口コミやレビュー、感想の投稿で発信者の情報は開示されるのかを解説
ネガティブな口コミについて、開示請求をしたいと考える方も多いと思います。
また、発信者情報開示請求(意見照会書)が届いたけれども、自分は感想を述べただけと主張したい発信者の方もいらっしゃると思います。
この記事では、口コミ、レビュー、単なる感想の書き込みが開示請求の対象になるかを解説しています。
原則として開示は認められない
結論からいえば、口コミ、レビュー、単なる感想の投稿については、それがネガティブなものであっても原則として開示の対象とはなりません。
仮に開示されるとすれば、「味付けが辛くて自分には合わなかった」というレストランのレビューや、「売上の数字が何より大事と考える社風が私は好きではありませんでした」といった転職情報の口コミまで開示の対象となってしまい、不都合といえるでしょう。
ネガティブな投稿であっても、それが正当なものである限り社会にとっては必要な情報と考えられています。
裁判では、このような投稿の開示を否定する理屈として「そのような感想を持つ人がいるという印象を受けるにとどまり、必ずしも社会的な評価が下がるわけではない」といった説明がされたりします。
開示が認められるパターンは2つ
とはいえ、例外的に発信者情報開示が認められることはあります。
口コミやレビュー、単なる感想の投稿が開示が認められるケースは、大きく分けて2パターンあります。
① 嘘の内容を含むもの
② 必要以上に攻撃的・侮辱的な表現でなされているもの
① 嘘の内容を含むもの
例えば、「食材が腐っており味がまずい」とか「残業代を払わないので転職先としておすすめしません」などの投稿は、口コミや感想を内容とします。
しかし、「食材が腐っている」や「残業代を払わない」という内容が嘘の場合、いくら口コミや感想だとしても開示請求は認められます。
このようなケースは、評価の前提が誤っており正当なものとはいえないからです。
② 必要以上に攻撃的・侮辱的な表現でなされているもの
例えば、「こんな料理を出すなんて、シェフは脳に障害を持ったキ●ガイですねw」という投稿は、確かに投稿者がそう思ったのかもしれません。
しかし、料理を質を批判するためにここまで強い表現を使う必要はないですし、シェフの方の人格を傷つけるものといえます。
このような投稿は、たとえその人の感想だとしても、開示請求は認められるでしょう。
口コミやレビューを投稿する際の注意
口コミやレビューの対象は商品やサービスであり、ひとつの投稿が売上に大きな影響を与えることは珍しくありません。
そのため、事業者は、消費者側が思っている以上に口コミやレビューに対して敏感です。
したがって、法的な結論はともかく、ネガティブな口コミやレビューをめぐってトラブルになることは非常に多くあります。
無用なトラブルを避けるため、ネガティブな口コミやレビューの投稿の際は過激な表現にならないようにしましょう。
また、実際に利用したことを証明しなければならないこともありますから、利用したことがわかる記録は残しておくことが無難です。
トラブルが発生すること自体がマイナスであるといえますから、ネガティブな口コミやレビューを投稿する際には、それなりの注意を払うことをおすすめします。
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【発信者側必見】発信者情報開示請求を拒否する理由と4つの書き方を解説
発信者情報開示の照会に対して拒否の回答をしたいと考えたとき、拒否の理由の書き方分からないということがよくあります。
どのような理由を書けばよいのかはケースによってまちまちですので、この記事は、拒否の理由の書き方をまとめ記事です。
>>トレント(torrent)の使用で開示請求を受けたケースについては、こちらの記事で解説しています。
まずは「侵害された権利」の確認
開示請求に対して反論するためには、まず相手がどんな権利が侵害されたと主張しているかを確認する必要があります。
これは、意見照会書の「侵害された権利」の欄に書かれています。

