「ある企業でソフトウェアの不正インストールが行われていた」という報道をしばしば目にすることがあります。
このような報道の件数自体はそれほど多くはありませんが、実際にはかなりの数の企業が不正インストールに関する通知を受けています。
しかも、不正インストールの通知を受けた企業のほとんどが
・ 社内で不正インストールが行われているとは知らなかった
・ 適法なインストールを行っていたと思っていた
と考えていました。
あえて不正な行為をしようと考えていたケースは、実は多くはないのです。
しかし、これは裏を返せば、”どの企業も不正インストールの通知を受ける可能性がある”ということを意味します。
そこで今回は、決して他人事ではない不正インストールの通知についてまとめてみます。
通知はある日突然に
不正インストールの通知は、何の前触れもなく到達します。
そのような通知は、たいていBSAやACCSなどの著作権保護団体の代理人弁護士名義で送付されます。
(もちろん、ソフトウェア企業から送付されるケースもあります。)
全く身に覚えのないケースでは、いたずらと勘違いすることもありますが、法的な請求を放置すると取り返しのつかないことになることもありますから、これが届いたときの対応は慎重に行いましょう。
通知のきっかけのほとんどは内部通報
各ソフトウェア企業も不正インストールの防止・発見に力を入れていますが、法的な通知がなされるケースでは、ほとんどが内部通報をきっかけとしています。
そして、当然ですが、通報の秘密は固く守られています。通知を送ってきた側が、誰が通報したのか、どのような内容の通報であったのかを教えてくれることはありません。
それに加え、BSAなどの著作権保護団体は、通報に対して報奨金を出していることもあります。
つまり、通報のハードルは決して高くありません。
そのため、少しでも不正の疑いのあるインストールがなされると、簡単に通報から法的通知に発展してしまうことがあるのです。
主なペナルティは、損害賠償
不正インストールが実際になされたとき、著作権保護団体やソフトウェア企業から損害賠償を請求されます。
この損害賠償は、不正インストールされたソフトウェアの価格を基準に計算されます。
しかし、業務用のソフトウェアは高額ですし、インストール件数が多いとその分だけ加算されますから、損害賠償額は簡単に膨れ上がります。
しかも、この損害賠償は、後から正規のソフトウェアを買ったからといって免れるものではありません。
企業の存続を揺るがすレベルの損害賠償請求がなされることも珍しくありませんから、決して甘く見るべきではないでしょう。
(なお、不正インストールは著作権侵害行為ですから、刑事罰が科されることもあります。)
不正インストールの通知を受けないために
ひとたび不正インストールの通知を受けたとき、これへの対応は相当な労力が必要になります。
そのため、不正インストールの通知を受けないための対策をとっておくことが重要です。
特に次の2点が重要です。
1.購入したソフトウェアの管理
”購入したライセンス数以上の台数をインストールしてしまっていた”というのが不正インストールの典型的なパターンのひとつです。
また、”正規に購入したはずなのに、資料をなくしてしまい正規に購入したことを証明できなくなった”というのもしばしばみられます。
そのため、購入したソフトウェアのライセンス数はしっかり確認し、また購入した記録はしっかり残しておくなど、ソフトウェアの管理は適切に行っておきましょう。
2.社内PCの管理
社員が無断で不正インストールを行っていたという事例も多くみられます。
このようなケースでは、不正インストールの通知を受けて初めて会社がその事実を知ることになります。
しかし、”社員が勝手にやったことだから”という理屈で会社の責任が免れる可能性は極めて低いものです。
そのため、社内PCに関してはソフトウェアのインストールを制限するとか、定期的にインストールされたソフトウェアをチェックするなど、社内PCの管理を行っておくことが重要です。
不正インストールのリスクはどの企業にもあり得るもので、しかもそれによるダメージは甚大なものになります。
しかし、少しの工夫でリスクを回避することも可能ですから、この機会に一度、自社のソフトウェア管理について再確認されてみてはいかがでしょうか。
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