかりと用意し、プロバイダに提供することが重要なのです。
なお、プロバイダによっては、発信者の回答書を裁判に提出すらしないというところもあるようなので、この点は注意する必要があるでしょう。
(個人的には、これはプロバイダの善管注意義務違反として損害賠償の対象になると考えています。)
当事務所では、発信者側での発信者情報開示請求対応に多数の実績があります。
発信者情報開示請求を受けたけども対応を相談されたいという場合は、ぜひ一度お問い合わせください。
弁護士に依頼できることや費用の目安等についてはこちらをご覧ください。
発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。
発信者情報開示請求で裁判になったときの対処法を弁護士が解説
意見照会が届き、すでにプロバイダを被告とした開示請求の裁判が起こされているとき、どのように対応すればよいかについて解説しています。
発信者情報開示請求における「裁判」とは
発信者情報開示請求は、①任意請求と②裁判という2の方法があります。
このうちの②裁判とは、次のようなものです。
開示請求者が原告となり、プロバイダを被告として情報開示の訴えを提起する方法
(※裁判のイメージ)
裁判を行うと、開示すべきかどうかを裁判所が判断します。
開示すべきという判決があれば、たとえ発信者が開示に同意していなくても、プロバイダは情報を開示します。
なお、プロバイダから意見照会が届いたということは、ログ保存期間経過によって開示を免れるというパターンには該当しないと考えて良いでしょう。
ログ保存期間について気になる方は、こちらの記事もご覧ください。
「裁判」における方針は3つ
裁判に至っていたときの開示請求の対応については、大まかに以下の3つ方針が考えられます。
- 不同意(拒否)の回答をご自身で行う
- 不同意(拒否)の回答を弁護士に依頼して回答を行う
- 開示に同意し、示談交渉に入る
※ 無視するという方針も考えられますが、これは「拒否(不同意)であって理由の記載がないもの」として扱うプロバイダがほとんどです。
「裁判」の場合、方針はどう決めればよいか
① 不同意(拒否)の回答をご自身で行うケース
次の項目が当てはまる方は、①の方針をとることになるでしょう。
- 投稿内容が違法でないとする根拠や証拠がある方
- ご自身で適切な回答を行う自信がある方
- プロバイダとのやりとりを負担に感じない方
- プロバイダの代理人の活動で十分と考える方
- 弁護士に依頼する費用を負担に感じる方
- 開示が認められるまでの時間を延ばしたい方
この方針をとるにあたっては、注意点もあります。
それは、非開示を目指すためにはあくまで法的に整理された反論を行わなければならないという点です。
こちら側の言い分や証拠を雑多に出しても、裁判所はこちらの意図を十分にくみ取ってはくれません。
また、プロバイダの代理人の活動は下の記事で解説していますが、やはり限界はあります。
そのため、非開示を目指すのであれば、ご自身で回答を行うことはあまりおすすめしません。
② 不同意(拒否)の回答を弁護士に依頼して行うケース
次の項目が当てはまる方は、②の方針をとることになるでしょう。
- 投稿内容が違法でないとする根拠や証拠がある方
- ご自身で適切な回答を行う自信がない方
- プロバイダとのやりとりを負担に感じる方
- 万が一開示されたとしても相手方との交渉をはじめから代理人に依頼したい方
非開示を目指すためには、こちらの方針をおすすめします。
また、万が一開示されても、基本的に相手方とのやりとりを引き続き代理人に任せることができるため、ご自身が直接やりとりをするストレスはありません。
③ 開示に同意し、直接の示談交渉に入るケース
次の項目が当てはまる方は、③の方針をとることになるでしょう。
- 開示がほぼ確実に見込まれる方
- 開示されるかどうか不確定な状況に強いストレスを感じる方
- 紛争をできる限り早く終わらせたい方
- 示談交渉を代理人に依頼したい方
この方針をとるときに注意しなければならないことは、一度開示してしまうと後戻りはできないということです。
また、相手とのやり取りは法律に基づく交渉になるため、この方針をとることを考えている場合でも、事前に一度弁護士に相談されることをお勧めします。
開示訴訟に至っていたときの対処法は以上のとおりですが、どの対応がベストかはやはり一人ひとり結論は違ってきます。