なお、名誉権と書かれている場合は名誉毀損を意味します。
また、「人格権」と記載されていることがありますが、人格権は名誉権(名誉毀損)、プライバシー権、肖像権などを含む概念です。
そのため、人格権と書かれている場合は、「権利が明らかに侵害されたとする理由」の欄を見ないと、どの権利の侵害を言われているのかはわかりません。
「侵害された権利」別 書き方まとめ
名誉毀損の場合
「侵害された権利」に名誉権(名誉毀損)と書かれているときの書き方については、以下の記事で解説しています。
プライバシー権侵害の場合
「侵害された権利」にプライバシー権と書かれているときの書き方については、以下の記事で解説しています。
著作権侵害の場合
「侵害された権利」に著作権と書かれているときの書き方については、以下の記事で解説しています。
名誉感情侵害の場合
「侵害された権利」に名誉感情侵害と書かれているときは、名誉感情権侵害が成立しないことを拒否の理由に記載する必要があります。
名誉感情侵害かどうかは、「社会通念上許される限度を超える侮辱行為」といえるかどうかで判断されます。
かなりあいまいな基準ですが、前後の文脈なども考慮されることは間違いありません。
名誉感情侵害に対して反論したいと考える場合は、こちらも言い分がある場合も多いと思いますから、投稿に至った経緯などを説明することも有効と思われます。
名誉感情侵害の主張に対する反論の例
○○氏は、これまで●●の話題について、他者を煽るような発言を繰り返していました。そのため、○○氏は批判を受けるリスクを受け入れていたといえます。
また、私の投稿は、○○氏の不適切な発言を批判し、いさめるために行ったものです。
それまでの経緯に照らすと、私の発言は「社会通念上許される限度を超える」とはいえないと考えます。
拒否理由としてよく候補としてあげられるものとその効果
よく候補としてあげられる理由と、それが法律的にどの程度(開示を回避できる)効果があるかを以下にまとめます。
知らない、身に覚えがない
残念ながら、あまり有効な反論とはいえません。
開示請求の対象になるのは、”誰が投稿したか”ではなく”投稿に使われたプロバイダの契約者の情報”だからです。
そのため、”権利を侵害するような投稿がそのプロバイダ経由で投稿された”ということが証明されれば、その契約者の情報の開示が認められることになります。
同じ理由で、「端末(携帯やPCなど)を他の人に貸していた」という理由も、あまり有効とはいえません。
身に覚えのない発信者情報開示請求(意見照会書)が届いたときの対処法については、こちらの記事で解説しています。
ネットに書かれていたものをコピペしただけ
これもあまり有効な理由にはなりません。
コピペされたもの(元の投稿)が他人の権利を侵害するものであれば、コピペしたことでその権利侵害を更に助長させていると判断されるからです。
投稿した内容は、ネットでみんなも言っている
こちらも有効な理由とはいえません。
名誉毀損の場合、仮に「それが真実と信じるについて相当の理由」があれば、違法性がなくなる余地はあります。
しかし、ネットの情報、特に匿名掲示板などの情報を鵜呑みにするようなときは、この「相当の理由」があるとはほぼ認められないといえます。
匿名の投稿なんて誰も信じない
有効な理由とはいえません。
刑事の事件ではありますが、このような考えを明確に否定した最高裁判例も存在します。
自分の思ったこと(主観)を書いただけ
こちらは有効な理由になり得ます(開示の理由が名誉毀損の場合)。
「料理が口に合わなかった」とか「自分には効果が感じられなかった」というような投稿は正当な表現の自由の範囲内になるからです。
ただし、いくら主観的な内容だからといって、真実でない内容に基づくものは、正当な表現とはいえません。(例えば、「古い食材を使っているので、料理がマズイ」と投稿したが、実際は古い食材は使っていないような場合)また、あまりに攻撃的な表現の場合は、いくら自分が思ったことでも、正当な表現とならないこともあります。注意しましょう。
口コミやレビューで名誉毀損が認められるかどうかは、こちらの記事で詳しく解説しています。
大まかな説明は上のとおりですが、具体的に何が有効な反論になるかはケースによりますし、実際に回答する際は法律を意識して書く必要もあります。
また、書類を添付する場合はどのようなものがふさわしいか、という問題もあります。
当事務所では、発信者側での発信者情報開示請求対応に多数の実績があります。発信者情報開示請求を受けたけども対応を相談されたいという場合は、ぜひ一度お問い合わせください。
弁護士に依頼できることや費用の目安等についてはこちらをご覧ください。
発信者情報開示請求について、発信者側の解説記事についてはこちらをご覧ください。
ネットショップの契約が成立するタイミングはいつ?トラブル防止策も解説
ネットショップを運営していると、契約関係がなかなか理解しづらいこともあると思います。
そこで今回は、ネットショップの契約関係について、少し整理してみましょう。
契約が成立するタイミングは?
お客さんからの注文に対して、ネットショップ側が送る「承諾しました」という内容のメールがお客さんに届いた時点です。
必ずしもお客さんがそのメールを開いて読む必要はありません。
お客さんのメールボックスに入った時点で、契約は成立します。
なお、ネットショップ側で送ったメールが文字化けしていた場合など、「承諾しました」という内容のメールが読み取りできない状態の場合は、契約は成立しません。
自動返信メールでも契約は成立する?
多くのネットショップでは、注文すると自動返信メールが送られることがあります。
これによって契約が成立するかは、そのメールに書かれている内容によります。
そのメールに「ご注文を承りました」といったような内容が書かれていれば、契約は成立します。
そのような内容が書かれておらず、単に「注文内容の確認」のメールであれば、契約は成立しません。
契約が成立するとどうなる?
ネットショップ側は商品を渡す義務が、お客さん側はお金を払う義務が生まれます。
契約が成立した後は、両者が契約に縛られますから、基本的に商品や金額を変更したり返品やキャンセルすることはできなくなります。
契約は早めに成立させた方が有利?
必ずしもそうとはいえません。
契約が成立すると、ネットショップ側も法的に縛られます。
そのため、契約を成立させた後に、商品の金額を間違えて設定していたことや、商品の在庫がないことが判明してしまうと、契約不履行になる可能性もあるのです。
そのため、自動返信メールに「承諾」の内容を入れ込むことが必ずしも良いとはいえません。
お客さんとのトラブルを防止するには?
「承諾した」という内容のメールは、こちらが問題なく商品を渡せるようになってから送るべきでしょう。
ネットショッピングの場合、お客さんから注文があったからといって、必ず契約しなければならない訳ではありません。
そのため、受注にあたって在庫の確認や審査等が必要な場合、それをクリアしてから「受注した」という内容のメールを送っても大丈夫です。
もっとも、「承諾した」という内容のメールをなかなか送らないのもトラブルの原因になりますから、こちらが問題なく商品を提供できるようになったらすぐにメールを送りましょう。
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【ネットショップ側】ショップ開設にあたって、気を付けるべき法律は?
【ネットショップ側】広告規制の考え方
【ネットショップ側】注文をキャンセルしたいと言われたら?
ネットショップと広告規制の関係性とは|気をつけるべき消費者保護法を解説
あまり意識することはないかもしれませんが、ネットショップと”広告規制”は切っても切れない関係にあります。
そこで今回は、ネットショップにまつわる広告規制についてまとめましょう。
ネットショップのページは「広告」にあたる
ネットショップの各ページは、基本的に「広告」にあたります。
(その意味で、「広告」という言葉の意味とは少しズレるかもしれません)
そのため、商品紹介ページのほか、トップページ、ランディングページ、注文確定ページに至るまで、すべてのページは「広告」にあたると考えましょう。
気を付けたい「消費者保護法」
”広告規制”を定めている法律はひとつではありませんが、消費者保護法は特に重要です。
消費者保護法はBtoCの取引に適用されるもので、この法律にも”広告規制”は定められています。
次の内容について、規制があります。
・広告に嘘を書くこと
・不確定なことについて断定すること
・お客さんにとって不利益になることを故意に伏せること など
これらに違反すると、お客さんは契約をキャンセルできることがあります。
せっかく商品が売れたのに、広告の記載が不適切なためにキャンセルされてしまうとなると、ショップ側の思わぬ損失につながります。
契約のキャンセルは直接的な損害ですから、消費者保護法の規制は特に気を付けるべきでしょう。
一般的なルールを定めた「特商法」と「景表法」
ネットショップで問題となる”広告規制”を定めたものに「特商法(特定商取引に関する法律)」と「景表法(不当景品類及び不当表示防止法)」があります。
これらは、広告に関する一般的なルールを定めたもので、いわゆる誇大広告を禁止しています。
嘘を載せるのは論外ですが、あまりに誇張した表現を使っていたり、偏った条件で他社商品と比較したりすることも、これらの法律に違反する可能性があります。
販売する商品によって”広告規制”があるもの
販売する商品によっては、特別に”広告規制”があるものもあります。
例えば、医薬品を販売するときは薬事法、株や証券など金融商品を販売するときは金融商品取引法などです。
このように、特別な”広告規制”があることがありますので、販売する商品に”広告規制”はないか、販売前に念のため確認してくのが無難でしょう。
”攻める”広告は一度チェックを
ネットショップにおいては、インパクトのある商品説明など、”攻める”内容を掲載することも必要な場合もあると思います。
”攻める”広告自体は禁止されるものではありませんが、やりすぎると法律違反になる可能性もありますから、少しでも広告したい表現に気になる内容があるときは、専門家にチェックしてもらうのが良いでしょう。
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【ネットショップ側】ショップ開設にあたって、気を付けるべき法律は?
【ネットショップ側】契約はいつ成立する? 契約成立するとどうなる?
【ネットショップ側】注文をキャンセルしたいと言われたら?
自社のアプリの著作権侵害警告書・通知書とは|基準や損害賠償について解説

