発信者情報開示の照会に対して拒否の回答をしたいと考えたとき、拒否の理由には何を書けばいいか分からないということがよくあります。
どのような理由を書けばよいのかはケースによってまちまちですが、よく候補としてあげられる理由と、それが法律的にどの程度(開示を回避できる)効果があるかを以下で簡単に解説してみたいと思います。
なお、意見照会が届いたときまず初めにやるべきことは、こちらにまとめています。
1.知らない、身に覚えがない
残念ながら、あまり有効な反論とはいえません。
開示請求の対象になるのは、”誰が投稿したか”ではなく”投稿に使われたプロバイダの契約者の情報”だからです。そのため、”権利を侵害するような投稿がそのプロバイダ経由で投稿された”ということが証明されれば、その契約者の情報の開示が認められることになります。
同じ理由で、「端末(携帯やPCなど)を他の人に貸していた」という理由も、あまり有効とはいえません。
2.ネットに書かれていたものをコピペしただけ
これもあまり有効な理由にはなりません。
コピペされたもの(元の投稿)が他人の権利を侵害するものであれば、コピペしたことでその権利侵害を更に助長させていると判断されるからです。
3.投稿した内容は、ネットでみんなも言っている
こちらも有効な理由とはいえません。
名誉を毀損するような内容の投稿は、仮に「それが真実と信じるについて相当の理由」があれば、違法性がなくなる余地はあります。しかし、ネットの情報、特に匿名掲示板などの情報を鵜呑みにするようなときは、この「相当の理由」があるとは認められ難いからです。
4.匿名の投稿なんて誰も信じない
有効な理由とはいえません。
刑事の事件ではありますが、このような考えを明確に否定した最高裁判例も存在します。
5.自分の思ったこと(主観)を書いただけ
こちらは有効な理由になり得ます(開示の理由が名誉毀損の場合)。
「料理が口に合わなかった」とか「自分には効果が感じられなかった」というような投稿は正当な表現の自由の範囲内になるからです。
ただし、いくら主観的な内容だからといって、真実でない内容に基づくものは、正当な表現とはいえません。(例えば、「古い食材を使っているので、料理がマズイ」と投稿したが、実際は古い食材は使っていないような場合)また、あまりに攻撃的な表現の場合は、いくら自分が思ったことでも、正当な表現とならないこともあります。注意しましょう。
6.誰を指している投稿か分からない
名誉毀損やプライバシー権侵害が開示請求の理由となっている場合、有効な理由になり得ます。
その投稿を読んだ他の人が、誰のことを指したものかを理解できなければ、名誉毀損やプライバシー権侵害は成立しません。
もっとも、イニシャルや伏字になっている場合であっても、前後の内容から誰を指しているか理解できるような場合はダメですので、その点は注意しましょう。
7.投稿した内容は真実である
開示請求の理由が名誉毀損の場合、これが最も有効な理由になることがあります。
ただ、何の根拠もなく「真実だ」と言っても裁判では認められないので、真実であることを示すような資料を添付し、回答しましょう。
いかがでしたでしょうか。
具体的に何が有効な反論になるかはケースによりますし、実際に回答する際は法律を意識して書く必要もあります。また、書類を添付する場合はどのようなものがふさわしいか、という問題もあります。
特に丁寧な検討が必要になるケースとしては、次のようなものがあります。
・ 勤務中の会社の悪口を書いてしまった
(「セクハラ、パワハラがある。」「ブラック企業!」など)・ 商品やサービスについてネガティブなレビューを投稿した
・ 利用したお店のスタッフの悪口や私生活を書いてしまった、など
これらに当たる場合はもちろん、当たらない場合であっても、実際に回答する際にはなるべく専門家に相談しましょう。
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