ご自身のケースについて相談されたい方は、弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士に依頼できることや費用の目安等についてはこちらをご覧ください。
発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。
発信者情報開示請求が任意請求だったときの対処法を弁護士が解説
意見照会が届いたけれども、まだ開示請求が任意請求の段階であるとき、どのように対応すればよいかについて解説しています。
任意請求とは
発信者情報開示請求は、①任意請求と②裁判という2の方法があります。
このうちの①任意請求とは、次のようなものです。
開示請求者がプロバイダに対して情報の開示を直接請求する方法
(※任意請求のイメージ)
任意請求は、「発信者情報開示請求書」というも書類をプロバイダに送付する方法で行われることが一般的です。
任意請求に対して開示すべきかどうかはプロバイダが判断することになります。
任意請求がなされる理由
任意請求については、開示に同意するという回答をしない限り、プロバイダの判断で開示するという可能性は非常に低いです。
裁判所の「お墨付き」があるわけではないからです。
とはいえ、開示請求をする側にとっても任意請求を行う理由があります。これについて気になる方はこちらの記事をご覧ください。
なお、プロバイダから意見照会が届いたということは、ログ保存期間経過によって開示を免れるというパターンには該当しないと考えて良いでしょう。
ログ保存期間について気になる方は、こちらの記事もご覧ください。
「任意請求」における方針は3つ
任意請求への対応については、方針はおおまかに3つあります。
- 不同意(拒否)の回答をご自身で行う
- 不同意(拒否)の回答を弁護士に依頼して行う
- 開示に同意し、示談交渉に入る
※ 無視するという方針も考えられますが、これは「拒否(不同意)であって理由の記載がないもの」として扱うプロバイダがほとんどです。
任意請求の場合、方針はどう決めればよいか
① 不同意(拒否)の回答をご自身で行うケース
次の項目が当てはまる方は、①の方針をとることになるでしょう。
- ご自身の情報の開示を望まない方
- 開示が認められるまでの時間を延ばしたい方
先述のとおり、任意請求の段階では発信者が開示に同意しない限りプロバイダが情報を開示する可能性は非常に低いです。
この時点では、プロバイダにとっては開示に同意したかどうかが最も重要ですから、同意しない理由について必ずしも精密なものが要求されているわけではないように思われます。
そのため、この段階ではご自身で回答を行うことで足りるケースも多いと考えます。
ご自身で回答を行う場合は、下記の記事もご参照ください。
なお、プロバイダが情報を開示しないという決定をすると、その旨は開示請求者に通知されます。
この通知を受けて、開示請求者はプロバイダを相手として裁判をするかどうかを判断しますが、裁判となった場合、改めて意見照会を送ってくるプロバイダがほとんどです。
そのため、裁判になった段階で弁護士に依頼しても、しっかりとした反論を行うことはできます。
ただし、プロバイダによっては、「任意請求の段階で意見照会を行っている以上、裁判の段階では改めて意見照会は行わない」という運用のところもあります。
そのため、①の方針をとる場合は、プロバイダに問い合わせ、「裁判の段階で改めて意見照会をするか」を確認しましょう。
このような問い合わせができない場合は、回答書のどこかに下記の一文を加えることをお勧めしています(ただし、これによって必ず裁判の段階で改めて意見照会が送付されることを保証するものではありません)。
本開示請求が裁判に発展した際は専門家に相談の上回答する予定ですので、その際は改めて意見照会書をお送りいただきますようお願いいたします。
② 不同意(拒否)の回答を弁護士に依頼して行うケース
次の項目が当てはまる方は、②の方針をとることになるでしょう。
- ご自身の情報の開示を望まない方
- 早い段階で弁護士に反論を作成してもらいたい方
- 今ある情報でも反論が十分可能な方
- プロバイダとのやりとりを負担に感じる方
- 万が一開示されたとしても相手方との交渉をはじめから代理人に依頼したい方
弁護士に依頼することで、法的に整理された回答を行うことができます。