自社がリリースしたアプリが、他社のアプリをパクった(著作権侵害がある)として警告書(通知書)が来ました。どう対応すればいいですか?

相手が「著作権侵害がある」と主張する根拠は何か確認しましょう。共通部分がそもそも認められない場合や、「全体の雰囲気が何となく似ている」程度では著作権侵害は成立しません。

確かに共通部分はありますが、相手方のアプリなんて初めて知りましたし、参考にもしていません。このような場合でも、著作権侵害になってしまうのでしょうか?

いいえ、著作権侵害にはなりません。
著作権侵害が成立するためには、既にある作品に「依拠(基づくこと)」が必要ですから、偶然同じものが出来たとしても著作権侵害は成立しません。この「依拠」に関しては、どの程度似ているのか、相手方のアプリはどの程度有名か、といった事情のほか、アプリ作成の時期などから判断されます。

既存のアプリを参考にしていたので、共通する部分がありました。こちらは著作権侵害になってしまいますか?

必ず著作権侵害になるわけではありません。
共通部分が「ごくありふれた表現」であったり「アイデア」に過ぎない場合は、著作権侵害になりません。

「ごくありふれた表現」の具体例はどのようなものがありますか?

テキストでいえば、「レベルアップ」「クリアー」「ここをタップ」などが典型例です。画像で言えば、単純な四角や丸などの図形や、色が同じ場合などでしょう。画面のレイアウトに関しても、特徴的なものでない限り「ごくありふれた表現」にあたります。
これらの他、もう少し発展したものでも「ごくありふれた表現」の範囲に含まれますが、実物を見てみないと判断できないものも多いので、困ったら専門家に相談しましょう。

「アイデア」が共通している場合とは、どのようなときですか?

ゲームのルールやアプリで達成できること(目的)が同じというような場合です。アプリ内でのユーザーの導線や、課金の仕組みも多くは「アイデア」の範疇でしょう。ただし、同じ「アイデア」であっても、類似したテキストや画像を使っている場合、著作権侵害の可能性は高くなります。

著作権侵害が疑われる場合は、必ず相手方の主張する額の損害賠償を支払わなければいけませんか?

いいえ。
特に交渉の場合、損害賠償額は多くふっかけてくることがあります。著作権侵害の場合の損害額の計算はある程度法律で決まっていますから、仮にこちらに著作権侵害が疑われる場合でも法律に基づいて計算した額をベースに交渉していくことが必要です。
この種の事例では、そもそも著作権侵害が認められないという事例も少なくありませんので、警告書(通知書)が来た場合、やはり一度は専門家に相談するべきでしょう。
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ソフトウェアの不正利用|メーカーの通知に対する正しい対処法【弁護士解説】
ソフトウェアの不正利用(不正インストール)があるとして、メーカーから通知書やメールをを指摘する通知が送付されてくることがあります。
このような通知は何の前触れもなく届くものです。また、請求される金額が高額になることも多いため、通知を受け取った側は強い不安を覚えることがほとんどです。
しかし、ソフトウェアの不正使用の問題は法的紛争に該当するものですから、対応を誤ると取り返しのつかない事態になることもあります。
そこで今回は、「ソフトウェアメーカーからの」通知に対して、どう対応することが正しいのか、弁護士が解説します。
この記事はこんな人におすすめ
- メーカーからソフトウェアの不正利用(インストール)があると指摘された方
- 不正利用で高額な請求を受けてお困りの方
>>「BSAからの」通知書への対応方法については以下の記事で解説しています。
不正利用(不正インストール)の通知が届く理由
ソフトウェアメーカーから不正利用の通知が届く理由として多いのは、各メーカーによる不正利用の監視システムに引っかかったケースです。
多くのソフトウェアメーカーは、不正なライセンスキーの使用などをシステムで監視しています。これによってソフトウェアの不正利用の疑いがあるとされた会社や事業者に対して、不正利用を指摘する通知が送られることがあります。
また、(元)従業員からの通報をきっかけに、通知が送付されてくることもあります。ただソフトウェアメーカーから直接通知が送られるケースでは、通報をきっかけとするものは比較的少ない印象です。
不正利用の通知に対する正しい対処法
対処法① 状況を正確に確認するまで絶対に回答しない
ソフトウェアの不正利用に関する通知は突然届くものです。また、海外メーカーから届くことも珍しくなく、強い不安や恐怖を感じても無理がないものです。
しかし、ここで焦って回答してしまうと、後で取り返しのつかない状況になることがあります。(取り返しのつかない状況になる原因は、初回の回答によることがほとんどです。)
不正利用の通知が届いたとしても、まずは通知の内容をしっかり確認し、自社の状況を正確に把握するまで一切の回答を避けましょう。
なお、通知書には回答期限を設定していることもありますが、これが過ぎたとしても取り返しのつかない状況に陥るということは(少なくとも法律的には)ありません。また、回答期限の延長に応じてもらえる可能性も十分にあります。そのため、回答期限を守ることよりも不用意な回答をしない方が優先度は高いと考えましょう。
対処法② ソフトのインストール状況とその取得経緯を確認する
ソフトウェアの不正利用に関する通知には、不正利用をしたとするソフトウェアが記載されていることが一般的です。そのようなソフトが社内のPCにインストールされているかどうかを確認しましょう。
仮にそのソフトがインストールされていた場合は、取得経緯も確認しましょう。正規店から購入したとか、大手代理店から購入した場合は不正利用はないと判断できます。
一方、定価よりかなり安い価格でネットショップやオークションで購入した場合や、インターネット上に掲載された無料のライセンスキーを使用したという場合は、不正利用の可能性がかなり高いといえます。
なお、購入している場合は購入履歴も確認しましょう。以下の記載がある資料(領収書、納品書、注文確認メールなど)があれば望ましいといえます。
対処法③ 通知書記載のPC等の状況を確認する
ソフトウェアメーカーからの通知には、不正利用を疑う根拠が記載されていることがほとんどです。(もし記載が一切ない場合は、不正利用を疑う根拠を提示してもらうことが必要です。)
不正利用の根拠には、監視システムが検出したPCのユーザー名やMACアドレスのほか、インターネット通信に使用しているグローバルIPアドレスなどが記載されています。
しかし、これらの情報がすべて正確とは限りません。社内のPCや回線を調査した結果、そのようなPCは存在しないとか、IPアドレスを管理する経由プロバイダが契約のプロバイダと異なるなどのケースもあります。
そのような場合は、監視システムの取得に問題があり得るといえますから、それを知るためにもまずは通知書記載の内容と、社内のPCや回線の状況を照合してみましょう。
対処法④ 必要な範囲で回答する
問題となるのはあくまで「通知書に記載されたソフトウェア」ですから、たとえ同メーカーのソフトであってもそれについては言及するべきではありません。
また、ソフトウェアメーカーからの通知には請求の根拠が示されていないものもあります。そのような場合は、相手の請求の根拠をまずは確認することが必要です。
最も避けるべきことは、自ら不要な情報を相手に提供した結果、事案をかえって複雑にしたり、自身の首をしめるようなことになることです。
回答後はどのような流れになるか
初回の回答の内容によって、その後の流れは変わってきます。
不正利用の事実を認めるよう回答をした場合は、それに基づいて示談金額の話が進むことが一般的です。