また、プロバイダとのやり取りも弁護士に任せることができますので、対応の負担を軽くすることができます。
ただ、この時点では開示請求について情報が十分でない場合も多いです。
裁判に至っていれば、記録閲覧を行うことで情報を得ることができますが、この段階では今ある情報に基づいて回答を作成せざるを得ません。
そのため、この段階で弁護士に回答を依頼するケースは多くはないといえます。
③ 開示に同意し、直接の示談交渉に入るケース
次の項目が当てはまる方は、③の方針をとることになるでしょう。
- 開示がほぼ確実に見込まれる方
- 開示されるかどうか不確定な状況に強いストレスを感じる方
- 紛争をできる限り早く終わらせたい方
- 示談交渉を代理人に依頼したい方
この方針をとるときに注意しなければならないことは、一度開示してしまうと後戻りはできないということです。
また、相手とのやり取りは法律に基づく交渉になるため、この方針をとることを考えている場合でも、事前に一度弁護士に相談されることをお勧めします。
任意請求だったときの対処法は以上のとおりですが、どの対応がベストかはやはり一人ひとり結論は違ってきます。
ご自身のケースについて相談されたい方は、弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士に依頼できることや費用の目安等についてはこちらをご覧ください。
発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。
任意請求とは?任意請求が行われる理由を3つに分けて解説
発信者情報開示請求は、任意請求と呼ばれる方法で行われることがあります。
この記事では、任意請求が行われる理由について解説しています。
任意請求とは
発信者情報開示請求は、①任意請求と②裁判という2の方法があります。
このうちの①任意請求とは、次のようなものです。
開示請求者がプロバイダに対して情報の開示を直接請求する方法
(※任意請求のイメージ)
任意請求の場合、発信者が開示に「同意する」と回答をしない限り、プロバイダの判断で情報が開示される可能性はほとんどありません。
それでも、任意請求は頻繁に行われています。
任意請求がなされる理由3つ
任意請求が行われる理由は、大きく分けて以下の3つが考えられます。
①発信者へのけん制
発信者情報開示請求を受けたプロバイダは、基本的には発信者に対して意見照会を行います。
ドコモやKDDIなどの経由プロバイダは、意見照会を手紙で行いますので、発信者には意見照会書が郵送で届きます。
これは、発信者にとってはかなりのインパクトがあります。
自分は匿名に守られているという認識から、自分の情報が開示される可能性があるという意識に変わるからです。
そのため、意見照会書を受け取ると、ほとんどの発信者はそれ以上の投稿をやめます。
また、投稿やアカウント自体が削除されることも多くあります。
実際にプロバイダに対して裁判をしなくてもこのけん制は可能ですので、これを狙って任意請求が行われることがあります。
②ログ保存
各経由プロバイダには通信ログを保存する期間があり、その期間を経過するとログが消えてしまします。
ログが消えると、最終的に発信者を特定することが極めて困難になります。
そのため、開示請求側としては、プロバイダにログの保存を依頼することが必要になります。
このログ保存は、プロバイダに対する任意(開示)請求でも達成できることが多くあります。
ログが消えてしまうのを防ぐため、まずはプロバイダに対して任意請求を行うことがあります。
なお、ログ保存に成功した後は、裁判に移行することになります。
ログ保存期間について詳しくは以下のページで解説しています。
③発信者の同意狙い
意見照会書が届いた段階で、開示に同意する方も一定数います。
その理由としては様々なものが考えられますが、早めに示談交渉に入り紛争を終わらせることを希望するパターンが多い印象です
開示請求者としては、プロバイダに対する裁判を行わずに発信者の情報が得られるため、ラッキーなパターンといえるでしょう。
同意する発信者も少なからず存在しますから、まずはプロバイダに対して任意請求を行うということも行われています。
他にも任意請求を行う理由は考えられますが、大きい理由は上記の3パターンといえます。
開示請求について相談されたい方は、ぜひ一度当事務所までご相談ください。
意見照会書とは?身に覚えがない場合や回答期限について解説!