一方で、不正利用がないと回答した場合には、ソフトウェアの購入履歴などの証拠を求められたり、場合によっては事業所への立ち入り調査の要請を受けることもあります。
>>立入検査や証拠保全については以下の記事で解説しています。
>>不正インストールに関する示談については以下の記事で解説しています。
専門家への相談も考えましょう
不正インストールの問題は法律問題のなかでも、著作権という特殊な分野の問題です。
また、早い段階で専門家にチェックしてもらうことで今後の見通しが立てられ、適切な対応方法をとることができます。
場合によっては、会社の責任にはならない不正インストールもありますし、仮に不正インストールの責任を負う場合であったとしても、相手方の提示する和解条件が法律的に妥当かどうかもチェックすることができます。
焦って対応するとかえって自分の立場を不利にする場合もあり得ますから、少しでも不安な要素がある場合は、早い段階で信頼できる専門家に相談されることをお勧めします。
当事務所では、不正インストールの通知が来たケースの対応に豊富な実績があります。
ご心配事やご相談したいことがある場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ネットショップの開設・開業で絶対に知っておくべき特商法を解説!
ネットショップ開設にあたっては、お客さんとのトラブルや国の規制など、法律についての不安があると思います。
そこで今回は、ショップ開設にあたって、気を付けるべき法律をまとめてみます。
最も重要なのは、「特商法」
ネットショップ開設にあたって一番気を付けなければいけない法律は、「特商法(特定商取引に関する法律)」です。
ネットショップは「通信販売」にあたりますから、サイト上に記載しなければならない内容が指定されています。
主な内容は、次のとおりです。
・事業者名
・住所、電話番号
・配送料
・キャンセル、返品のルール など
これらは「特商法に基づく表記」という形でまとめて書かれることが一般的です。
これらの内容をしっかり明記することは、お客さんとのトラブルを防止することにもつながりますから、まずは特商法のルールは押さえておきましょう。
BtoCは「電子契約法」や「消費者保護法」にも注意
ネットショップの多くはBtoCの取引になると思います。
BtoCの取引においては、「電子契約法(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律)」や「消費者保護法」にも注意しましょう。
特に、電子契約法には、いわゆる注文確認画面(最終確認ページ)について定められています。これは、ネットショップ全体のデザインにも影響を与えるものです。
消費者保護によってショップ側が思わぬ損失を受けることも考えられますので、BtoC取引の場合は消費者保護についてもチェックしておく必要があります。
個人情報保護に関する法律も押さえる
ネットショップは、配送などの関係でお客さんの名前や住所を教えてもらうことになります。
名前や住所は個人情報に該当しますから、法律に従った取り扱いをしなければいけません。
個人情報取扱いのルールを決めたら、「プライバシーポリシー」という形で掲載しておくことが一般的です。
知的財産に関する法律も確認しておく
問題となることはあまり多くはありませんが、ネットショップの運営で知的財産に注意しなければならない場面があります。
例えば、商品の写真には著作権がありますから、他人のものを無断で使ってはいけません。逆に、自身の写真が無断で使われたら、著作権侵害を主張しなければいけないこともあるでしょう。
他に、自身のネットショップに”楽天”や”Amazon”など他社サービスの名称を付けると商標権などを侵害します。
その他、偽ブランドを販売することも商標権侵害となることがありますから、知的財産に関する法律にも留意しておきましょう。
販売する商品によって気を付けるもの
その他、販売する商品やサービス形態によって、気を付けるべき法律は違ってきます。
景表法
「景表法(不当景品類及び不当表示防止法)」には広告に関する規制があります。
美容商品やダイエット商品のほか、ノウハウを提供する情報商材など、誇大広告になりがちな商品を販売するときに注意しましょう。
薬事法
医薬品を販売するときに注意が必要です。この法律にも広告に関する規制がありますので、併せてチェックする必要があります。
古物営業法
中古品の買取・販売をするとき
迷惑メール防止法
「迷惑メール防止法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)」はメルマガなどで広告するときに注意が必要です。
なお、メールに関する規制は、特商法にも一部規定があります。
販売する商品などによってもルールは違ってきますし、法律がサイトのデザインに影響することもあります。
思わぬところでリスクが表れることもありますから、
”ネットショップを開設したいけど、法律がよく分からない”
という場合や、
”今までにない新しいネットショップを開設してみたい”
という場合は専門家に一度チェックをしてもらい、不安を解消しておくことをお勧めします。
弁護士への法律相談(初回30分無料)はこちらから。
【ネットショップ側】広告規制の考え方
【ネットショップ側】契約はいつ成立する? 契約成立するとどうなる?
【ネットショップ側】注文をキャンセルしたいと言われたら?
掲示板の管理者に削除・発信者情報開示請求が来たときの対応方法を解説

すいません、そういえば別件でも相談があるんです。実はサイトのユーザー同士交流してもらおうと思って、掲示板を作ってたんですよ。でも、そこに著作権侵害とか誹謗中傷があるらしくて。それを削除しろとかIPアドレスを開示しろとかいう請求が来てしまったんです。

前ちょっとお話ししましたよね、管理体制の話。
そういう体制は構築してました?

そうでしたっけ?
すいません忙しくて全然やってませんでした。

じゃあ一般的な対応をしましょうか。
まずは請求書類を見てください。請求する理由とか、本人確認の書類とかはちゃんと備わってました?

一通りはそろってたと思います。

じゃあ、今度は投稿した人に意見を聞きましょう。
削除していいか、情報を開示してもいいか。メールアドレスくらいは知ってますよね。

はい。ユーザー登録のときに入力してもらってますから。

意見を聞いてみて、投稿した人が「削除や情報開示してもいいよ」って言ってくれたら、削除しても情報開示しても大丈夫です。

そんな簡単に同意してもらえるんですか?

まあ、そういう対応をする人は少ないでしょうね。
ほとんどの場合は拒否か無視です。

そういうときは、どうしたらいいんですか?

削除と情報開示を分けて考えましょう。
まず削除ですけど、無視されて7日過ぎたら、削除してしまって大丈夫です。というか、削除した方がいいかも知れませんね。

わかりました。7日間で返信がなければそうします。

削除して欲しくないという意見が来たら、両者の言い分を聞いて判断するしかありません。まあ常識的な判断であればどう判断してもいいですが、印象としては削除する方が多いと思います。迷ったら相談してください。

常識的な判断ですね。分かりました。

次に情報開示。
これは、拒否されたり無視されたりしたら、とりあえず開示しないのが無難でしょう。

開示しないで大丈夫なんですか?

これをやると請求してきた人から仮処分を受ける可能性がありますが、簡単に開示しちゃうと、逆に今度は投稿した人から損害賠償されるかも知れません。
それに、個人情報保護法の問題もありますし。

そっか・・。板挟みですね。

そう。なので裁判所が仮処分を認めたものには応じるという態度が無難でしょう。個人情報保護法を考えても、その方がいいと思います。

でも、仮処分が来たらどう対応したらいいんですか?

一番ちゃんとやっているところだと、「発信者情報の開示は認められない」といろいろ根拠を付けて反論しています。でも、反論しないところもあったり、出頭もしないけど仮処分が出たら応じるところもあったりして、対応はまちまちですね。

・・・結局、ウチはどうすれば?

会社としてどのくらい裁判に手間をかけられるかとか、そういうものを考えて決めていくことになります。
また、この点も相談してくれればアドバイスできると思います。頼んでもらえれば、弁護士の側ですべて処理することもできます。本サイトでもこのあたりお話しの全体像と弁護士に頼めることをこちらでまとめているので、見てみてくださいね。

分かりました。
また相談させてもらうことになると思いますが、とりあえずは投稿した人に連絡して、意見を聞いてみますね。
【解説】
(1) 対応によっては法的リスクも
掲示板や画像・動画などの投稿サービスを提供する場合、ユーザーが著作権侵害や誹謗中傷の投稿をすることがあります。
このような場合、以前説明したプロバイダ責任法に基づき、サイト運営者(ないしサーバ管理者)に対して削除や情報開示の請求がなされることがあります。このような請求は法的な請求ですから、対応を誤ると関係者から法的責任を追及される可能性があります。
そのため、管理体制の構築も必要ですが、実際に請求されたときの対応も非常に重要になります。
(2) どう動けばいいか
実際に何らかの請求がなされた場合、まずは請求の理由がしっかり書いてあるか、本人確認の書類があるかを確認します。言いがかりやなりすましの可能性もありますから、その辺りを確認せずに削除したり情報開示したりすると、投稿したユーザーの権利を侵害しかねません。その辺りの情報を確認できたら、投稿したユーザーに意見を求めます。
その後の対応については、今回のお話で説明したとおりです。
様々なパターンがありますが、最終的に情報開示の仮処分を受けてIPアドレスを開示すればそれで終わりであることが通常です。
(3) 法的な判断が必要になる場合も
この種の請求は対応のパターンが決まっているので、他の法的な紛争よりは対処しやすいと思います。ただ、投稿したユーザーが削除を拒否した場合や、仮処分を申し立てられた場合には、ケースバイケースの判断が求められます。
削除の拒否をされた場合はそのコンテンツが権利侵害にあたるか判断しなければいけませんし、仮処分の場合も、裁判所である程度の反論をする必要があります(最初から申立人の主張を認めるような態度を示すと、投稿したユーザーから責任追及される可能性がありますので、一定程度の反論をしておくのが望ましいといえます)。
これらの判断には、法的な判断が伴いますから、分からないときや迷ったときは、やはり専門家に相談されることが必要でしょう。
また、専門家の関与のもと事前に管理体制を構築していれば、法的なリスクは大きく減ります。
そのため、この種の請求が見込まれる場合には、早い段階から専門家の指導を受けておくことが、自社サービスを守ることにつながります。
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サイトのパクりで逮捕されるケースとは|起訴から判決までの流れについて