自分の投稿について発信者情報開示請求がなされると、プロバイダから意見照会書というものが届きます。
この記事では、意見照会とはなにか、また、意見照会書でまず確認すべきことを解説しています。
なお、BitTorrent(トレントなどのファイル共有ソフトの使用に関して意見照会書を受け取った方は、こちらの記事もご覧いただければと思います。
また、BitTorrent(トレント)などのファイル共有ソフトの使用に関して過去の逮捕事例はこちらで紹介しています。
意見照会書とは
意見照会書とは、発信者情報開示請求を受けたプロバイダが発信者に意見を聞くために送る書類です。
この書類で聞かれる意見は、次の2つです。
- 開示に同意するかどうか
- 開示に同意しない(拒否)場合はその理由
これが届いたということは、ご自身の投稿(又はご自身が契約しているネット回線を使って行われた投稿)について、誰かが開示請求をしているということを意味します。
投稿に身に覚えがあるかを確認
まず、開示請求の対象となっている投稿に身に覚えがあるかを確認しましょう。
心当たりがあるケースがほとんどだと思いますが、全く身に覚えがない投稿について意見照会書が届いたというケースも珍しくはありません。
投稿について身に覚えがない場合や、自分以外が投稿していると考えられる場合の対処法については、次の記事で解説しています。
「任意請求」か「裁判」かを確認
次に確認するべきは、今回の発信者情報開示請求が、①任意請求なのか②裁判なのかです。
開示請求者がプロバイダに対して情報の開示を直接請求する方法
開示請求者が原告となり、プロバイダを被告として情報開示の訴えを提起する方法
発信者としては、今回の開示請求が①と②のどちらの方法でなされているのかを知ることが重要です。
区別の方法
この区別は、意見照会書の1枚目(表紙)を見ることでわかる場合が多いです。
裁判の場合はそのことが明記されていることがほとんどです。
【裁判の場合の記載例】
一方、任意請求の場合は裁判のような記載はありません。
【任意請求の場合の記載例】
もっとも、プロバイダによっては、裁判になっていることを明記しないところもあります。
そのため、【任意請求の場合の記載例】の場合でも、念のため直接プロバイダに問い合わせることが確実といえます。
①任意請求だった場合の考え方
任意請求の場合、開示に「同意する」という回答をしない限り、プロバイダの判断で情報を開示する可能性はほとんどありません。
拒否の理由についても、プロバイダに非開示の決定をしてもらうためであれば必ずしも詳細なものを作る必要はありません。
ご自身の情報を開示されることを望まない方がほとんどだと思いますので、この段階では「同意しない」(拒否)という回答になることが多いでしょう。
もっとも、早期に解決したい場合など、この段階で同意して示談交渉に入ることもあります。(このあたりの方針は、投稿内容は発信者の意向次第で決まります。)
この①任意請求であったときの対応については、以下の記事をご覧ください。
②裁判だった場合の考え方
開示請求者が訴えを提起している場合は、いくら開示に同意しないと回答しても、裁判所が開示を認める判決を出せば、プロバイダはそれに従います。
そのため、投稿内容が違法でないことを主張したい場合は、意見照会への回答は法的にしっかりとした内容とする必要がありますし、証拠もあれば添付しなければいけません。
しかし、投稿内容によってはいくら反論しても開示は免れないというケースもあります。
この場合は、開示に同意してすぐに示談交渉に入ることが検討されます。
この②裁判であったときの対応については、以下の記事をご覧ください。
回答期限を確認する
回答期限はどのようなものか
意見照会書が届いたら、回答期限も必ず確認しましょう。
意見照会書が届いてから2週間以内とするプロバイダがほとんどですが、1週間とするプロバイダも一部存在します。
1~2週間という期限は、実際はかなり短いといえます。
弁護士に相談したり回答書を作り出すタイミングは出来る限り早い方がよいでしょう。
ただ、連絡をすれば期限の延長を認めるプロバイダがほとんどですから、まずは焦らず対応することが必要です。
回答期限を過ぎたらどうなる
何も回答せず回答期限を過ぎてしまうと、意見照会を無視したという扱いになります。
この場合、情報開示の手続きに発信者側の意思が全く反映されないため、基本的には不利になるといえます。
回答期限前に期限の延長を依頼すれば応じてくれるプロバイダが多いですから、期限前までに専門家に相談のうえ何らかの対応をすることをお勧めします。
当事務所では、発信者側での発信者情報開示請求対応に多数の実績があります。
発信者情報開示請求を受け、対応を相談されたいという場合は、ぜひ一度お問い合わせください。
弁護士に依頼できることや費用の目安等についてはこちらをご覧ください。
発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。