今回のトラブルで、もう一つ不安なことがあるんですが・・。
著作権侵害って、逮捕もあるんですよね?
相手が告訴とかしてきたら、警察が来ちゃうんですか?

可能性はもちろんはゼロではないですが・・。軽微な事案なら警察は動かない方が多いのが実情です。
なので必要以上に気に病む必要はないと思いますよ。

そうですか、少し安心しました。
でも、そしたら逮捕されるような事案って、どういうものですか?

例えば、ファイル共有ソフトを使って大量の作品をアップロードしたり、海賊版DVDを作って販売するような場合でしょうか。

そういうの、たまにニュースで見ますね。

ああいう悪質な事件でない限り、裁判にかけられて実刑となることはなかなか考えづらいですね。

でも、万が一警察が来たらどうなるんですか?

まずは逮捕されて取り調べを受けたり、自宅を捜索されてパソコンなどを押収されたりします。
それで、事件の全体をみて、「検察官」という職業の人が最終的に起訴するかどうかを決めます。

裁判にならないこともあるんですか?

はい。ちゃんと反省しているとか、被害者に弁償しているとか、そういうのを全部みて判断します。
起訴されないと前科が付きませんから、この段階で付いている弁護人は不起訴を目指すことが普通でしょうね。

なるほど。

検察官が起訴すると、刑事裁判が開かれます。
ここで無罪を主張したり、情状酌量を求めたりして、最終的に判決が出されるんですね。

死刑とか?

著作権侵害に死刑はありません。
一番重くて懲役刑です。

刑務所に入るやつですね。

はい。でも、執行猶予が付くこともありますから、絶対に刑務所に入ることになる訳ではないですよ。
あとは、著作権侵害の場合、罰金刑もあります。罰金刑の場合、略式命令といって、簡単な手続で裁判が終わることもあります。

いろんなパターンがあるんですすね。

刑事裁判の流れは大体こんな感じです。
全部覚える必要はないと思いますが、著作権関係の仕事をするなら、なんとなくでもイメージを持っておいた方がいいと思いますよ。
【解説】
(1) 逮捕される場合とは?
厳密に法律を適用すれば、友達の頭をポコンと叩くような行為も「暴行罪」に該当します。
しかし、このような行為によって逮捕されたり懲役になったりすることはほとんどありません。
これと同じで、著作権侵害もすべてが逮捕や刑事裁判の対象になるわけではないようです。
逮捕されたりするような事案は、権利者に大きな経済的打撃を与えるようなものや、社会的にインパクトを与えるような事件がほとんどです。(もっとも、逮捕等の可能性はゼロではありませんし、民事の損害賠償等の対象になりますので、著作権侵害を行って良いということではありません。)
(2) 「捜査」から「起訴」まで
刑事裁判に向けて警察などが動く場合、まず行われるのが「捜査」です。
これは、関係者を取り調べたり、家宅捜索(いわゆるガサ入れ)を行ったりして裁判のための証拠を集めるものです。
逮捕もこの「捜査」の一つとして行われます。
このようにして証拠が集められたら、起訴するかどうか(刑事裁判を起こすかどうか)を検察官が判断します。
犯罪事実があったとしても、起訴しない(不起訴)とすることもあります。
不起訴になれば前科は付きませんし、逮捕されている場合はそこで釈放となりますから、起訴前は弁護人と協力して不起訴を目指すことが一般的です。
(3) 「起訴」から「判決」まで
起訴されてしまうと、刑事裁判が開かれ、そこで被告人は無罪や情状酌量を求めることになるでしょう。
その後、最終的に判決が言い渡されます。
ここでの判決に不服がある場合は、民事裁判と同じように、高等裁判所へ控訴、さらに最高裁判所へ上告ができます。
なお、著作権侵害の罪には罰金刑があり、100万円以下の罰金の場合は略式命令という簡単な手続がとられることがあります。
ただ、簡単な手続であっても罰金刑を受けると前科が付きます。また、この手続では裁判で無罪の主張等ができません。
この略式命令は拒否することもでき、その場合は通常の裁判が開かれますから、どのような裁判手続を選ぶかは慎重に判断すべきでしょう。
(4) 捜査の対象になったら、すぐに弁護士を
捜査の対象となった場合、民事事件以上に弁護士の協力が必要です。
逮捕されたときの自由な接見は弁護人でなければできませんし、弁護人がいないという不利益は民事裁判と比べ物にならないほど大きいものです。
逮捕された場合でなくとも、自宅の捜索がなされた場合など捜査の対象となった場合は、速やかに弁護士に相談されることが必要です。
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サイトのパクりを疑われたときの対処法③:裁判までの流れと和解方法について

一応、今回の件で目標は設定してみました。
でも、交渉が決裂したら、訴えられるんですよね・・。

絶対そうなるとはいえませんが、可能性はあります。

訴えられたら、どうなるんですか・・?
あんまり考えたくないですけど。

民事裁判の場合、まずは裁判所から訴状と呼出状が送られてきます。訴状にはどういう趣旨で訴えたかが書いています。また、呼出状には●月●日に裁判所に出頭しろと書いてあります。それと、反論がある場合には答弁書という形にして提出してくださいとも書いてあります。

無視するとどうなるんですか?

無視すると、相手の言い分を認めたと同じ事になって、負けちゃいます。

ホントですか!?

はい。だから、どんなに下らない言い分でも、裁判になったらちゃんと対応しなければいけません。訴えられた方からすればたまらないですが、逆に訴える方からすれば、相手を強制的に訴訟に引っ張り込めるので、強力な手段といえます。

なるほど。

呼出状に書かれた日に、第1回の裁判が開かれます。その後はお互い主張や証拠を出し合ったり、関係者の尋問をしたりします。途中、裁判所から和解を勧められることもありますけど、それが出来なければ最終的に判決になります。判決に不服があれば控訴とか上告とかして、いずれどこかで決着します。

判決を無視するとどうなるんですか? やっぱり逮捕されるんですか?

いや、民事事件では逮捕はされません。
判決を無視すると、財産の差押えとか、そういうのをされます。

あ、逮捕される訳じゃないんだ。ちょっと安心しました。

でも、銀行口座とか給料を差し押さえられたりすることはありますので、軽く考えるべきじゃないですよ。
訴えられたときの流れはこんな感じです。これを知っておくと紛争の予測がつきやすくなりますので、覚えておいて損はないと思いますよ。
【解説】
(1) 裁判はどう起こる?
裁判外での交渉が決裂すると、民事裁判に移行するのが一般的です。
ただ、必ず裁判が開かれる訳ではありません。
民事裁判は、原告が裁判所に訴状を提出しなければ起こらないからです。そのため、たとえ送りつけられた内容証明郵便を無視したとしても、相手がそれ以上何もしなければ、裁判には移行しません。
法律上認められないような主張で内容証明を送りつけるような事例も存在します。相手を脅して有利な示談を引き出そうとする場合などです。
こういった場合は、たとえ裁判を起こしても主張が認められる可能性は低いですから、請求を拒否したとしても裁判に移行しないことがあります。
(2) 裁判の大まかな流れ
裁判の流れは、概ね今回の話のとおりです。
訴状が送られてきて、それに答弁書という形で反論する。その後は準備書面というものをお互い提出しあって反論、再反論・・・と続いていき、お互いの主張が尽きたら、関係者の尋問を行って判決が出る、というのが一般的です。
これに不服があれば高等裁判所に控訴、さらに最高裁判所に上告ができます。
(3) 和解という選択肢も
判決が出るまでの間、裁判所から和解を提案されることがあります。
ここでの和解には、訴訟の対象になっていないものも含めることもできます。
例えば、貸したお金を返せという訴訟で、確かにお金は借りたけれど、頻繁に家まで取立てに来るので困っている、というような事情があるとき、「借りたお金は分割して支払うけど、もう被告の家には立ち入らない」という内容の和解することもできるのです。
そのため、紛争が複雑になっているときは、判決よりも和解の方が優れている場合があります。和解狙いの訴訟も存在するくらいですから、和解も視野に入れて訴訟対応をしていくことも有用でしょう。
なお「和解」という言葉から、和解をすることは相手方を「許す」ことのようなニュアンスを含むと考える方もいらっしゃいますが、そういうことではありません。裁判での「和解」は、法律上の権利について「お互い譲歩する」くらいの意味しかないのです。そのため、こちらが少しの譲歩で、相手方が大幅に譲歩する場合でも「和解」です。
言葉のニュアンスだけにとらわれず、法的な手段を使って何が一番自分の利益になるかを追求することが、最も良い紛争解決につながるといえます。
(4) 判決は、無視すべきではない
民事裁判の判決は、無視しても逮捕されたりすることはありません。タコ部屋に入れられて強制労働をさせられる、などというような制度もありません。
ただ、財産の差押え等がなされることはあり、これによって生活の基盤を失う場合もあるので、決して無視して良いというものでないことは注意してください。
なお、刑事裁判での罰金刑の判決を無視すると、刑務所で作業をさせられることがあります。これを「労役場留置」といいます。
民事裁判と刑事裁判では大きく違うので、この点は気を付けましょう。
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